099 <転移>の真価
王宮についた後、客間をあてがわれ、会食まで待っているように言われた。
今のうちに、自分の中の方針を固めておかないと、勝手に話が進んでしまいそうだ。
まず、陛下が持っている情報をまとめよう。
・俺が転移魔法を使える
・転移魔法は1日一回
・運べるのは一人
・魔法陣が必要。
・距離に応じて魔力が必要
ドロシーさんが知っているのは、これくらいか。
殿下はもっと知ってるけど、話してないよな?
話してるとしたら、話にならない。王女の名において秘密を守ると誓っておいて、話すようなら、結婚もクソもない。なんの約束も守られる保証がないのだから。
なので、まずは陛下がどこまで知っているかを確認する必要がある。
これで、メアリー殿下が秘密を守れる人かどうかを判断できる。
それから、具体的に俺に何をさせたく、どう言う待遇をするつもりなのかを確認する。
宮廷魔術師なると言うのは、アウトだ。
冒険者を続けていて、必要な時に仕事を依頼する、と言うのならセーフ。今と変わらないし、断れるしな。
身柄を拘束されて、クレアやマリアを人質にして言うことを聞かせるのは、破滅コースだ。王家ごと殲滅する。
他には考えておくことはあるだろうか?
ああ、そうだった。
殿下との結婚の件があったな。
殿下はどっちでも良いと言っていたので、陛下の意思に従うのだろう。
俺は殿下を美人だとは思っているが、愛しているわけではない。
結婚して縁戚になったからと言って、無条件に国に従うことはしない。
それと、リリア様の賛成があることも条件に入るな。
あとはクレアとマリアの立場か。
今は俺の奴隷でパーティメンバーだが、引き離されるようなら、バッドエンドだな。
それくらいか。
あとは流れに身を任せるしかないな。
夕方になると、会食の用意が出来たとのことで、メイドさんが呼びに来た。
夕食は広いダイニングで、20人くらい座れる大きさがある。
これでも王家専用の場所で、外から人が来た時は、もっと多きな部屋が使われるのだそうだ。
夕食には王妃様、王太子様、第1王女、第2王女、メアリー殿下の5名が、すでに座って待っていた。
「遅くなって申し訳ありません」
一応声をかけて席に着いた。
夕食は王妃様が主に話題をふり、他の皆が話に乗ると言う感じだった。王妃様の話は豊富で、さすが社交界を生きている人だと思わせられた。
俺のドラゴン討伐なども話題に上がり、皆に説明したりした。特に王太子様が反応し、興味を持たれたようだ。
皆が食べ終わると、解散となり、そのあとに、陛下に呼ばれた。
応接室にはすでに陛下がソファーに座っており、俺は慌てて膝をつき、首を垂れた。
「Sランク冒険者のジンにございます。
陛下におかれましては、、、」
「良い良い、今日はそんな堅苦しい話をするわけでもない。
楽にするが良い。
ああ、向かいに座れ。話もできん」
恐る恐るソファーに座ると、メイドさんが紅茶を淹れてくれた。
一応鑑定するが、特に問題ないようだ。
「そんなに緊張するな。ここは謁見の間ではない。私的な会談だ」
「はあ、それで、私はなぜ呼ばれたのでしょう?」
「メアリーからは何も聞いておらんのか?」
「いえ、私を囲い込みたいと言う趣旨の話は伺いましたが、なぜそう言う話になったのかがよくわかりません」
「ふむ、いくつか理由があるが、転移魔法に関してだな。
秘密を約束していたようだが、信用しすぎると痛い目に会うぞ?
あのメイドも話す気は無かったようだが、話の矛盾点を列挙して行ったら、最後には白状したぞ?
まあ、王に、秘密だからと断れるものなど少ないが。
転移魔法は今は使う者のいない伝説の魔法だ。それはわかるな?」
「はい」
「であれば、その希少性がわかるだろう。大賢者しか使えなかった魔法だ。それも人一人とはいえ、ヤパンニ王国からロービスまで4週間の距離を一瞬で移動したのだからな。
メアリーは分かっていないようだったが、大賢者と同じ魔法が使えるものを抱えている、と言うだけでも箔がつくのだ。
今はヤパンニ王国と戦争になるかもしれない、緊迫した状態だ。べスク王国の顔も潰した形になったので、余計にまずい。
しかしそこに、大賢者並みの魔法使いが現れたとなれば、迂闊に攻めて来れん。
戦争の抑止力にすらなるのだ。
大賢者と同等の能力とはそう言うことなのだよ」
なるほど、能力的に役に立つかどうかで、制限を設けたが、制限に関わらず、使えると言うだけで価値があると。
まずったな。完全に読み違えた。
もしかして、殿下との話も、大賢者の血を王家の血筋に取り込むのが目的かもしれない。
厄介なことになった。
やっぱり「正式な条約の書類」だけ持って、国境を突破するのが正しかったのだろうか。
いや、それは俺に後悔が残る。
とすると、どうするかだが、、、もう少し情報が欲しいな。
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