067 閑話 お土産 (3)


10日経った。

乗合馬車を降りて、王都の伯爵邸に向かう。職人街から商人街の入り、そのまま貴族街に入る。

貴族街の入り口では、ギルドカードを提示して、護衛依頼だと告げて入った。

Sランクは信用度が違うね。


伯爵邸では、門番に挨拶して入り、自分の部屋に入る。

すぐにルナが来たので、お風呂の用意をしてもらう。

1週間も風呂に入ってないのだ。疲れを取るためにもゆっくりと入りたいものだ。


「申し訳ありません、お湯を張るのに、少し時間をいただきます。

なにぶん、ジン様がいらっしゃらない間は、男湯にお湯を入れてませんでしたので」


「構わないよ。

それよりも、クレアはどうしている?

見回りか?」


「今の時間ですと、訓練しているのではないでしょうか。

お呼びしますか?」


「いや、折角だから、訓練を見せてもらおう」



俺は裏庭に向かった。


裏庭では数人が模擬戦をしていた。

ちょうどクレアがやっている。大剣をうまく操り、兵士の剣をさばいていく。

そして、隙ができたところで、剣をクビに当てて終了だ。

クレアも強くなっているようだ。特に剣を捌くのがうまくなっているようだった。


「あ、ご主人様、おかえりなさい」


「ああ、ただいま。ずいぶん強くなったようだな」


「いえ、まだまだです。

ライノス隊長には全く勝てません」


「まあ、あの人はBランク程度はありそうだしな」


俺はクレアを<鑑定>した。

<大剣術>のレベルが4に上がっていた。

相当頑張ったのだろう。


「マリアの腕前はどうだ?」


「はい、毎日訓練しているわけではないので、はっきりはしませんが、現状維持だと思います」


「そうか、マリアが学院から帰ってきたら、俺のところに一緒にこい」


「承知しました」



夕方になって、マリアが帰ってきたらしくクレアと一緒に部屋に来た。


「今日戻ってきた。ただいま」


「おかえりなさいませ。

依頼は順調に終えられたようですね。

ゴブリンキングはAランクの魔物だと聞きますが、ご主人様の敵ではありませんね」


マリアは俺のことをなんだと思っているんだろうか。


俺は主題のお土産を二人に渡した。


「お土産だ。普段使いで使って欲しい」


「わぁ、カチューシャですわ。

ありがとうございます!

大切にしますね」


「私はベルトだな。

目が細かいので、サイズ調整に困らなさそうだ」


二人とも満足してくれたようだ。


「今日はそれだけだ。

あ、マリア、リリア様は部屋か?」


「はい、お茶されているかと思います」


「そうか、リリア様のところにいくぞ」


そういって、リリア様の部屋の前に行く。

、、、女性の部屋に訪問なんて初めてじゃないだろうか。

ちょっとドキドキだ。


マリアがノックして、入室の許可が出ると、俺たちは中に入った。


「あら、ジン様おかえりなさいませ。

ロービスはいかがでしたか?

ゴブリンキングを討伐しに行かれたんですよね?」


「はい、ゴブリンキングは問題なく討伐しました。

あとは騎士団の仕事だということで、俺はお役御免です」


「そうですか、怪我がなくて何よりです」


「で、リリア様にはお約束のお土産です。

こちらになります」


俺は小ぶりな木箱を渡す。


「まあ、ありがとうございます。

開けてもよろしいですか?」


「もちろんです。

ロービスでは有名なデザイナーの作品だそうです」


リリア様は慎重に箱を開けると、中に入っているネックレスとイヤリンを見て歓声をあげた。


「まあ、素晴らしいですわ!

見事な銀細工ですわね。つけてみてもよろしいかしら?」


「もちろんです、どうぞ」


リリア様付きのメイドさんが着けるのを手伝う。

リリア様は手鏡をもち、確認する。


「ぜひ、普段使いでお使いください」


「あら、普段使いなんて勿体無いですわ。

今度パーティにつけていこうかしら」


「いえ、わざわざ普段使いできるものを選んだので、普段使いしていただいた方が嬉しいです。

こうして、アクセサリーをつけたリリア様も綺麗ですからね」


「ありがとうございます。

なら普段使いさせていただきますわ」

(、、、えへへ、綺麗だって。。。しかも、ジン様からの初めてのプレゼントですわ、、、大切にしないと。。。)




「あら、マリア、そのカチューシャはどうしたんですの?

普段つけてませんよね?」


「はい、ご主人様にいただきました。

メイド服にカチューシャはつきものだと」


「確かにセットでつけてますわね。

仕事に髪が長いと邪魔になるのだとか」


「はい、私の髪はそれほど長くないので、買っていませんでしたが、今回お土産としていただきました」


マリアが嬉しそうに言う。


「良かったですわね。

髪は伸ばすんですの?」

「そうですね、折角カチューシャを買っていただいたので、合わせて長くしてみるのもいいかもしれません」

。。。。。。


話がガールズトークになりそうだったので、俺は早々に退散した。

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