114 凱旋パレード
過去の訓練を思い出していて思いついた事がある。魔力を血管を流れるように巡回させていたのだが、血管は何も動脈だけではない。毛細血管もあるはずだ。血管の総距離としては毛細血管の方が長い。
それにも魔力を流したらどうなるだろうか?
俺は魔力を流そうとするが、抵抗が大きい。決して出来ないわけではないが、うまく流れない。痛みも感じる。これは訓練として良いのではないだろうか?これでうまく流れるようになればさらに流暢に魔力が操れるだろう。
最初は意識的にやっていたが、一月もすると自然に流せるようになっていた。2月目には魔力を高速で流し、最後には密度を濃くした魔力が流せるようになった。
結果として<魔力操作>はlv27に7レベルアップ、各魔法はlv17に3レベルアップした。今までの訓練が何だったのかと思えるほど簡単に上がった。続けていればもう少し上がるだろう。
ヤパンニはろくな事しないが、この訓練の時間が出来たのだけは評価していい。まあ全く関係ないという話もあるが。
5月も末に近い頃、王太子殿下が凱旋パレードをするらしい。
屋台とかも出るらしく、俺も見にいくことにした。
王都の外から入ってきて、職人街、商人街、貴族街、王宮の順に練り歩くそうだ。
俺は王太子殿下に興味はないので、屋台の買い食いが目的だ。新しい味にありつくのだ。普段は店で出せない、チャレンジ的な商品を出店で試し売りすることが多いので、屋台だと新しい出会いがある。
パーティ5人で屋台を廻る。
メアリーが屋台の串肉を食べるときに、縦に持って食べたので、袖にタレが付いてしまった。リリアが微妙な顔をしながら拭いて上げている。リリアもやりかけて、俺に拭かれてたからな。
屋台でホットドッグの様なものを見かけたので、頼んでみたら、上にマヨネーズがかかっていた。ホットドッグにマヨネーズはないだろうと思いはしたが、問題はホットドッグの味じゃない。マヨネーズが存在することそのものだ。
屋台の親父にマヨネーズにつして尋ねると、なんでも大賢者が好きだったソースらしい。野菜にあうのだが、今日はホットドッグに掛けてみたと言っていた。
大賢者、異世界人説が浮上したな。確かにマヨネーズはお酢と卵と塩でできてると聞いたことがあるので、調理法さえ知っていれば作るのは簡単だろう。俺も一度作ったことがある。だけど、キュー○ーのマヨネーズには敵わなかった。作るのに体力が必要なのもあって、二度と作ろうなどと思わなかったな。
「メアリー、リリア、ギルドに向かうぞ。多分あの依頼があるはずだ」
「今からギルドですか?こんな日に大した依頼なんてありませんよ?」
「今日じゃなくて、明日の依頼だ。おそらく今日から張り出されているはずだ」
俺たちは人ごみをかき分けながら、ギルドに向かった。
ギルドの掲示板の『Fランク』の依頼ボードを見る。あった。パレードの後の街道の掃除依頼だ。
最近、小遣い制でなくなり、Cランクの依頼報酬の分け前になったので、2人とも生活が元に戻りだしている。
ここらで一度生活の大変さを思い出してもらおう。
「え、この依頼ですか?Fランクですよ?」
「ああ、ランクは関係ない。パレードの後だから、かなりゴミも出るだろう。そして、パレードでは冒険者も飲み明かして、誰も依頼を受けない。つまり、街がゴミだらけのままになる。俺たちが受けて、それを回避しようというわけだ」
「本音は?」
「お前たち、もう少し苦労しろ。
あ、いや、社会奉仕も大切だということだ」
「ジン様、幾ら何でも今更それは。。。」
「お前たち、最近冒険に出るとき、甘物を持って行ってるな?マジックバッグがあるからと言って、なんでも持って行っていいわけじゃないぞ?甘い匂いは魔物をおびき寄せやすいんだ。人間だってそうだろう?」
「確かに持ち込んではいますが、、、そのくらいは良いのでは?」
「それが気が緩んでるというんだ。本当なら魔の森くらいでしごいてもいいと思ってるくらいだぞ?
卒業まで今のままゆるゆるとしてたら、いつまでたっても上達しないぞ?Cランクで十分だなんていつから思っていた?
Sランクの俺と同行するんだ。お前たちにもそれなりのランクになっておいてもらわないと困る。
だから、気を引き締めるためにもこの依頼を受けようと思う。もちろん俺も参加する」
「はぁ、仕方ないですね。久しぶりに汚れ仕事用の仕事着を出してきますか」
「ああ、そうしろ。明日の朝から始めるからな」
俺はアイシスさんに依頼を受ける事を伝えると、驚かれた。
「あの、本当にこの依頼を受けられるんですか?素行の悪い冒険者たちにさせようかと思っていたんですが。。。」
「ああ、気持ちを引き締めるいい機会だからな。別にこの依頼である必要あるわけじゃないが、ちょうどよかったんでな」
「そうですか、ありがとうございます。それで、場所に希望はありますでしょうか?今なら職人街、商人街、貴族街とどこでも受けれますが」
「それなら職人街にしようか。一応貴族が二人いるからな。貴族街に近いところは避けたい」
翌朝から俺たちは掃除に勤しんでいた。
二人とも、腰が痛いのか、何度も腰を伸ばしながら掃除をしていた。やっぱり鈍っていた様だ。戦闘も大事だが、基礎体力も大事だ。また走らせるか?
俺は一応毎日朝に走っている。朝食の前なので、使用人しか知らないかもしれない。
リリアは朝弱いから、朝食ギリギリに起きてくるからな。
それからすると、クレアとマリアは順調に仕事をこなしている。特に体も問題ない様だ。やはり普段から鍛えてると違うな。週末冒険者の弊害か。
なんとかその日の内に、担当エリアの清掃を完了した。なんと報酬は銀貨1枚だ。安いのか高いのかよくわからんな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます