134 封印の剣 (2)


3日後、ギルドでは職員が忙しく動き回っていた。


「アイリスさん、何かあったんですか?」


「ああ、ジンさん、ちょうどいいところに。ちょっとこちらへ」


隅っこに連れて行かれて、話を聞く。


「実は、例の封印の剣を抜いた冒険者が逃げ出したみたいでして。輸送の責任者は宮廷魔術師なのですが、逃げ出したのが冒険者ですので、こちらでも捜索をすることになりました。

そこで、ジンさんは<魔力感知>ができると聞いてますので、森の中など、調査が難しい場所を捜索していただけないかと思いまして。

ジンさんなら、結構な距離を捜索できますよね?」


「うーん、協力するのは良いですが、その冒険者の魔力を知らないから、魔物と一緒になってしまって、特定できませんよ?」


「ええ、それで『ジンさんの知らない魔力』を探してもらえないかと。この辺の魔物の大体とはあったことありますよね?」


「まあ、そうですけど。見つけたらどうするんですか?」


「可能なら捕縛をお願いしたいです。最悪討伐もありです。宮廷魔術師団や神殿からは捕縛を依頼されていますが、ギルドとしては、討伐もありなんで。危険と分かっているのを放置できません。元冒険者というのも悪いですね。こう言ってはなんですが、心情的には討伐を優先して欲しいくらいです。冒険者ギルドの沽券にかかわります」


「わかりました。条件と報酬は?」


「条件は北西の森の捜索、最大で1週間。報酬は金貨10枚。捕縛なら追加で10枚。討伐なら5枚です」


「わかりました。その条件でいいです。今日からの方が良さそうですね。行ってきます」



俺はまず西の森に向かった。

街道の方から捜索した方がいいだろう。魔力の感知は10キロほどできるが、判別できるのは1キロ程度だ。

街道は西に4日程度行った場所だ。走っていけば数時間で着くだろう。そこからオーユゴック領に向かって森を探索していこう。


西の別れ道から北に向かって<魔力感知>しながら進むが、知らない魔力は感知されない。夜は光の結界を張って寝た。今のこの森に俺の結界を抜けれるのはいない。

グネグネとうねるように回って、範囲を潰していく。オーユゴック領に着くまえに東に転進する。端まで行っても見つからない。もう依頼の一週間がたつ。報告に戻った方がいいだろう。


王都に戻ると、アイリスさんが、寄ってきて、「どうでしたか?」と聞いてきた。


「ダメですね。西から順番に北まで回りましたが、発見できませんでした。こちら側ではなく、街道の西、魔の森に向かったのでは?」


「ええ、それならそれで良いのですが。いや、死亡を確認できないのは問題ですが、魔の森で生き残れるとも思えませんし。元Dランク程度では魔の森は無理でしょう。

とりあえず、ご苦労様でした。基本報酬の金貨10枚です」


俺は報酬をもらうが、封印の剣は俺が見つけた剣だ。結果は気になる。


「他の場所でも見つかっていないんですね?」


「はい。もう死んでいるかもしれません」


「宮廷魔術師団と神殿の見解は?」


「どちらも死亡です。ただ、できれば封印の剣は見つけたいようです。ただ、そこまで冒険者ギルドでは面倒見ません。対象は死亡、で今回の騒動は終了です。いつまでも冒険者を拘束できませんし」


「わかりました。何かあったら言ってください」


俺はギルドを後にした。



「リリア、森を探索したけど、見つからなかったよ。ギルドは死亡と判断するそうだ。ドゴール様は何か言ってないか?」


「兵士を出して、街道付近を捜索したそうです。今のところ見つかっていないようですね」


街道付近もだめ、王都付近もだめ、北西の森もだめ。とすると、やはり死んだか西の魔の森だな。

俺の勘が魔の森だと告げている。

しかし、魔の森の魔物は俺の結界を越えてくる可能性があるので、徹夜になる。探せて2日。そこまでしてやる事か?理性は無駄なことはするなと言っているが、勘は捜索を訴えてくる。こういう時は勘に従うべきだ。


「リリア、今回の件で魔の森に潜ってくる。多分1週間くらいで戻る。」


「え、死亡、で終了じゃなかったんですか?」


「ああ、ギルド的にはそうだ。だけど、俺の勘が魔の森を調べろと言っている。俺は勘に従ってみようと思う」


「なるほど。冒険者の勘は大事だと聞きますしね。クレアとマリアも連れて行きますか?」


「いや、二人では魔の森を生き残れないだろう。俺一人で行ってくる」


「そうですか。ちゃんと帰ってきてくださいね。1週間以上は待ちませんよ?」


「分かってる。ちゃんと帰ってくるさ。変なフラグは立てないでくれ」


「フラグ?」


「なんでもない。心配するなということだ」

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