188 閑話 プリム 聖女様の独白


「聖女様、ようこそおいで下さいました。私はこの地を治めております、ケンウッド伯爵と申します。

この度は当領地を訪れていただき、ありがとうございます」


「出迎えありがとうございます。今代の聖女を務めております、セルジュと申します。歓待に感謝を」


「勿体無いお言葉です。

さあどうぞ、ささやかながら晩餐の用意をさせていただきました。

今日は屋敷の客間を用意しましたので、ごゆっくりお休み下さい」


「ありがとうございます。甘えさせていただきますわ。騎士達にも部屋を与えてもらってもよろしいかしら?」


「はい、もちろんです。警備のものの離れが空いてますので、そちらをご案内致します」



今の所おかしくはありませんね。少し突っ込んでみようかしら。



応接室に通される。


「来るときに見ましたが、大変活気のある街ですね。どういう運営をしたら、これほどの活気が出るのでしょうか?」


「港は商人同士の交流の場です。それを整えてやれば、自然と繁栄していきます」



うがった見方をすれば、契約の全てに関わっているとも取れますが、弱いですね。



「商人同士の揉め事などはどうされてるのでしょうか?これだけの商人です。争いは絶えないのでは?」


「そこはいざとなれば兵士を向かわせて、お互いの言い分を聞いて折り合いがつくように話し合います」



お互いから付け届けをもらって、高い方を優先するという感じでしょうか。

いけませんね、こんな見方をしていたら、神から見放されてしまいそうですわ。



「素敵な施政を行なっているようですわね。民衆からも人気なんじゃないですか?」


「いえ、それが、私が商人を優遇しているという者もいまして、出来るだけ中立を保っているつもりなんですが」



なるほど、民衆に嫌われてるのは自覚していると。

でもこれだけでは告げ口するには弱いですわね。




「それでは、船に馬車が複数乗せたいと言い合っているものがいたらどうしますか?」


「はい、相手が貴族なら貴族を優先します。貴族同士なら爵位の高いものを。平民通しなら手を出しません」


「あら、貴族が優先なんですね。わが国には貴族制を取ってませんので少し馴染みが少なくて驚きましたわ。

貴族の方が民を優先するものだと思ってましたので」


「流石にそれは、、、ですが、聖女様なら貴族でなくとも優先しますぞ」


「実は乗ろうと思っている船に馬車がすでに2台決まっているらしくて、次の定期便にしようかと話していたところでして」


「なんと。私の方で話をつけましょう」




今頃ジン様たちが2台分のスペースを確保しているはずです。

私とバッティングしたとなれば、伯爵がどう行動するかわかるはずです。


私は神殿騎士に、定期便の馬車スペースを抑えるように言いました。

当然のごとく先着があるからと断られて帰ってきました。


あとはジン様の周りにいて、伯爵がどう出るか見るだけですね。




伯爵はジン様の宿に来られました。


「貴様が馬車を乗せたいとか言うやつか。大銀貨一枚払ってやるから、次の便にしろ、わかったな」


「いえ、お断りします」


ここまでは予想通りです。


「なんだと!伯爵であるわしが言ってるのだぞ!冒険者風情が黙って従っておればよいのだ!とにかく分かったな。今回の船に貴様の馬車の場所はない」


そういって、出て行った。




しばらくすると、船の担当者が来て、乗車のキャンセルを伝えてきた。伯爵が手を回したらしい。




やはり裏で色々やってそうですね。


伯爵の使いが来ました。船に乗れるそうです。

いえ、さっきのやりと取り、聞いてましたからね?




私はベスク王国の国王様にお手紙を書きました。

聖女のサインを入れておいたので、ちゃんと着くでしょう。


先ほどのやりとりを全て正直に書きました。私が疑いを持って接触し、確認したことも含めてです。

この結果がどうなるかは分かりませんが、何もないと言うことはないでしょう。


王都でも、ある程度の癒着があるのは、暗黙の了解として目こぼししているでしょうが、聖女からの諫言とあれば動くでしょう。

何か、立場を利用して申し訳ないですね。


鳩便を急ぎで出しましたが、ここにいる間に返事は来るでしょうか?


数日待ちましたが、返事が来ません。届かなかったのでしょうか?いえ、鳩便の到着率は9割を超えているはずです。


これ以上待つのは無理ですね。船が出てしまいます。

ジン様に報告できないのが残念ですが、今度寄ったときにでも結果を聞きましょう。

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