148 遺跡 (2)



俺は最初に案内されたのとは違う部屋に案内された。

中は広く、応接セットも豪華なものだ。メアリーたち一行も集まっていた。


「メイドさん、ちょっと部屋を出ていてもらえますか?極秘の話をしますので」


「承知しました」


メイドさんが出て行ったのを確認して、風で周囲を覆う。これで声が漏れることはないはずだ。念の為<魔力感知>もしておくが、特に魔法具が隠されていることもなかった。


「メアリー、話は聞いているか?」


「いいえ、帝都で見かけたからと言って、お茶に誘われただけよ?」


「そうか。ならどうするかな。実はさっき一つ依頼をされてな。受けるか悩んでる」


「私たちを人質にでも?」


「その可能性もある」


「それなら見くびられたものですわね。確かに騎士たちは厄介だけど、逃げるだけならどうとでもなりますわ。私たちのことは考えに入れなくても大丈夫です、自分たちの身は自分たちで守りますわ」


ふむ、逃げ道でも知ってるのかな?古い城みたいだし、そういう隠し通路があるのかもしれない。王族だけに知らされる的な?元の歴史が歴史だし、ザパンニ王家がアズール帝国の城の抜け道を知っていてもおかしくない。

なら決まりかな?


「なら、すまないが、しばらくはここで厄介になっていてくれ。依頼を受けることにする」


「どの位ですの?」


「2−3ヶ月だ」


「そんなにかかりますの?」


「ああ、帝国の東の果てまで行くらしいからな。片道一月はかかるだろう」


「また護衛依頼ですの?」


「まあ、そう言ってもいいかもしれないな。第2皇子と一緒だ」


リリアは俺のことを心配しているようだが、俺よりも自分たちの方が危険なことに気づいて欲しい。


「お断りする気は無いようですわね。私はここで待っていますわ」


「ああ、すまんな。メアリー、あとは頼む」


「わかりましたわ」


俺は風の魔法を解除し、メイドさんを呼んだ。


「お茶を頼む」


メイドさんはすぐにお茶を入れてくれた。


マリアがじっと見つめているが、自分の仕事取られたとか思ってないよね?お茶を入れる技術を盗もうとしてるんだよね?


メイドさんに、依頼を受領した、と伝言を頼んだ。




翌朝、俺の泊まっている部屋に、マリウス皇子が訪問してきた。


「依頼を受けてくださり、ありがとうございます。父に代わってお礼を申し上げます。

早速ですが、遺跡に行く日取りを決めたいのですが、何か希望はありますか?」


「できるだけ移動を短くしてほしいですね」


「馬車での移動ですので、大して短くはなりませんが、配慮しましょう。他には?」


「そうだな、あとは今回の報酬の話をしてなかったな。期間は2−3ヶ月。達成条件は遺跡を見て意見をいうこと。報酬は?」


「はい。金銭なら白金貨10枚。実績により追加報酬あり。魔法具などが良ければ探させましょう」


「ほう、高待遇ですね」


「ええ、今回の遺跡に関しては期待してるんです。魔法陣が<転移>のものだと判別するだけでも研究は進みますから。少なくとも、<転移>でない可能性を探すのに費用をかけるくらいなら、白金貨10枚でも元が取れます」


「それに魔法陣が<転移>のものでない可能性も考えているんでしょう?俺が嘘をついたらどうします?」


「あなたを信用するしかありませんね。それにあなたが魔法陣を<転移>に使ったのは確認しています。本当の魔法陣を隠すためだけにあと複雑な魔法陣を記憶していたとは思えません。もともと使用を予定していたのなら兎も角、使用した当時の状況から、前から覚えてないとおかしいという結論になりました。

つまり、あなたがあの魔法陣を覚えている理由があるはずです。なので、あの魔法陣が<転移>のものでなくとも、何か価値があると考えています。

そのことと、今回の遺跡の件を合わせますと、あの魔法陣が<転移>のものだという確率が高くなります」


「そこまで考えているのなら、俺が秘匿する可能性も感がているんですよね?」


「はい。その場合、研究は10年は遅れるでしょう。それでも今、あなたが帝都にいる間に依頼できた事は僥倖だと思っています」


「人質になることに関しては?」


「私は人質になったつもりはありません。メアリー殿下を人質にとってないのと同じように」


まあ、口ではなんとでも言えるわな。まあいい。人質にした場合は帝国ごと滅んでもらおう。それだけの覚悟を持って依頼していると考えたいね。


「出発の日取りは任せます。前日までに知らせてください」


「それなら、明後日に出発でお願いします。今準備を急がせていますので」


「わかりました」


皇子が視察に行くとなると、準備も大変なのかね。何日もかかるなんて。俺なら、今からでもいけるよ?


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