140 温泉


1週間後、俺たちは旅に出ていた。


北の森を避けて、北東に向かう。

1週間もすれば、ワイバーンのいた山に着く。そこからは山を迂回するように進んでいく。温泉街にいくためだ。

砦を経由して温泉街に着く。



「女将さん、その後どうですか?」


「ああ、ジン様、以前はありがとうございました。あの後は妨害するものもなく、順調に経営できております」


「それは良かった。またしばらく厄介になってもいいですか?」


「もちろんです。当店は宿屋です。お客様ならいつでも歓迎します」


俺たちは温泉宿が順調に言っているようで安心した。

向かいの温泉宿は潰れたそうだ。向かいの宿も高級宿だけあって、買い手がつかず、放置されているという。勿体無い話だ。


俺は早速温泉に入る。


ああ、疲れが癒る。。。


俺は結婚式の後の晩餐会の疲れを持ち越してきた。旅に出たので、疲れを癒す暇がなかったのだ。1週間くらいで疲労は抜けない。特に精神的な疲労は。



隣の女風呂からはキャッキャと楽しそうな笑い声が聞こえる。

俺はその声が聞こえない、岩場の陰で浸かった。


やはり、女4人と旅するのは精神的に疲れる。見張りなどは楽になるのだが。。。


全員が俺の女だと言うなら、もっと自由に過ごせるが、メアリーも奴隷2人もパーティメンバーだ。決して恋人ではない。

ハーレムは男の夢だが、うまく回せればの話だ。俺にそんなスキルはない。複数の女と同時に関係を持つと、必ず何らかの問題が起きるだろう。俺はそれに対処できる自信がない。いくら一夫多妻制だとはいえ、人間だ。欲もある。

メアリーを断ったのもその辺が関係している。

絶対に問題が起きないと言う保証があるなら受け入れていたかもしれない。


奴隷2人は問題ない。最初から納得の上だから。しかし、メアリーは違う。それに、リリアよりも立場が上だ。それが側室ではリリアが苦労するだろう。多分、俺も苦労する。


とりあえず、リリアと結婚式をあげたので、リリアが正室だ。せめてメアリーが王族でなく、国の意図が見えてなければ側室に迎えても良かったんだが。


俺が何様だって?Sランク冒険者で<転移>魔法が使える、大賢者の再来、、、かもしれない男だ。


俺はこの温泉宿で十分に疲れを取ってから、旅を再開するつもりだ。このあとは、こんなに贅沢にゆっくり出来るチャンスはないだろうからな。

部屋割りは俺とリリアで一室、他の3人で一室だ。別に俺一人で女4人でもいいのだが、リリアが嫌がったのだ。結婚したからにはベッドはともにすべきだと。

結婚すると、いろいろ面倒が増えるね。


俺たちは1週間ほど滞在した。



「名残惜しいが、また寄らせてもらうよ」


「はい、その時はまたワインをサービスさせていただきますね」



俺たちは旅を再開した。目指すは帝都カズンだ。北の砦で道を尋ねると、北の街道をまっすぐ行けば着くらしい。馬車で10日程度だと言う。

他国との距離が馬車で10日というのが近いのか遠いのか。いや、ザパンニ王国は馬車で1日だったな。山脈で分けられているとはいえ、各国が平和でなければ、遷都してでも距離を置いただろう。建国時から友好的だったというから驚きだ。


戦争といえばヤパンニ王国というほど、他には戦争がなかった。そのヤパンニ王国もザパンニ王国の属国になった。

これからは平和な時代だということだ。


トップと商会、一般平民などは仲が良いのだが、軍部が犬猿の仲という話だ。平和だと予算が取れないようで、他の国を仮想敵国として、軍備の強化を図ってきた。とは言っても、結局は武闘大会のような形での競い合いになるのだが。

純粋にいがみ合ってるいうよりも、既得権益を守るための建前のようなものだ。国も分かってて予算を出している。各国ともにそうだ。


何が言いたいかというと、帝都カズンに入るのにメアリーが同行していても問題がないということだ。もちろん、正式に名乗るわけではないが、メアリーの顔を知っている貴族も多い。なので、バレた時にどうするかは事前に相談していたのだ。

結局仲が悪いわけではないので、問題は起きないだろうとの結論に至った。

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