123 文化祭 (3)
さて、リリアの発表は見たので、あとは自由なのだが、パンフレットによると、他の伝説魔法に関しても研究しているクラスがあるらしい。3つ先の部屋だ。
<召喚魔法>研究会、と書かれている。
あまり人は入っておらず、閑散としている。入り口の案内であろう学院生も暇をしている。
俺にとってはありがたい話だ。ゆっくりと見れる。
俺は案内の学院生に話しかける。
「ちょっといいかな?ここはどんな研究をしてるんだ?」
「はい!ここでは<召喚魔法>に関して研究しています。中に発表がありますので、ご案内します」
暇していたようで、喜んで案内してくれた。
「こちらが順路となりますが、まず<召喚魔法>とは何か、ですが、一般的には魔物を召喚して従わせる魔法だと言われています。しかし、この研究会では、魔物が召喚できるのならば、人や物も召喚できるのではないか、という観点から研究しています。
<召喚魔法>は現在では使い手がいませんので、あくまで文献を頼りにした仮説をいくつか紹介しています。
まずは、<召喚魔法>は存在しない、という仮説です。転移魔法を使える魔物をテイムしたという説ですね。しかし、これでは伝説に残るほどの数が存在できないので、可能性は低いと考えています」
おいおい、自分たちの説だろう。一番最初に可能性の低いのを持ってくるなよ。検証としては、早く潰せるのを潰してしまって、見込みのあるのに時間をかけるのは間違いではないが、一般参加者はそんなの望んでないと思うぞ?
「次に、魔物には真名があるという説です。魔物は魔石を体内に宿しているので、それぞれごとに真名があり、それを知ることで、召喚が可能になるという説です。これに関しては魔物の数が膨大で、しかも繁殖の仕方が不明なものも多く存在していますので、全部に真名が付いているとは思えない、というのが一般の見解です。ただ、反証は見つかっていません」
まだ人や物を召喚するという話題が出てこないんだが、本来の研究発表が後に来るのか。閑散としているはずだ。
「次に<召喚魔法>というスキルが実在した、という説です。現在は使い手がいないことはイングリッド教国の発表で分かっているので、あくまでも過去に存在していた、という事になりますが。その名前の通り、召喚できる魔法です。
魔物と契約するなどで特定の相手と紐付け、魔力によって、転移させるというものです。契約によって、転移に必要な魔力が少なくても済むから可能だという説と、魔力は魔物側が提供しているという説があります。
どちらにせよ、召喚が可能だという前提に立っています。
そして、私たちの研究では、契約なりすれば召喚できるのであれば、人であればなんであれ、契約が可能な相手なら召喚が可能なのではないか、という説を研究しています」
ようやく本題に入った。長かった。
「契約の形も色々と予想されており、前述の真名の場合や、特殊な魔法陣を使った場合、魔力を共有する場合、魂のレベルで交感しあう場合、などの説が挙げられますが、どれも推論の域を出ません」
うん?終わりか?
「以上が当研究会の発表となります」
「結局、わからない、って事でいいのか?」
「はい。手がかりすらない状況です」
よく研究発表する気になったな。俺なら恥ずかしくて隠したくなるぞ。
結局<召喚魔法>の使い方のヒントすら出てこなかった。伝承に関しても省かれているから想像すらつかない。発表の仕方が下手すぎるだろう。分からないなら分からないで、もっと興味を引く方法はあったらだろうに。
他行こう。
「こちらでは<精霊魔法>の研究をしています。
まず、精霊とは何かですが、万物の構成元素と言われています。火水風土の4つが主に挙げられますが、時空の精霊などもいるとされています。
現在の魔法はすべて、精霊に魔力を渡して現象を起こしていると考えており、その精霊の一体と契約する事で、精霊自身が魔法を使ってくれることを<精霊魔法>と言っていると解釈しています。
つまり、『精霊が使う魔法』です。人間が<精霊魔法>というスキルを所持するのではなく、人間がするのは精霊との契約のみで、あとは精霊との交感によって、魔法を使う依頼をするという事ですね。
これに関しては、精霊の存在証明など、、、、、、、という訳です」
発表の方針はわかった。俺たちはこう考えてるから、分かってくれるよな、という考え方だ。押し付けともいう。
<精霊魔法>というスキルがない事を前提にしている時点で、俺の必要な情報はなかった。途中から聞き流したからよく覚えてないが、何か文献でも調べたんだろう。
「以上が当研究会の発表となります。何かご質問はありますか?」
「<精霊魔法>というスキルがある、という解釈はないのか?」
「それに関しては、イングリッド教国が管理し始めてから歴史上一人も現れてないことから、スキルがないと考えております」
また出てきたよ、イングリッド教国。<人間鑑定>がイングリッド教国の独占とはいえ、それを絶対だと信じるのは研究者としてどうかと思うぞ?
さて、そろそろキャンプファイアーの時間だな。リリアと踊らないと。
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