130 ダンジョン (4)



さて、11階だ。今回からは別のエリアだ。火山か墓地か。警戒して降りていくと、森林地帯だった。

これでは片っ端から脇道を探す方法は取れない。


とりあえず、まっすぐに進んでみる。

横から糸が飛んできた。みると草陰にジャイアントスパイダーが隠れていた。

糸で絡め取ってから食事にするのだろう。


だが、糸の速度が遅すぎる。糸を連射して来たが、問題ない。はずだったんだが、近くに行った時につい、剣で払ってしまった。剣に糸が絡みつき、うごかせなかった。俺は剣を捨て、魔法に切り替える。風の刃だ。

ジャイアントスパイダーが真っ二つになった。


ジャイアントスパイダーの討伐証明はどこだろうか?魔石は問題なく回収したのだが、討伐証明部位がわからない。

仕方ない、丸ごと<インベントリ>行きだ。


それからも猿の魔物や、カニのような魔物、珍しいのになると、クレイジーバードというのもいた。

クレイジーバードは魔法で倒したので、跡形も残っていない。もう少し威力が落とせないと素材が無駄になるな。


俺たちはあちこち歩き回って、中央より西寄りの場所に階段を発見した。

この調子だと結構な時間がかかる。今日も一日かかってしまった。


「クレア、階段下と上とどちらで野営するのがいいと思う?」


「上だな。まだ土地勘のある方がマシだ」


なら、虫除け香の出番だな。


「ご主人様、それはなんだ?」


「虫除け香と言って、虫が嫌う匂いを発するらしい。

この階層は虫が多く、寝てる間に噛まれて、毒や麻痺になることがあるそうだ」


「なるほど、厄介だ」


これから20層まではこのまま森林地帯だろう。

階段を探すのが面倒だ。


<魔力感知>の範囲を広げるが、ダンジョンには疎外機能でもあるのか、階層全体を覆えない。

魔物の気配があるが、動いている。動いてないのは、植物型だろう。


「とりあえず、こっちに向かってみよう。何かあるかもしれん」


俺たちはトレントなどの植物系の魔物を警戒していたが、普通に下への階段があった。


「階段も<魔力感知>に引っかかるのか。これで探索が楽になるな。洞窟型では狭い空間だったから使いづらかったんだよな」


「<魔力感知>はそんな事も出来るのか。さすがはご主人様だ」


俺はそれからも<魔力感知>で動かない魔力を中心に探した。

途中で避けれない魔物と戦ったが、蜘蛛型や動物が魔物になったようなものが中心だった。

蜘蛛型は糸を<火魔法>で焼いてやり、動きが鈍くなったところを<魔闘術>で叩き切った。だが、クレアの刃は弾かれてしまい、ダメージが与えられなかったようだ。


「クレア、剣が弾かれていたようだが、どうだ?」


「ああ、甲殻のある場所は難しい。次は継ぎ目を狙ってみる」


クレアの剣は俺の作った剣を使っている。材質もミスリルだ。このくらいの甲殻ならきれるはずなんだが。


「クレア、剣に魔力は流しているか?」


「いや、<身体強化>がやっとだ。私の魔力ではすぐに魔力切れになるから使ってないし、戦闘中に魔力を使えるほど<魔力操作>できない」


「なら、今後覚えろ。<魔力操作>と<魔闘術>は戦士にとっても有益だ。特に上級にろうと思ったら必須だ。この程度の甲殻を貫けないようでは、下層の魔物に通用しないぞ?」


「そうか。どうすればいい?」


「魔力を感じて、魔力を武器にまとわせるんだ。魔力は感じれるな?<身体強化>は使えるか?」


「ああ、発動するときとしない時がある」


「なら、まずはそこから始めよう。筋肉にまで魔力を纏わせるのが<身体強化>で、それを武器まで行き渡らせるのが<魔闘術>だ。<魔闘術>は自分の体以外のいわゆる異物に魔力を纏わせるのが難しい。だが、原理は一緒だ」


「この階層を効率的に攻略するつもりだったが、一旦保留だ。クレアがこの階層で戦えるかを先に検証する。動く敵に向かっていくから、何回か戦ってみろ。その結果によっては、今回のダンジョンアタックはここで終了だ」


俺は、動いている魔力に向かっていった。オークが徘徊していた。3匹だ。クレアなら問題ないだろう。

クレアは目を閉じて集中している。体の周りにポツポツと魔力を感じだした。総合して半分くらいになった頃だろうか、クレアがオークに斬りかかった。<身体強化>は発動しているようだが、それほど影響が出ているようには見えない。


「クレア、魔力は全体に覆っていたのか?」


「いや、半分くらいだっただろうか。これ以上は操作できないと感じたので、発動させた」


「使った後に筋肉痛などは?」


「少しだがある。動けないほどではないので、今まで気にしてなかった」


「全体的に魔力で覆えてない副作用だな。それにしても半分で操作できないように感じたのか。なら、<魔力操作>のスキルを覚えるのが先だな。


クレア、予定を変更する。ダンジョンアタックはここまでだ。

戻って、オーユゴックまで戻る。そして、<魔力操作の>練習だ。<魔闘術>まで覚えてもらうぞ。期限はリリアの卒業までだ。それまでに覚えられなければ、ダンジョンアタック中は、宿で居残りで<魔力操作>の練習だ」


俺たちはダンジョンをでて、オーユゴック行きの馬車を探した。

2日後に出発する商隊の護衛があったので、それを受けることにした。


途中でゴブリンが出るなどの騒ぎがあったが、所詮ゴブリン、問題なかったと言えるだろう。

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