073 お小遣いは銀貨20枚


さて、予定が大幅に狂ってしまった。


リリア様は美人なので、結婚できるというのは嬉しい話だ。

だが、歳をとらないのは問題だ。


やはり、定住は難しいか。


まあ、おいおい考えよう。




とりあえず、リリア様にはある程度、自衛できるだけの力を身につけてもらわなければいけない。

家事や料理などもだ。

料理のできない俺がいうのかって?俺は男だから良いんだよ。


まずは、リリア様に冒険者登録を行ってもらって、簡単な依頼からこなしてもらうか。

週に1日しか時間がないとはいえ、1年半もあれば、Dランクくらいまでなら上がるだろう。

そして、戦闘訓練と。


家事や料理は学院でも習うらしい。

戦闘に関してもそうだ。

ただ、貴族の子息や子女が習う内容だ。

あまり期待できない。


とりあえず、家事と料理は、屋敷でもやってもらうことで覚えてもらおうか。

マリアを教師につければ良いか。


あとはお金の使い方か。

貴族的な使い方、服に何百万などというのは、冒険者には無理だ。

いや、お金はあるので、出来るのだが、それ位なら、最初から冒険者なんてしなければ良い。


月のお小遣いを減らそう。


粗食にも慣れてもらわないとな。

野営の時は、保存食かじるだけとかの時もあるし。


粗食は実践あるのみだな。

だけど、これはその時になってからでも遅くない。




「という事で、リリア様には家にいる間はメイド業をやってもらいます。

あと、お小遣いは月に銀貨20枚です」


「ええ!?

どういう訳ですの?

話が見えませんわ?」


「リリア様が俺と暮らすに当たって、必要な技能を考察した結果、家事や料理、お金の節約の仕方などが問題点としてあげられます。

なので、その練習です。

花嫁修行ともいえますね」


「は、花嫁修業ですか、、、頑張ります!」


なんか、『花嫁修業』に憧れでもあるのか、気合が入っているが、地道な修業だから結構辛いと思うよ?


「それと、冒険者をする練習として、冒険者登録をしてもらい、簡単な仕事から始めてもらおうと思います。

お金を稼ぐことの難しさを感じてください」


「ぼ、冒険者ですか、、、頑張ります!」


大丈夫かね?


これらのことに関しては、伯爵様にも許可を取ってある。

俺といるには必須の技能だからだ。




次の日から、学院から帰ったら、メイド服を着て、掃除や紅茶淹れ、料理などを教えられていた。




そして、最初の学院の休日、俺はリリア様を伴って、冒険者ギルドにきていた。

当然歩きだ。

リリア様には、汚れても良い、動きやすい服を着るように伝えてある。

、、、普段着できている、簡素なドレスだった。。。

まあ、依頼を受けたら自分で気付くだろう。


「リリア様、今日は冒険者登録と、Fランクの一般的な仕事を一つ受けていただきます。

Fランクの仕事は子供でも出来る作業ですが、労力の割に実入りの少ない仕事です。

ですが、それで体力が養われたり、仕事の受け方を勉強したりするのです」


「昨日も聞きましたわ。

子供でも出来る作業くらい、軽くこなしてみせますわ!」


俺たちはギルドに入り、まず受付に行く。

アイリスさんとは別の受付嬢の列に並ぶ。

アイリスさんは俺の担当受付嬢なので、変に気を回して、優遇されても困るからだ。


ギルドカードができた。

アイリスさんが横目でチラチラと見てきていたが、無視だ。


Fランクの掲示板を見る。

やはり、割のいい仕事はすでに剥がされている。


「リリア様、Fランクはこの棚です。

好きな仕事を選んでください」


どぶ掃除とか、商会の荷物の積み下ろしなどの、人気のないのしか残ってない。

まあ、それがわかっててこの時間に来たんだが。


「うーん、どれも簡単そうに見えるのですが、どれが良いんでしょうか?」


「そうですね、正直どれでも良いのですが、Fランクの仕事は汚れ仕事だったり、力仕事だったりしますので、結構辛いです。

出来れば、もっと早く来て、張り出されたばかりの依頼から選ぶのが良いです。

条件の良いのもありますしね。

Fランクの報酬は一日で大銅貨3枚から5枚程度です」


「そんなに少ないんですの?」


「ええ、依頼書をよく見てください、報酬も書いてあるはずです。


依頼を決めるには、達成条件、報酬、拘束期間の3つに注意してください。

これらがはっきり書かれていないものは、受付で確認して、曖昧なものなら受けないでください」


「リリア様は確か、<身体強化>は使えませんでしたよね?」


「ええ、今度授業で習う予定ですわ」


「では、力仕事は無理ですので、汚れ仕事で行きましょう」


「今あるので言うと、貴族街の清掃、と商人街のどぶ掃除くらいでしょうか」


「貴族街はちょっと、、、人の目もありますし、、、どぶ掃除でお願いしますわ」


「ではその依頼表を剥がして、受付に持って行ってください。依頼の受付処理です」



リリア様は現場に着いたが、側溝の泥を掻き出すのだ。当然、側溝に入らなければいけない。

すると、当然ドレスが汚れるのだ。


「あの、ドレスが汚れそうなんですけど」


「そうですね、汚れるでしょうね。

俺は言いましたよ?汚れても良い、動きやすい服装で来て欲しいと」


「そうですが、これは。。。」


「それとも、今から戻って、依頼失敗の報告をしますか?」


「それは嫌ですわ!初めての仕事ですのに」


「じゃぁ、頑張ってください。俺は見てますので」



リリア様は頑張ったと思う。

しかし、できたのは依頼の半分だけだ。しかもドレスも泥だらけ。

顔にも泥がついている。


「半分も終わりませんでしたわ」


「期限はいつになっていましたか?」


「明日ですわ」


「なら仕方がないですね。俺がやっておきます。

リリア様は、明日、『汚れても良い服』を買いに行ってください。

どう言うものが必要かはわかりますね?

冒険者が丈夫で洗いやすいものを選ぶにも理由があるんですよ」


「わかりましたわ」


リリア様が落ち込んでいるが、こう言うことはよくあるのだ。

ギルドに寄って、アイリスさんの所に行く。


「依頼の引き継ぎをお願いします」


「あれ?どぶ掃除ですか?

あぁ、そちらのお嬢様の分ですね。

期限は明日ですので、明日でも構いませんよ?」


「いえ、学院の学生ですので、明日は無理なんです」


「なるほど、わかりました。ジンさんが引き継ぐと言うことで、承ります」


「よろしくお願いします」




「ジン様、申し訳ありません、ご迷惑をおかけして」


「気にすることはありません。最初のうちは誰でもあることです。

それに、学院さえなければ、明日には完了できるだけは進めたでしょう?

なら、今はそれで良しとしましょう」




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