097 ビッチ
俺は二人に秘密を約束させてた上で伝える。
「二人には話してませんでしたが、私は<転移>魔法が使えます。
一日に運べるのは一人。重量制限もあります。さらに魔法陣がないと転移できません。
この<転移>魔法が使えるとわかったら、私がどうなるかは想像できますよね?
なので、このことは秘密です。家族にも陛下にも教えないと、改めて約束してください」
二人とも約束してくれた。
「では、今日は殿下を運びます。
下手をすると、ヤパンニ王国はすでに戦争の準備をしている可能性もありますので、早急に王都まで向かってください」
「ドゴール伯爵のところには寄りませんの?」
「<転移>の秘密を知っているのは、少ないに越したことはありません。ドゴール伯爵を疑うわけではありませんが、伯爵は国のためなら喋りそうな気がします。
なので、馬か何かを購入し、直接王都に向かってください。入るときは東門からお願いしますね」
「わかりました、ではそうしましょう。二人は馬が調達できなかったので、歩きだと伝えておきましょう」
「はい。翌日戻ってきますが、また一日待たないといけないので、5日かけて運ぶ形になります。
転移の場所を確定するために、その間は動いてもらっては困ります。
なので、洞窟など、隠れるのに適した場所を探します」
「私たちは置いていってもらっても。。。」
「それでは殿下が納得されません。何としても3人とも王都に戻っていただきます」
俺はそう告げると、まずは隠れるのに都合の良い場所を探し始めた。
半日ほど北に向かった場所に良い場所があった。
洞窟になっており、10メートルほど奥には泉が湧いていたのだ。
洞窟の中に直径2メートルほどの魔法陣を書く。内容がまだ解読されていないが、転移の魔法陣ではないかと言われている、魔法陣を選んだ。
別に魔法陣などなくてもここなら転移できると思うが。。。
「では、殿下から行きますよ?魔法陣に入って、手を握ってください」
殿下が手を握ってきた段階で、『呪文を唱えた』。<転移>の呪文なんて知らないので、英語の歌で覚えているものの歌詞を読み上げた。
<転移>
俺と殿下は無事にロービスの家に<転移>した。
一応、食料庫だ。
「では、殿下、ドゴール伯爵に見つかると、<転移>がバレてしまいますので、馬か何かを調達して移動してください。
私はこの街ではちょっと有名なので、一緒にはいけません。
それと、これを返しておきますね」
条約の書類を返す。
「では、ジン様、残りの二人をお願いします」
「了解しました」
俺は翌日まで時間を潰してから、二人の元に帰った。
二人は洞窟で大人しくしており、特に兵士にバレてはいないという。
「では、明日の朝にもう一人お連れします。
立場上、ホセさんということになりますが、よろしいですね?」
ドロシーさんに確認を取る。
「もちろんです。そうしていただかないと、私も困ります」
「では、そういうことで」
俺たちは5日かけてロービスに帰ってきた。
ロービスで馬車を買い、王都を目指す。
もちろん、俺の存在がバレないようにフードは被ったままだ。
7日ほどかけて王都に着くと、東門から中に入った。
そのまま馬車を王宮に向ける。
門のところで止められたが、ホセさんが居たので、すんなりと通してもらえた。
殿下はすでに到着しているようで、陛下との話もだいたいは終わっているようだ。
陛下からは秘薬や脱出に関して感謝され、報酬も上乗せすると約束してもらった。もうお金いらないんだけどな。
俺は外交には関わらないので、この後、戦争になるのか分からないが、戦争には参加するつもりはない。
なので、変な要請をされる前にとっとと王宮を退出した。
オーユゴック家の屋敷について、ようやく帰ってきた実感が湧いてきた。
帰ってすぐに、リリア様を尋ねると、泣きながらすがりついてきた。
なんと、殿下や俺たちは、ヤパンニの王宮に火をつけた犯人として指名手配されているらしい。もちろん、ヤパンニでは、だが。
その内容がザパンニの王宮にも届けられ、非常に心配したそうだ。
申し訳ないことをしてしまった。
「リリア様、泣かないでください。
綺麗な顔が歪んでますよ?
せっかく帰ってきたのです、笑顔を見せてください」
リリア様はしばらく泣いた後、俺の方を見て、笑ってくれた。
そして、笑顔のままで、俺に聞いてきた。
「それで、メアリー殿下と一夜を共にした感想はいかがですか?」
「はい?」
「ヤパンニ王国が、殿下は若い男を咥え込むビッチだと噂しておりますわ」
「いや、護衛についていただけで、やましい事は、、、」
「してないんですね?!」
「もちろんです!」
「わかりました。信じてますからね」
再度俺にしなだれかかりながら、信じてますと繰り返していた。
まだ疑われてるのかな?
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