151 遺跡 (5)
「それでは、遺跡自体を見せてもらえますか?」
「はい、こちらです」
俺たちは遺跡の中に案内される。
遺跡自体は古い屋敷のような趣で、遺跡というか古民家といった感じだ。
「遺跡の保存状態が良いように見えますが、理由はわかりますか?」
「はい、遺跡全体に言えることですが、実際に経った年数に応じて朽ちているものと、関係なく保存されているものの2種類に分かれます。今回の遺跡は、かすかに魔力が感じられますので、なんらかの魔法で状態を保存していたのかと思われます」
時間でも止めてるのかね?
<時空魔法>があるのだから、できても不思議じゃないね。時間を止める、を付与するとか。
「遺跡の形状は古代帝国時代と違うのでしょうか?」
「いえ、遺跡自体は他の遺跡と同じだと思われます。細かい部分は違うのですが、基礎構造が一緒です」
多分、昔の一般的な家なんだろうね。一般の家に状態保存の魔法ね。よほど魔法が流通していたんだろうか?
いや、この遺跡の持ち主は<時空魔法>の使い手だ。自分で施した可能性もある。
「では、肝心の魔法陣を見せてください」
「はい、こちらです」
魔法陣が書かれているという部屋に行くと、確かに地面に魔法陣が刻まれている。
しかし、ボロボロだ。状態保存されてるんじゃないの?
「これだと、元の魔法陣を特定するのが難しいのじゃないですか?」
「それですが、ジン殿の使われた魔法陣をもとに検証すると、納得のいける部分が多いのです」
「それだと、あの魔法陣と同じかは断定できないのでは?」
「その通りですが、他に<転移>の魔法陣だと言われているものとは違うので、あれだと考えるのが一番近いのです」
おかしいな。通常の<転移>魔法陣の改良版だと書いてあったのに。
他の魔法陣が違う魔法のものの可能性が高くなってきたな。
「私が見る限り、ここ、や、ここ、が違うように見えますが?」
「その通りです。なので、何かアレンジが加わっているんじゃないかと」
いやいや、厳密に見ないとダメでしょ。研究者が想像でモノ言っちゃいけませんよ。ちゃんと根拠がないと。
まあ、実際に俺が書いた魔法陣と違うし、違う部分がいじった部分なのだろう。
こっちの魔法陣も覚えておこう。何かに役にたつかもしれない。
「うーん、似てるとしか言いようがありませんね。
ご存知の通り、魔法陣は厳密に書かないと、同じ効果を発揮しません。なので、アレンジが加わっているだけで、別物の可能性もあります」
「それも考えたのですが、現在知られている魔法陣で一番近いのがあの魔法陣なので。何か参考になるのでは、と」
こんないい加減な話に白金貨10枚も出すのか。研究者放置しすぎだろう。
「マリウス皇子、こんないい加減な調査、どれだけ意味があるかわかりません。どう考えられますか?」
「確かに、似てるだけでは根拠になりませんね。似てても全く別の魔法の魔法陣というのが確認されていますし」
「今回の話、今の研究に対する意見を言う、でしたよね?私の意見は研究者の話は検討に値しない、です」
「今の話を聞く限り、仕方ないですね。魔法陣が全く一緒だと聞いたからわざわざ確認に来たのに」
「皇子、せっかくなので、遺跡をもうちょっと見てきてもいいですか?<転移>の魔法陣かどうかとは別に、遺跡というだけでロマンを感じるので」
「ジン殿も男の子ですね。どうぞ、壊さなければ大丈夫です」
「ありがとうございます」
俺が見たかったのは地下室だ。魔石があるはずなんだが。。。
地下室への入り口が見つからなかった。
階段でもあるのかと思ってた。
「この遺跡はこれだけですか?2階や地下室などは?」
「ありませんでした。ただ、何をするのかわからない場所はありました」
「どこですか?」
「こちらです」
案内された場所は、1メートル四方の空間だった。扉を開けると、1メートル四方の空間、そこから先は壁。確かに何のための場所なのかはわからない。
しかし、床を見ると、ここだけ土である。土間という可能性もあるが、ここに階段があったと考える方が自然だ。もしかしたら、縄梯子の類かもしれないが。
今指摘すると、掘り出されてしまうので、指示しないが、研究者がいなくなった後にでも掘ってみたいものだ。
魔力を注入する魔石というものにも興味がある。
今の世界では魔石は消費するものであり、再利用できない、とされているからだ。再利用可能な魔石なんかが出回ったら、世界の経済が根底からひっくり返されるだろう。
冒険者が一番煽りを食らうだろうな。
どちらにせよ、今すぐの話じゃないな。
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