064 暗殺?


俺はすぐに西門から出て、街道を外れた。

ステータス全開で森まで1時間。


さらに森の上を疾走し、前回ゴブリンキングを倒した場所に着いた。

ゴブリンジェネラルが4体いる。

3体ではなかったようだ。


今回も3体だけ倒して終わりにしようかとも考えたが、今回は伯爵様から直接の依頼だ。報酬も妥当。

なら、ついでに倒すくらいは構わない。


ジェネラルは会議でもしているのか、車座になって座っている。

ちょうどいい、俺は4体の中央に降り、腰を低くして、剣を360度振り切った。


すると、4体とも首から上が飛び、あっさりと倒れた。

周りを見回すが、事態に気づいているものがいないので、ジェネラルの死体を収納してから、改めて360度剣を振った。<飛剣>だ。

周囲にいた、ゴブリンエリートなどが倒れるが、確認もせずに、空に飛び上がった。


とりあえず、依頼された仕事は完遂したと言うことでいいだろう。


森の『奥』の方で、休憩する。

浅い場所はゴブリンでいっぱいなのだ。

今はゴブリンの勢力が強いので、他の魔物は少ないはずだ。

実際<魔力感知>にはゴブリンくらいしか反応がない。


そこで俺は串にくを食べながら、これからどうするか考えていた。

すぐに戻ったら、移動方法を怪しまれるし、遅いと騎士団に被害が出る可能性がある。


森までは馬車で半日だから、歩きで1日。走ったとしても5時間はかかる。

俺が門を出てから2時間くらいしか経っていない。

往復で10時間と森で数時間と考えると、今日の夜、閉門ギリギリに帰るのが良いように思う。


いや、帰りは騎士団の馬を貸してもらおうか。

それなら騎士団に報告もいれれるし、早く帰った理由づけにもなる。


俺は<魔力感知>しながら、ウトウトとして過ごした。


午後もいい時間になってから、森から歩いて出て、騎士団の方に近づく。


「ゴブリンジェネラル討伐の依頼を受けた冒険者だ。

隊長にお会いしたい」


さすがは現場の指揮者、すぐに来てくれた。

ジェネラルの死体を4体取り出し、確認してもらった。


「前回ゴブリンキングを倒した後に残っていたジェネラルです。

追加で依頼を受けたので、今回討伐した次第です」


「うむ、確認した。ご苦労だった」


「それで、早く伯爵様に報告したいのですが、馬を貸していただけたらと思ったのですが」


「なるほど。ならば、今の報告を早馬で走らせるから、一緒に行くといい」


「ありがとうございます。助かります」


金庫番のハーゲンのせいで、伯爵領の評価が下がっていたのだが、現場はしっかりしているようだ。

冒険者と言って、下に見ることもしないし、報告の鮮度の大切さも知っている。

ハーゲンも見習ってほしいものだ。



俺は早馬と並走するように馬を走らせ、ロービスに着いた。

閉門時間は過ぎていたが、騎士が緊急の伝令だと言って、通った。

あ、俺も一緒に通りましたよ?


騎士さんと一緒に伯爵邸に着き、すぐに伯爵の執務室に通された。


「報告します。こちらの冒険者殿がゴブリンジェネラル4体を討伐したのを確認しました!」


「もう討伐したのか。

仕事が早いな。

ジン殿、無理はしてないだろうね?」


「大丈夫です。多少の無理は依頼内です」


「そうか、そう言ってくれると助かる。

それで4体いたのか?」


「はい。3体だと思っていましたが、4体集まっていましたので、ついでに討伐してきました。

死体はギルドで良いですか?」


「ああ、完了報告もギルドでしてくれ。

昼のうちに話は通してある」


「ありがとうございます。


あ、それで、ハーゲン殿はどうなりましたか?」


「ん?あやつは厳重注意だな。

あやつは帳簿をいじらせれば優秀なんだが、紙の上でしか見てないのと、平民を見下しているのが欠点でな。

それでもやめさせる訳にもいかん。

お主は何か、処罰的なものを期待しておったのだろうが、現状、これ以上の罰は与えられん」


「いえ、どうなったのか聞きたかっただけですので。

では、失礼します」


俺はギルドに寄って、完了報告と報酬をもらうと、木漏れ日亭でゆっくり休んだ。



その日の夜、何者かが、俺の部屋に忍び込んできた。

<魔力感知>でバレバレなのだが、何をしに来たのか興味があったので、そのままさせていたら、布団をはいで、剣を突き刺してきた。

どうやら、暗殺者だったらしい。


体をひねって避けると、剣はベッドに刺さってしまったらしく、抜けないようで、懐からナイフを取り出して構えた。

俺は何もないかのように、前に出て、暗殺者のナイフをつまむ。

暗殺者は必死にナイフを動かそうとするが、俺のステータスでつかんだものを動かせるわけがない。

俺は暗殺者の首を絞め上げ、気絶させた。


前にリリア様が誘拐されそうになった時の犯人が毒で自殺したというのを思い出して、猿轡をかまして、体をぐるぐるに縛っておいた。俺にはSM趣味はないので、縛り方なんぞ分からん。


俺は気絶した暗殺者を抱えて、伯爵邸に向かった。

俺では尋問するすべがないからだ。


門番ともめはしたが、なんとか伯爵様に取り次いでもらった。


「どうしたのだ?

ギルドで何か問題でもあったのか?」


「いえ、先ほど暗殺者と思しきものに襲われまして」


床に転がしている男を蹴飛ばす。


「私では尋問もできないので、伯爵様にお願いしようかと思ってきた次第です」


「なるほど。

しかし、タイミングが良すぎるな。

誰かに恨まれる覚えは?」


「どこかのハゲしか思いつきませんね」


「そうか、尋問は任せてもらえるのだな?」


「ええ、うまくいけば、以前リリア様を誘拐した犯人も炙り出せるかと」


「わかった。あとはこちらでやろう。

ご苦労だった」


「はい。では、失礼します」


俺は、ようやくゆっくりと休めた。


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