061 ゴブリンキング
翌朝、俺は乗合馬車に乗っていた。クレアとマリアはゴブリンキングを相手にできないので、お留守番だ。
剣や鎧をつけず、一般人を装っていた。
乗合馬車にはDランク冒険者4人が、護衛として付くようだ。
王都とオーユゴック領の間はそれほど強い魔物は出ないので、Dランクでも十分だ。
「なるほど、お孫さんに会いに行かれるんですね。
元気に育っていると良いですね」
「そうなんだよねぇ。
手紙では元気だと書いてあったけど、やっぱり直接目で見たいからね。
初孫なんだよ。まだ一度も会ったことがなくてね。
ようやく旅費が溜まったんで、会いに行く途中さ」
「なるほど、初孫ですか。
それは楽しみでしょうね」
「あんたは冒険者にも見えないけど、旅行かい?」
「まぁ、似たようなものですが、知り合いに手が足りないから手伝ってくれと言われまして。
俺で役に立つかわかりませんが、少しでも手助けできればと思って」
「えらいねぇ。
どんな仕事だい?」
「害虫の駆除らしいんですが、範囲が広くて手が足りないそうです。
ただ、西の森の方なので、街に被害がないのが救いですね」
「西の森っていやぁ、あれだろ、魔の森とか言って、危険なところなんだろう?
気をつけるんだよ?ゴブリンにでも襲われたら助からないからね」
「はい、ありがとうございます。気をつけます」
俺たちは和気藹々と喋りながら道を進んでいった。
おばちゃんのコミュ力は高い。圧倒的な喋りで退屈に感じなかった。
冒険者たちは恨めしそうに見ていたが、仕事だ、頑張れ。
実は今回のゴブリンキング退治に行くことをリリア様に話したら、「私も行きますわ!」と言い出して、なだめるのに苦労した。
「私を置いていくなんて、ひどいですわ。
私もお父様に会いたいですのに」
(、、、ジン様との旅は楽しそうですのに。。。二人きりでとか。。。きゃっ。。。)
「いや、遊びに行くわけないですよ?」
「むぅ。。。」
リリア様のふくれっ面も可愛いが、俺が間に合わなかった場合、領都に被害が出ている可能性がある。
そんな所に、観光気分のリリア様を連れていくわけには行かない。
結局、お土産を買ってくることで納得してもらった。
俺は今、森の上を走っている。
いや、比喩じゃない。実際に走っている。
無魔法で一瞬だけ足場を作り、その上を走っているのだ。
適切なタイミングで正確な位置に最適な魔力量の足場を作るのだ。
それも一歩一歩ごとに。
何度も失敗を重ねてものにした魔法だ。
最初は魔力が大きすぎて、爆発した。
<魔力操作>に慣れてくると、正確な位置を心がけて、一歩ずつ歩いた。
そのあとにようやく、走れるようになった。
俺の全力の走りに対応できるようになるまで、つい最近までかかった。
俺は、オーユゴック領都ロービスに到着すると、ギルドに寄って、キャシーさんに依頼を受けたことを伝える。
「ありがとうございます。
Aランク冒険者がいなくて、どうしようもなかったんです」
「えぇ、これからすぐに討伐に向かいますが、問題ありますか?」
「いえ、問題ありません。
むしろ、早くお願いします」
「了解です」
俺は了解を取ったので、すぐに西の門から出て、街道の脇に外れた。
高速移動するためだ。
街道から数百メートル離れた場所を全力で走る。
森まで、1時間で到着した。
そして、<魔力感知>すると、大量に魔物が引っかかる。
おそらく全部ゴブリンだろう。
今回は普通のゴブリンには用がない、というか、わざと倒さないので、無視だ。
俺は、最近覚えた、空中歩法で森の上を行く事にする。
実は風魔法でも空は飛べるのだが、風などの影響が大きく、あまり実用的じゃないのだ。
もちろん、同じく<風魔法>で障壁を張ったら問題ないのだが、調整がうまく行かない。
もっと<魔力制御>が上手くなればできるのかもしれないが。
そんなわけで、上空から見ると、ゴブリンの後ろと思われる部分にゴブリンキングらしき魔力を感知した。
周りにもたくさんの魔物が感じられるが、強いのが1体と次くらいのが5体だ。
どうも、ゴブリンジェネラルは5体いるらしい。
まあ、今回は2体しか用がない。
上空から、ゴブリンキングの後ろに着地し、即座に首を落とす。
他のに気づかれる前に、<インベントリ> に収納。
ゴブリンジェネラルは気づいて、振り向きかけた時に2体の首を跳ね飛ばす。
すぐに収納だ。
残りのゴブリンジェネラルが剣を抜くが、俺にはこれ以上、用はない。
階段の様に配置した無魔法のブロックをけって、上空に逃れる。
そのまま森の上をお散歩だ。
実働1時間というところか。
日が暮れ始めているが、一気に走って、ロービスに戻る。
閉門間際に滑り込んだ。
俺はギルドに報告、ではなく、宿屋にいた。
今報告したら、朝受けた依頼をどうやってこなしたか、聞かれるに決まっている。
数日、宿屋でゆっくりしてから報告するつもりだ。
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