149 遺跡 (3)
「それで私の立場はどう言った感じでしょうか?」
「はい、着くまでは私の随行員として扱います。特に何もする必要はありません。護衛も騎士を連れて行きますので」
護衛の必要もないと。まあ、皇子が視察に行くのに冒険者を雇うのもおかしな話だしな。近衛大丈夫か?になるし。
ならば、途中はもらった召喚魔法の本でも読ませてもらおう。中級と書いてあるし、色々載っているだろう。
旅の途中に立ち寄った村で休憩していると、村長さんと思しき人が訪ねてきて、話があるという。現在の俺の立場はマリウス皇子の随行員。つまり、皇子に相談がしたいと。
とりあえず話を聞いてからだな。
「それで話とは?」
「はい。今年は村の特産品であるブドウが不作で、葡萄酒があまりできませんでした。なので、税の額を下げていただけないかと思いまして」
「なぜそれを私に?」
「はい、直接申し上げると、失礼に当たるかと思いまして」
それは俺に対して失礼ですよ?
「伝えてもいいですが、どうなるかはわかりませんよ?確か、税の減免に関しては法律が決まっていたはずですよね?」
「え、ええ。ですが、それでは村は潰れてしまいます。なので何とかお願いできないかと」
「まあ、無理でしょうが。それと、私が仲介しても、税の減免を申請したのはあなたですので、懲罰の対象となった場合は知りませんよ?」
「そ、そうですか」
「迷われてるのなら、一度持ち帰って、再度検討されてはいかがですか?」
「そ、そうですね。そうさせていただきます」
俺を経由すれば罪にならないなんて、どうやったら考えられるんだろう?まあ、責任取る気がないのなら言うなって話だな。
罰則があるのは多分間違いない。俺はその法律を知らないので、かまを掛けただけなんだけど、村長の感じからして、罪に問われるんだろう。
「マリウス皇子、税の軽減の嘆願は罪になるのですか?」
「ああ、重罪ですね。毎年徴税官が地方を回って、その年の出来不出来を判断して税を決めています。なので、それでも払えないのは、何か別の理由があるからです。
以前あったのは、村長の娘が結婚するのに、持参金が必要で、その支払いのために税が払えなかったと言うものです。
税の着服として、村長は死刑、問題の娘も犯罪奴隷に落とされました。
もし、出来が悪いから税金を減らして欲しいと言うのなら、その徴税官が来ているときに言えば良いのです。それなら罪にはなりません。決まってから言うのなら、それは徴税官が不正をしていたと言っているのと同じです」
「なるほど。毎年同じ額じゃなくて、ちゃんと調査してるんですね。それなら安心ですね。不作の年の税金が減ると言うことは、豊作の年は増えるんですか?」
「はい。と言っても普段より多い分に関しては税率が低いので、豊作になればなるほど、村は潤います」
ふむ。色々と考えられているようだ。あの村長、俺に言う前に徴税官に言うべきだったのにね。まあ言われたことを、皇子には報告しないでおいてあげるから、よく考えるようにね。これは最後のチャンスだよ?
夜遅くに村長が訪ねてきた。
「やはり、話をしていただけませんか?このままではこの村は。。。」
「徴税官とはどう言う話になっていたのですか?」
「はい、この村のぶどうは他の農産物とはなる時期が違うのです。なので、以前徴税官様が来られた際には出来不出来がわからない状態でした」
「時期が違うのは今年に限ったことじゃないですよね?今まではどうしてたんですか?」
「はい。出稼ぎに出て、なんとか翌年まで過ごしていました。ただ、今年の不作はそれどころじゃありませんで」
「まあ、ダメだった場合の覚悟ができてるなら問題ないです。皇子に話してみましょう」
「おお、よろしくお願いします!」
多分あなたの首が飛ぶと思いますけどね。豊作の年に貯蓄しないのが悪い。それも出来ないほど長期間不作が続いているなら徴税官が把握しているはずだし。
「と言うわけです」
「なるほど、ジン殿はどう考えられますか?」
「私が口を挟む問題じゃないですよ。豊作の年には使ってしまって、不作の時だけ勘弁してもらおうなんて甘い考えをしてるからです。どう処理をするかは、法律で決まってるんですよね?」
「ええ、間違いなく村長の首が飛ぶでしょう。ジン殿が嘆願されるなら話は別ですが」
「まさか。そこまでこの村に縁はないですし、先ほども言った通り、この村の考えが甘いのです。
多分、たまたま皇子がきているから相談しようだなんて、軽く考えているのでしょう。それがどれだけ重大なことをしているかも考えずに。
私にはこの村をかばう気はありません」
「そうですか。安心しました。明日の朝、沙汰を出しましょう」
翌日、村長は解任、斬首。村には追加の税を課すことになった。
厳しいけど、これが現実なのよね。
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