121 文化祭 (1)
ある朝、朝食をとっていると、リリアに8月30日の予定を聞かれた。
特に用事はないのでそう答えると、文化祭を観に来ないかと聞かれた。
「文化祭?何をやるんだ?」
「文化祭自体は、各研究会が普段研究している内容を発表する日です。
それに伴って一般参加者向けの出店やゲームなどが開催されます。これは研究会に所属していない人たちがメインになって行うもので、収入は自分たちのものにして良いので、大抵の者が参加します。
私は古代語魔法の研究をしているので、その結果を発表する予定です」
なるほど、文化祭だな。
「それは俺が行っても良いものなのか?」
「もちろんですわ。一般の方が来られないと、出店を出しても儲かりませんし、発表が一般に知られませんわ。ですので、出来るだけ人を集める必要があります。なので、生徒一人につき10名誘うように言われています」
「リリアは10人に声かけたのか?」
「いえ、その、学院外にそれほど知人がいませんので、屋敷の使用人に来ていただこうかと」
「なるほど。集めた人数も成績に関係するんだな?」
俺は先読みして言ってみた。
「はい。招待状を作成してもらいますので、人数は学院側に把握されています。また、招待状がない方でも問題なく入れますが、招待状は出店の割引券としても使えますので、人気です」
「なるほど、わかった。それなら参加させてもらおう。リリアの研究成果も見たいしな」
「それほど大したものではありませんが、図書館にある資料の関連文書だけを引用してまとめていますので、研究者以外でも楽しんでもらえると思います」
流石に新発見というのはないか。当然だな。図書館にあるような資料なんて、国の研究機関は嫌という程目を通しているだろう。だけど、古代語魔法を素人にもわかりやすく説明できるのは立派だと思う。
それに俺も興味がある。
<古代語魔法>lv13
未だに使ったことのない魔法だ。
魔力を循環させてレベルだけ上げているので、どんな魔法があるか知らないのだ。ロービスの屋敷(城)の図書室にも古代語魔法に関しては載っていなかった。
「リリア、参考までに聞くが、古代語魔法、実際に使えると思うか?」
「どうでしょうか?昔使えたのは間違いないらしいので、スキルを持っていれば使えるんでしょうけど。現在持っている人は確認されてませんので、事実上使えないのではないでしょうか」
スキルを持っていれば使えると。どんな魔法があるか分かるだけでも参加する意義があるな。呪文が必要だとか、魔法陣が必要だとか、何か具体的な話が載っていれば良いんだが。伝説とか伝承とかで何か伝わってないかな?でも<古代語魔法>ってなんかロマンだよね。ロストマジックとかエンシェントスキルとか。
神世の時代に使われてたって言われてるし、神様の魔法とかかもね。でも人間にスキルが付くってことは違うのかな?神様と話せるなら一度聞いてみたいね。
他にも使ったことのない魔法いっぱいあるんだよね。他の研究会でやってないかな。<精霊魔法>とか<召喚魔法>とか。<暗黒魔法>なんてのもあったね。なんか悪役が使いそうな名前だけど、これはおとぎ話にすら出てこない魔法なんだよね。とりあえずレベルは上げてるけど、使えない魔法をあげるのもどうかとは思うんだよね。いつか使えるかなぁ。
何にしても、見に行くのが楽しみになってきた。
文化祭当日。
リリア達は準備があるとかで、早朝から出かけていった。
俺は開催の午前十時に間に合えば良いので、ゆっくりできる。
屋敷の使用人も参加するので、馬車を出す予定だ。
「ルナ、今日は誰が参加するんだ?」
「はい、今日の参加者は有給扱いとなりますので、非常に人気でございまして。抽選で選んだ8名が参加します」
「8?俺も含めて9人か。10人呼んだと聞いているが?」
「はい。僭越ながら、私が10人目でございます」
「ズルしてないだろうな?」
「もちろんです。お嬢様から直接お声がけいただいたために、枠が別になっただけでございます」
「そういうのもズルだと思うが。。。まあ良い。1日楽しもうか」
「はい!」
ルナがノリノリだ。随分と楽しみにしているようだ。参加者はメイド着を着用しないように言われているらしく、普段着での参加となる。
ルナの普段着って初めて見るんじゃないだろうか?他の使用人達もおしゃれして行くみたいだし、楽しみでもある。若いって良いよね。
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