181 布教の旅?


翌日の昼前に教会から呼び出しがかかった。


「ケント司祭の件ですが、賄賂や横領なども発覚しまして、財産没収の上、国外追放となりました」


「そうですか」


「以上がご報告になります」


「そうですか。それで私が呼ばれた用件はなんでしょうか?」


「昨日の話です。どうか受けていただけませんか。なにせ女神様直接のお話です。他のものにも<神託>があったことはバレてます。内容を聞かれていますがまだ話していません。できれば先にご承知いただければと思ったのですが」


「聖女様としてではなく、セルジュ様ご自身としてはどうなんでしょうか?」


「女神様が選ばれた御仁です。きっと素晴らしい方なのでしょう!これから旅をする中でその片鱗でも見れればと思っております」


「女神様からの<神託>に他の神様のことは語られませんでしたか?」


「ありませんでした」


「そうですか」


これでじじいと会話すると言う期待は無くなったな。女神様は俺のスキルの進捗状況を確認する、かなんかのために付けたんだろうけど。。。<鑑定>持ってるしな。俺の無魔法の偽装、ちゃんと働いてるよな?


「それで、私のパーティでの役割はなんでしょうか?」


「はい、回復が得意ですので、お役に立てるかと思います」


「いえ、そうではなく、女神様から俺の何かを調べるように言われてませんか?」


「いえ、そう言ったことはありません」


本当なら俺について行かせる意味がわからないな。それとも聖女様はアンテナよのようなもので、聖女様を経由して神様が俺のステータスを覗けるんだろうか?


考えても結論は出ないな。


「わかりました。同行を受け入れましょう。ただし、このパーティは世界中を回ります。その際に聖女様だとバレると問題が大きくなります。なので、ただのセルジュとして同行してもらうことになります。それは大丈夫ですね?」


「もちろんです。私も聖女ではなく、聖女になる前のセルジュという村娘に戻りましょう」


「なら文句はないです。パーティの他のメンバーも喜ぶでしょう」


「では、その方向で進めさせていただきます」


「では、失礼します」




「みな、聖女様、いやセルジュ様がパーティに加わることになった。仲良くするように」


「ほ、本当に聖女様が?担いでませんわよね?」


メアリーも心配性だ。どうせすぐに分かるのに。



数日後、神殿から発表があった。


「、、、聖女様は布教の旅に出られることになった。それに伴い、、、

、、、、、、

、、、、、、

、、、ということである」


もうちょと簡単にまとめようよ。俺と一緒に旅に出るから邪魔しないように、で良いじゃん。それと布教の旅って何?




「で、布教の旅とはどういうことでしょうか?」


「それが、教皇様と意見が食い違いまして。主に、名目をどうするか、という点で。旅自体は女神様から示唆されていますので、教皇様も反対されていません。しかし、聖女が一人の人間に仕えるというのは表沙汰には出来ないと。

私は正直に言っても良いと思うんですが、教皇様は体面を守るためにも布教の旅として欲しいと言われまして。他の枢機卿も賛同したので、こうなりました」


「つまり、神殿としては、私たちが聖女様の護衛になった、という公式見解ということでしょうか?


「はい、そうなります」


「まあ、こっちに降りかかってこなければ良いんですけどね」


「ご安心ください。そこは私がなんとかします」


「なら私のパーティへようこそ。セルジュ様、我々は歓迎します」


「よろしくお願いします。現在スケジュールを調整させていますので、1週間くらい時間をいただけますでしょうか?」


「わかりました」


「それと、私のことはセルジュとお呼びください」


「わかりましたセルジュ様」



1週間後、約束通り、セルジュ様がやってきた。俺たちの住む、スラム近くの不潔な宿屋に。


「あ、あの、お金がないようでしたら、私が出しますので、もう少しましな場所に。。。」


「いや、お金がないんじゃなくて、ケント司祭が宿に泊まれないように指示して、それがまだ解除されてないんですよ。なのでどこに言っても門前払いです」


「まあ、申し訳ありません。すぐに解除させますわ」


「それと神殿騎士に泊まっても良いと直接言わせてください。解除してもすぐには伝わらないでしょうし」


「承知しました。すぐに手配しますわ」


あの司祭の残りカス、まだ残ってるのよね。

神殿騎士の証言の元、俺たちは中級クラスの宿に泊まれることになった。


聖女の顔は売れているらしく、宿屋の主人も膝をついて祈っていた。炊き出しなんかで見かけるそうだ。

神に祈るならともかく、聖女に祈っても何もないですよ?

他の国でもこれだと困るな。どこまで顔が知られてるんだろう?


「私はこの国から出たことがありませんので、大国の上流層と神殿の上層くらいでしょうか、私の顔を知っているのは。また、当国内では炊き出しなどで顔がバレてますが、他の国では大丈夫です」


それなら大丈夫かな?


「じゃあ、顔のバレてない場所まで行ってから冒険者登録をしましょう」

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