063 ハーゲン
翌朝、早朝に騎士が訪ねてきた。
騎士隊長のライノスさんだ。
リリア様を助けた時に兵士を率いていた人だ。
「すまないが、伯爵様に会ってくれないか。
昨日のゴブリンキング討伐の件でな。
金庫番のハーゲン殿が伯爵に有る事無い事言っていてな。
本人の話を直接聞きたいとのことだ」
「朝飯食ってからでいいですか?」
「すまんが、今後の軍の動きに関係するから、早くしてくれると助かる」
「わかりました。すぐ用意しましょう」
「すまん、助かる」
俺は特に準備するものもないが、剣と鎧だけ装備して下の食堂に降りた。
ライノスさんが待っていて、表に馬車を待たせていると言う。
用意のいいことだ。
馬車に乗って、伯爵邸に着くと、すぐに応接室に通された。
「わざわざ来てもらって、すまんな。
やはり、君だったか。ジン殿。
いつの間にかSランクか、改めて、おめでとうと言わせてもらうよ」
「いえ、たまたまですので」
「それで、今回のことだが、ハーゲン、まずは説明しろ」
そばに控えていたハゲ、いや、ハーゲンが説明を始める。
「まず、今回の件に関して、ゴブリンキングおよびゴブリンジェネラルがいる事が確認されましたので、ギルドに討伐を依頼しました。
しかし、この街にAランク冒険者がいないとの事で、王都に依頼が回されました。
そして来たのが、その小僧です。
3日ほどして、ゴブリンキングとジェネラル2体の死体を持ち込み、依頼は完了だと言ったのです。
騎士団に確認しましたが、その間に小僧が包囲網を抜けたと言う報告はありませんでした。
さらに、ゴブリンの数も減っておらず、陣形も乱れておらず、ゴブリンジェネラルが確認された事から、別の場所のゴブリンキングとジェネラルだと判断しました。
それを言いに行ったら、完了処理は終了しているの一点張りで、話にならんと、帰ってしまいました。
私からは以上です」
「ふむ、ジン殿からは何かあるかな」
「はい。
まず、最初にはっきりしておきたいのは、依頼内容です。
依頼は、
ゴブリンキングとゴブリンジェネラル2体の討伐。報酬は金貨50枚。期間は1ヶ月以内。
と言うものです。
まず、この時点で、本来の依頼の半分以下の金額設定です。
さらに、王都に依頼を引き継がせて、俺に受けさせるように仕向けた形跡があります。
王都のギルドマスターも断言はしませんでしたが、俺が来ることを見越していた可能性があると認めています。
つまり、俺なら、お嬢様の護衛でもあるから、繋がりもあるし、安くても受けてくれるだろう、と言う考えが透けて見えます。
また、ゴブリンキングとゴブリンジェネラルの死体に関してですが、腐らずに持ってこれる範囲に、他にゴブリンキングがいたのでしょうか?
さらに言えば、今回の報酬から、ゴブリンと正面から戦うのは割りに合わないので、森を大きく迂回して、ゴブリンの後方から忍び寄り、ゴブリンキングとジェネラルを討伐してきました。
なので、ゴブリンの前線が乱れてなくても不思議はありません。
また、討伐した時に、他に少なくとも3体のゴブリンジェネラルを確認しています。
なので、騎士団から目撃の報告があっても当然かと思います。
さらに言えば、昨日、ハーゲン殿が、正面からゴブリンをバッタバッタと倒して、ゴブリンキングを倒すのが当然で、それも依頼に含まれているような発言をされました。
これは依頼外です。正面からゴブリンの大群に向かうなど、白金貨を積まれてもゴメンです。
以上が私からの報告になります」
「ハーゲン、お前の報告とかなり違うようだが、どう言うことだ?」
「御館様!
私よりもこんな小僧の事を信用されるのですか?!
こやつは平民ですぞ!伯爵家が使ってやると言っているのだから、素直に行けば良いのです」
「ハーゲン、それでは話にならん。
それを望むなら、最初から正面突破でゴブリンキングを討伐せよ、と言う依頼にすべきだ。
それと、ゴブリンキングとジェネラル2体で金貨50枚とはどう言う事だ?
相場だと100枚以上はするはずだが?」
「そ、それは当家の金庫番として、無駄な出費を避けるために。。。」
「お前は、騎士団の損害を高々金貨50枚程度で購えると思っているのか?
ゴブリンキングがいたら、騎士団でも支えられずに、街を蹂躙されていたのかもしれないのだぞ?」
「それは、その。。。」
「もう良い、これは当家の落ち度だ。
ジン殿、不愉快な思いをさせてすまなかったな。
差分の金額はギルド経由で払わせよう」
「いえ、差分は結構です。
金額を聞いた上で受けた仕事ですので。
それよりも、残りのジェネラル3体はどうされるので?
もちろん、3体だけとは限りませんが」
「うむ、それに関しては、改めてギルドに依頼しよう。
ジン殿受けてもらえるか?」
「達成条件と報酬は?」
「ゴブリンジェネラル3体の討伐、報酬は金貨100枚だ。どうだ?」
「受けましょう。
ただ、今回も後ろから行きますので、ゴブリンエリート以下は残ることになります」
「その辺は騎士団でなんとかしよう」
「了解です。
では、これから出かけますので、失礼します」
俺はハーゲンが何か言いたそうにしてたので、何か言う前に部屋を去った。
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