165 成人の儀


「同行者は誰になりますか?」


「騎士団長と宮廷魔術師団長の2名だ」


「それぞれのトップが直々にですか。よほど難易度が高いのですね」


「いや、難易度はそれほど高いと見積もってはおらん。ただ、ダンジョン内で何かあった時に、正確な判断を下せて、その権限のあるものを選んだだけだ。

賊に襲われた後、連れて帰るわけにも行かんから、そのまま処刑となるだろう。その時に賊から得た情報の信頼度にも関わる。ジン殿を信用しなわけではないが、国も手順を踏まないといけないのでな」


なるほど、信用できて、実力が十分で、しかも功績を誇らない相手が必要だったのか。


「それでは、最後になぜ同行者が3名までなんでしょうか?」


「それは分かっておらん。いや、分かっておったとしても私には教えられておらん。なので3名と言われたら3名しか連れていけん」


『試練の祭壇』と言うのだから、何らかの試練があるんだろう。それに4名で挑むとか?どこかのテレビでやっていたアトラクションみたいだな。


「わかりました。引き受けましょう」


「おお、そうか。助かる」


「ただし、条件を一つつけます。私が生きていることは内緒でお願いします」


「なぜだ?生きているとなればSランクに復帰できるぞ?」


「ええ、Sランクだと稼げるのですが、今回のような断りにくい依頼も多くなります。なので、秘密にしておきたいのです」


「まあ、それが望みというなら仕方ないが、、、あ、、、父上はジン殿のことを知っておるぞ?報告が行っているはずだ。下手すると、すでに各国に情報が行っている可能性もある。Sランクの生死は国の重要情報だからな」


「今からでも止めれませんか?」


「ちょっと待っておれ」



シグルド殿下はそう言って、部屋を出て行った。

しばらくして戻ってきた殿下は、おれに「すまん」と謝ってきた。

すでに知らせた後だったのかな?


「父上はすでに各国に連絡を入れてしまっていた。追加で各国にジン殿の要請を連絡してもらえる事になっているが、各国のトップが知っていたら、一般人から隠してても意味がないかもしれないが。。。」


「はあ、殿下、私の人生設計を変えるつもりですか。ふう、仕方ありませんね。報酬は白金貨2枚にしましょう。今回の迷惑料込みです」


「仕方あるまいな。それで頼む」


「では行く日が決まったら連絡ください。今日の宿に泊まっていますので」


「うむ、出発は3日後を予定しておる。今回は重ね重ねすまなかったな」




俺たちは宿に戻ってきた。


「メアリー、シグルド殿下の依頼、どう思う?」


「賊がいるのは確信しているようですわね。どの位の規模かわかりませんが、それなりに危険なのでしょう。街で聞き込みが必要かもしれませんね」


「そうだな、クレア、マリア、街で聞き込みを頼む。タスクのダンジョンに関してだ。賊が出るという噂があるとも聞く。ダンジョンの作りも含めて確認してほしい。ダンジョンの作りに関してはギルドの方がいいかもしれないけど」


「承知しました。そのダンジョンにはいつ向かいますか?」


「3日後の予定だ。

ああ、その依頼だが、お前たちは連れていけない。なので、タスクの街までしか連れていけない。

ダンジョンに潜るなら自分たちだけで行ってくれ。一応初級らしいから、お前たちだけでもいけるだろう。もちろん、潜らずに待っていたもいい。

ダンジョンでは1週間ほどかかる予定だ」


「3日後ですか。情報を早く得ないといけませんね。すぐに聞き込みに行ってきます。クレア、行きましょう」


「おう」



二人が出て行くと、メアリーが話しかけてきた。


「二人がいない間に話があるのですが、『成人の儀』に関してですわ。

『成人の儀』は王族の男子に課せられた義務です。『成人の儀』をすませていないと、王にはなれません。理由は私にもわかりませんが。それと『成人の儀』はべスク王国独自の制度です。ザパンニ王国にはありません。

なので、想像でしかありませんが、ただ行って帰ってくるのではなく、ダンジョンに何かあるのかもしれませんわ」


「そうか、メアリーはその辺を調べてくれないか。殿下にお茶だと言えばいいだろう」


「任せてくださいな」



「あの、私は。。。」


「ああ、リリアは、そうだな。おれの話し相手だな」


「そ、そうですか。お役に立てませんで、すいません」


リリアがしょんぼりしている。しかし、どうしようもないよね。適材適所ってあるし。


「メアリーについて行ったら、、、」


「それはいけませんわ。王族以外には通常『成人の儀』に関しては秘匿されています。貴族とは言え、リリアを連れて行ったら、聞けるものも聞けなくなりますわ」


なかなか辛辣だが、言っている事はもっともだ。

リリアには大人しくお留守番をしていてもらおう。


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