085 武闘大会 (3)


武闘大会の日がやってきた。

武闘大会は2日にわたって行う。


初日は一般参加で国を問わずに行われる大会で、トーナメント制だ。

事前に予選を行なって、32名まで絞り込んでいる。

各国6名だが開催国だけ8名だ。

予選は力自慢などが参加する祭りのようなものだが、トーナメントに出場するような実力者は大概が冒険者か兵士になる。

騎士は参加の権利がない。


初日の一般の部を俺は特等席で観ている。

陛下の隣のブースだ。

各国の代表は専用のブースを与えられており、一般の部を楽しめる。


一般の部とはいえ、各国の代表者だ。それなりに実力がある。

普通に剣や槍を使うものが多いが、中には格闘技で戦う猛者もいる。

魔物相手にも素手で戦うのだろうか?

体術の動きとしては、結構参考になることもあった。一度模擬戦をしてもらいたいと思うくらいには興味を持った。

他にも槍でも、十字槍と呼ばれるものを使う人がいたり、双剣使いもいた。

これはこれで楽しめると思った。


優勝者はアズール帝国の剣士だった。

優勝者にはミスリルの武器と、副賞に金貨50枚が与えられる。

もらった剣を掲げて、観戦者にアピールしていた。




翌日、俺の試合の日だ。

俺の試合は4試合。リーグ戦なので、全員と戦うことになる。

勝敗が同率だった場合は、戦っている時間の合計が短い方が優勝となる。

試合の合間にポーションを使って回復するのはアリだが、試合途中には認められない。

魔法は使えるので、回復魔法の使用は可能だ。


だが、広いとはいえ、魔法戦をするような広さではないので、接近されると負けてしまうという事もあり、魔術師が代表になることは滅多にない。

代表者は基本武器を使い、魔法は牽制程度だ。<身体強化>は基本全員できると思っていい。と言うか、出来ないとSランクになれない。

そして、回復魔法は、効果が高いのは<神聖魔法>だが、神官が出場することはないので、<水魔法>か<光魔法>になる。

どちらも回復効果はそれほど高くないので、緊急時の一時しのぎ程度だろう。


俺が本気で魔法を使ったら、王都ごと消し飛ぶので、<身体強化>以外の魔法を使う予定はない。

魔法は手加減しにくいので、一撃で殺してしまう可能性もあるしね。

俺の<魔力操作>での制御では、通常の魔法レベルまでは抑えれるが、牽制程度の威力までは落とせない。

まだまだ修行が足りないね。



さて、試合の方だが、どの試合も白熱しており、俺も観ていて、参考になることが多かった。

俺が戦う際も、手加減しながら戦い、相手の攻め方や守り方などを観察して納得してから、勝負を決めた。

当然俺の勝ちだ。


俺の4連勝で優勝が決まった。

他の参戦者とも握手して終わっており、友好な関係を築けたと思う。


優勝者には魔法の武器と、金貨100枚が与えられる。

これらの賞品は開催国が用意するので、どんなものが用意できるかも国力を表している。

最近は魔法の武器が多いらしい。


俺のもらった魔法剣は、魔力を込めると<火魔法>で剣が燃え上がると言うものだ。

自分で付与できるので、魔剣で代替する必要はないのだが、魔剣の価格は金貨300枚以上するので、豪華な景品だ。

オークションに掛けたら良い値がつくだろうと、冗談で言ったら、文官に絶対にやめてくれと懇願された。優勝商品が売り払われると言うことは、優勝者にとって、価値がないと言われるのと同義で、国の信頼を損ねるらしい。

国のメンツというのは難しいね。



夜は舞踏会だ。

一般の部とSランクの部の参加者全員が参加する。

一般の部の出場者にとっては、貴族との繋がりが持てる良い機会だ。

皆、熱心に話しかけ、アピールしている。


他国から見にきた貴族なども参加しており、見ない顔も多かった。

優勝者ということで、逆に俺と繋がりを持ちたい貴族たちが群がってきた。

正直鬱陶しいので、早く帰って寝たいのだが、優勝者がいなくなれば、場がしらける。


適当に相手をしていると、陛下が会いにきた。


「優勝大義であったな。

良き戦いであった。他の試合も白熱しており、今回の武闘大会は成功と言えるだろう。

そなたは優勝者として、これから色々あるだろうが、国のために頑張ってもらいたい」


陛下、参加条件として、勧誘しないって約束しましたよね?

国のためにって、やめてほしいんですが。


だが、この場では、それは言えない。


「御意にございます。

矮小の身ではございますが、国のために尽くさせていただきます」


この文言は文官から教えてもらったものだ。

おそらく声をかけられるから、こう答えておけば、どういう話だろうと無難に終われるとの事だ。



俺は、賞金の金貨100枚以外に、今回の依頼の50枚、優勝時の追加100枚の金貨250枚を得た。

代わりに大事なものを失った気もするが、時間が解決してくれるだろう。幸い俺には時間はたっぷりあるしな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る