092 ヤパンニ王国 (4)
3日後、ヤパンニ王国の王都に到着した。
途中、ゴブリンなどのはぐれが出たが、ヤパンニ騎士団が退治していた。
王都に入ると、どこか閑散とした雰囲気で、あまり活気がなかった。
「殿下、あまり活気がないように思いますが、こんなものなのでしょうか?」
「いいえ、小国とはいえ、王国の首都です。
もっと活気があって良いはずですが、昨年の戦争の余波が残っているのでしょう。
数だけとはいえ、我が国と同数の兵士を揃えたのですから、庶民から徴兵していたでしょうし。
それに、戦争費用として、商会からも追加徴税していたとの情報もあります」
「なるほど、商人からもお金を集めると、経済が回らなくなりますからね」
「よくご存知ですね。
これからも徴税される可能性も考えると、別の国で商売しようとするものも出てくるでしょうし、安易な徴税は自分の首を絞めるようなものですね」
「なるほど。
なら、この国は借金まみれだと思うのですが、どこか支援している国でもあるのでしょうか?」
「そうですね、南のべスク王国がある程度支援しています。
ヤパンニ王国には特殊なダンジョンがあり、その収入を担保にしているようです」
「ダンジョンですか。
あ、でも他の国にもダンジョンはあると聞きますが?」
「そうですね。
ですが、ヤパンニのダンジョンは地上型なのです。
通常は洞窟型で、階層を深く潜っていく形なのですが、地上型は地上に存在します。
地上型の上に森林型なので、希少な薬草などが採れ、主要産業になっています」
「ザパンニではそれらの薬草類は不要なのですか?」
「いえ、必要といえば必要なのですが、我が国にもダンジョンはあります。
それに、西の魔の森でも希少な薬草は取れますので、必須というわけではありません」
なるほど、別にヤパンニ王国に依存してないので、高圧的に出る作戦が有効なのか。
とっとと攻め滅ぼしてしまえば楽だと思うんだが。。。
「そういうわけにも行きません。
なんせ、旨味のない国です。攻め滅ぼして、管理しろと言われても、利点がないのです。
それくらいなら、国を残し、自分たちでなんとかして欲しいところです」
ふむ、旨味がなさすぎるのも困りようだ。
とりあえず、国に、管理者として以外の価値を感じてないのは理解した。
外交に関わるつもりはないが、それほど気を使う必要はなさそうだ。
王宮に着くと、豪華な衣装を着たオークがいた。
いや、オークじゃないんだけど、オークみたいにぶくぶく太っているのだ。
貧しいんじゃないのか、ヤパンニ王国!
「メアリー王女殿下、ようこそおいでくださいました。
私はヤパンニ王国宰相のサンガ・フォン・リッチーニと申します」
「メアリー・フォン・ザパンニです。
サンガどの、よろしくお願いします」
俺はオークがしゃべっているようにしか見えないので、笑いをこらえるのに必死だ。
兵士たちも微妙な顔をしている。
殿下はなんで平気なんだろうか。
「では、殿下、客室を用意しましたので、ご案内いたします」
俺たちは客間に通されたが、兵士たちは別らしい。
分断された形だが、これを見越して俺を配置したのだろう。
殿下とドロシーさんに大きな部屋が割り振られ、俺とホセさんは、隣の相部屋に案内された。部屋はツインだ。従者用だろうか?
完全にバカにされてるな。わざと怒らせて、難癖つけたとかで非難するつもりだろうか?もしそうだとしたらチャチな挑発だ。
リビングにはメイドが立っており、「何なりとお申し付けください」との事だ。
明らかにスパイだよね。<風魔法>で声を遮断しても唇を読まれそうだ。
「ホセさん、これからどうしますか?
殿下と今後の相談しに行きますか?」
「しかし、、、」
ホセさんはメイドの方に目線を送る。
「大丈夫ですよ」
「そうですか。なら殿下のもとに参りましょう」
殿下の部屋をノックして入る。
殿下は旅装を解いて、ラフな服装をしている。もちろんラフといっても、王族としては、だが。
ホセさんが話しかける。
「殿下、今後についての相談に参りました」
「そうですね。そこのあなた、席を外して来れませんこと?」
メイドさんにそう呼びかけるが、「どうぞお気になさらず」といって、部屋から出て行ってくれなかった。
これも怒らせる戦略なんだろうか?本気で怒らせたら、困るのはあっちだと思うのだが。
殿下は俺の方を見て頷いた。
俺は、風の障壁をはり、音を遮断する。
その上で、口元を覆いながら、「音は遮断しましたが、唇を読まれる可能性があります」と告げた。
その後、メイドのドロシーさんも込みで4人で話し合った。
全員が唇を隠して。
異様な風景だが仕方ない。
その中で、今回の待遇は単に声が拾いやすいから狭い部屋をあてがったのだろう、との事だ。
なんとも中途半端な対応だが、ヤパンニ王国ではこんなものらしい。
魔法的な盗聴も警戒して、<魔力感知>までしたのに。
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