146 初級ダンジョン (3)


このダンジョンの階数を聞き忘れた俺たちは、何層まで潜ればいいのか相談していた。


「踏破されている以上、それほど深くないのでは?」


「いえ、ダンジョンである以上ある程度の深さはあるでしょう?」


「どのみち、進むか戻るしかありませんし、進めば良いのでは?」


「私はご主人様と一緒ならどちらでも構いません」


うん、マリアだけずれてるけど、このまま進むと言うことでいいらしい。

10層単位なので、21層が存在する以上、30層は確定だ。

次は何型のエリアだろうか?


21層に降りると、森林型だった。

はい?10層ごとにエリアが変わるんじゃなかったっけ?

このダンジョン、風の属性だとか言ってたっけ?風の属性と森林って何か関係あるのだろうか?


この階層からは獣道が見つからなかった。それほど沢山の人が訪れてないのだろう。マッピングを再開しないと。


中央まで行ってから、螺旋状に回って地図を書いていく。中心に近いのもあれば、ほとんど外れのもあった。

魔物は特筆すべきことはない。フォレストジャイアントと言うのが出てきたが、要は巨人型の魔物で、一般的に想像される魔物だ。風属性だと誤解されるが、属性はない。肉も食べれず、他の部位も売れるところがない。

レベル上げでなければ、放っておいただろう。


10日ほどかかかったが、なんとか地図を埋めて、30層まで降りてきた。

30層で階段を探すが、見つからない。これは最下層かな?一応もう一周してみよう。ない?なら最下層でいいよね。


「じゃあ、下層への階段が見つからないので、踏破ということにしたいと思います。わーぱちぱち」


「でも、ダンジョンコアって何処にあったのかしら?踏破者が壊さないようにと言っているということは、壊せる場所にあるはずですわ。」


メアリーのいうことも正しい。この階層で唯一怪しそうなのは、階の真ん中にあった、石碑だ。調べてみても魔力も感じず、動かそうとしても隠し部屋があるわけでもなかった。

その石碑自体がダンジョンコアの可能性もあるが、それならなんで魔力を感じないんだろう?

とりあえず、石碑を壊すとまずそうなので、放ってあるが。。。地上に戻ったら聞いてみよう。


「まあ、見つからないものは仕方ない。地上に戻ってから聞いてみよう」


俺たちは地図に沿って、地上に戻る。20層台は10日かけて踏破したが、帰りは1日だ。その後も1日あれば戻れる。




「それで、どれがダンジョンコアだったのでしょうか?」


ギルドで受付に聞くと、

「答えられません。教えると破壊しようという人が出てくるので」

と返ってきた。


なるほど、ギルドなりに冒険者の善意に頼らずにダンジョンを守ろうとしているのか。


「それじゃ、質問を変えますが、階層は30層までという事で良かったですか?」


「はい、このダンジョンは30層までです。ジンさんたちは146人目の踏破者ですね」


踏破者多っ!


まあ、大して強くなかったしな。俺たちのように、中級に行く前に一度ダンジョンを経験しておこう、という中級冒険者が多かったということだろう。



「それで、踏破すると何かあるんですか?」


「おめでとうございます。ぱちぱちぱち」


え、それだけ?受付さんが口で「ぱちぱち」言ってるけど。。。

まあ踏破者ごとに賞金とか出してたら破産しそうだしね。



「あと、このダンジョンが風の属性だと言ってましたが、何が風なんでしょうか?」


「はい、このダンジョンには風属性の魔物はいませんし、風が吹き荒れているわけでもありません。なので、風にちなんだものは存在しません。

ですが、このダンジョンが存在した昔から、風の属性だと言われてきたので、風の属性を名乗っています」


なんと特に意味なかった?属性付与した武器とか必要かと思ってたのに。


「一説にはダンジョンが生きていた時代には、風属性の魔物が出たのではないかと言われています。また、その頃はもっと深くまで階層が存在していたとも」


なるほど、踏破すると階層が減ると。やっぱり踏破されたことによる魔力の現象だろうか?しかしコアは破壊されてないんだよな?なら階層が減るのはおかしい。

つまり、踏破される前から30層までだったということだ。

魔物に関してはなんとも言えないな。時間の経過で変わってきたとも取れるし、何人もの踏破者が出て、少しずつ魔物が弱ってきたとも取れる。ダンジョンの魔力も無限じゃないだろうし。

中で冒険者たちが死なないと、ダンジョンの魔力にならないみたいだしね。搾取されてばかりのダンジョンならいつか枯渇するだろうけど。





さて、ダンジョンも攻略したし、帝都に戻るか。



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