172 高所恐。。。
マンティコアの討伐が気になって王都に残っていたが、これ以上は用事がない。
なので、イングリッド教国に向かいたいが、陸路と海路の2つがある。どちらも利点がある。
まず、陸路だが、多数の往来があることもあり、一部地域を除き、護衛を雇っていれば大丈夫らしい。国境付近にある森が危険だそうな。
海路は魔物は滅多に出ず、馬車も一緒に運んでくれる。
べスク王国は全体的に見ると、他の国よりも魔物の被害が少ない。別に危険がないわけじゃないが、魔物の生息域が限られているらしい。
費用的に見ると、陸路なら護衛の仕事として移動できるが、海路は出費しかない。
海路の護衛の仕事は専門の冒険者が受けるので普通の冒険者に仕事は回ってこない。海の魔物と戦うにはそれなりのノウハウが必要なのだ。
移動にかかる日数で言えば、海路の方が若干早い。
金に困ってない俺たちは、当然のように海路を選択した。
1週間ほどかけて、港町プリムに到着した。
ヤパンニの港町ロアナと比べても大きい街だ。船もたくさん止まっている。
俺たちは船の予約を入れようと思ったが、今来ている船には空きがないらしい。次の定期船は半月後だそうだ。陸路の方が早かったね。
それにもう一つ聞いた。海路の方が陸路よりも早いと言われているが、それはイングリッド教国からべスク王国への船のことらしい。海流の関係で、逆は陸路よりも時間かかると。
なんともとほほな感じだが、今更陸路で行くのも気がひけるので、半月後の定期便を予約した。馬車込みで金貨3枚取られた。
この街で半月過ごすことになったが、他の大陸に関して調べるのも考えるとちょうど良かったかもしれない。クレアとマリアには聞き込みを指示しておいた。ついでに酒でも飲んで帰ってくるだろう。
「さて、時間が空いたわけだが、何かしたいことはあるか?」
「プリムにはザパンニ王国では食べれない、海の幸が多いそうです。一度食べて見たいですわ」
「それもいいですが、近くの海岸にある断崖絶壁は上から見ると絶景らしいですわ」
「ふむ。両立できそうだな。では、絶壁を見てから食べ歩きと行こうか」
「クレアとマリアも連れて行きませんこと?二人だけ仲間はずれはかわいそうですわ」
リリアは奴隷組と仲良くなったもんだ。
「もちろん連れて行くぞ。ずっと聞き込みだけってのも可哀想だしな」
「そう言えば、絶壁は遠いのか?」
「馬車で半日らしいですわ」
「なら一泊の予定で行こうか」
マリアには食材の買い出しを指示しておこう。ああ、楽しみのために、この地方独特の素材は省くように言っておかないとな。最初は料理屋で食べたい。
俺たちは断崖に向かっていた。
観光地なのか、何台か馬車が止まっていた。
断崖から突き出すように伸びている部分から360度見渡すのがいいらしい。
俺たちも順番に断崖を眺める。崖の上からでも遠くまで海が言えて絶景と言っても良い気がしたが、突き出したところから見た途端にそれが間違いだとわかった、、、らしい。
海を見れるのは一緒なのだが、崖側を見るのがすごいらしい。
らしいと言うのは、俺は行ってないからだ。崖の上から下を見て諦めた。
俺は無魔法を利用して空を飛ぶ的なことができるが、自力で高いところに行くのと、自然を見るのでは勝手が違った。崖下を見ると足が震えて危ない。俺は空を飛ぼうと思えば飛べるので、崖から落ちても普通に帰ってこれる。
断崖から離れたところで、無魔法の空中歩法で上空に上がってみる。崖と同じくらいだと思うところまで上がっても怖くない。自然の高さだと怖いのは何かあるのだろうか?
俺たちは一泊して戻ったが、途中の馬車内で、リリアが、
「ジン様は突き出したところから崖を眺めてませんが、何かありましたの?」
と聞いてきた。
「いや、特に何もない」
「ぜひ見るべきでしたわ。あれは観光地になってもおかしくない、絶景と呼ぶに相応しい景観でしたわ」
俺も見るつもりだったよ?でもね、足が震えた状態で行くのは危ないと思うんだ。別に怖いわけじゃないよ?ただ足が震えるだけで。
俺たちは街に戻ってから買い食いをして回った。港町だけあって、魚の干物や新鮮な魚など、いろいろあった。他にもイングリッド教国から輸入したと言う、甘いお菓子もあった。イングリッド教国では世界で唯一、砂糖を生産しているそうだ。
製法を秘匿しており、莫大な利益を得てるという。
王都で食べたケーキとかにも砂糖は使われていたので、そんなに貴重なものだとは思っていなかった。
よく聞くと、砂糖を使ったお菓子は少なく、普通は甘い干し果物などを入れて甘みを出すとか。いろいろ考えてるね。
「ご主人様は高いところが苦手なんだろうか?」
「でも空飛んでましたよ?」
「そうなんだが、崖の上で青い顔をしていたのでな」
「確かに挙動不審でしたね」
「ご主人様にも弱点があったんだな」
「だから、自分で飛べるのに高いところが苦手なわけないですよ」
「いや、でもあれはどう見ても高い所が苦手だろう?」
「ご主人様に弱点はありません!」
「まあ、マリアがそう言うなら良いんだが。。。」
とかいう話があったとかなかったとか。
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