060 ゴブリン湧き湧き
数日して、冒険者ギルドに向かうと、建物に入った途端に、皆の目線が集まった。
「お、おい。あれって、こないだの」
「黒目黒髪、噂のドラゴンスレイヤーだ」
「おい、お前ちょっといって、声かけてこいよ」
「嫌だよ、お前行けよ」
「あんな細身でドラゴンを倒したなんて。。。」
色々と言われているようだ。
まあ、悪い気はしない。
目立つのは好きではないが、<インベントリ>を含む、各スキルが知られるのが不味いだけで。
リリア様は<時空魔法>も重宝されるという話だが、別に他にいないわけでもない。
ただ、魔法大全の本を読んでいて気がついたが、普通は<空間魔法>といい、<時間魔法>とは別に考えられている。
これは、空間を広げる技術よりも、時間を止める技術の方が難しいためだと思っているが、<時間魔法>が限られた人にしか使えないのは事実だ。
そこで、俺の無属性の隠蔽情報を<時空魔法>から<空間魔法>に書き換えてある。
もちろん、身体lvなども、ドラゴンスレイヤーとして、おかしくないレベルにしてある。
俺はアイリスさんの列に並び、順番が来るのを待つ。
「ジンさん、いらっしゃい。
今日は、依頼を受けていただけるのですか?」
「ええ、面白そうなのがあればですが」
「それでは、別室でお話ししましょう」
といって、受付を離れる。
後ろに並んでいた冒険者たちが、騒ぐが、アイリスさんは動じない。
俺は居心地が悪いんだが。。。
別室で、アイリスさんから、今受けれる、良さげな案件を聞いていく。
「そうですね、今ある中で高レベルの案件としては、オーユゴック領西の森(魔の森)で、ゴブリンキングの討伐、位でしょうか。
そう言えば、ジンさんはオーユゴック領出身でしたね。
里帰りがてら、ゴブリンキングを倒してくるというのはいかがでしょうか?」
いや、ゴブリンキングは普通に強い魔物だからね。
しかも、ゴブリンキングがいるという事は、ゴブリンジェネラル、ゴブリンエリート、ゴブリンマジシャン、通常のゴブリンなど、とにかく数が多いことが考えられる。
「西の森にそんなにゴブリンが沸いているのですか?
伯爵様は定期的に間引いてると聞いていますが」
「ええ、外周はそうなんですが、奥の方になると、ゴブリンキングレベルの魔物がうじゃうじゃいますので、放置されています。
通常は奥地から出てこないのですが、なぜか出てきたようでして。
ゴブリンエリートあたりまでなら、騎士団と冒険者でなんとかなるのですが、ゴブリンキングとなりますと、Aランクパーティの出番です。
現在、オーユゴック領にはAランク冒険者がおりませんので、王都に依頼が来た訳です」
「今から行っても間に合うとは思えないんですが」
「それに関しては、どうしようもないので、騎士団と冒険者で、キングやジェネラルを避ける形で、通常のゴブリンを間引く事で、時間稼ぎをしているようです。
ゴブリンの最大の脅威は数ですからね」
「なるほど。
それで、達成条件と報酬は?」
「達成条件はゴブリンキングとジェネラル2体の討伐となります。
報酬は金貨50枚。期間は一月以内となります」
「エリート以下は良いんですか?」
「はい、そちらは騎士団と冒険者で対応しますので」
「ふむ、キングとジェネラルで50か。安くありませんか?」
「はい、通常ですと、キングだけで100枚くらいですので、半分以下の計算になります。
ですが、伯爵様も他の冒険者を雇っていることもあり、この金額でお願いしたいとの事です」
「なんか、俺をピンポイントで指定しているように見えるのですが」
「そういう面もあるかもしれません。
ジンさんがドラゴンスレイヤーだという情報は掴んでいるでしょうし。
伯爵様とは懇意にされているのですよね?
そういった、情に訴える部分もあるかと思います」
「気に入らないな。
最初から助けてくれといってくれれば、タダでもやってよかったんだが、そういう小狡いやり方は気に入らない。
いっその事、受けないとか。
いや、それはリリア様に不義理になるな。
キングとジェネラルだけ倒して、他はまるまる残すか?
今の話だと、ジェネラルが2体だけの可能性も低いし、それも残すって事で。
うん、それで行こう」
「ジンさん、心の声が全部ダダ漏れですよ?」
「む、失礼。でも、正直な心情ですね。
ゴブリンキングとジェネラルを2体だけ狩って、残りは放置します。
ジェネラルが他にもいたら、別案件として受ける、という事にしましょう」
「わかりました。
では、依頼は受注という事で良いですね?」
「ええ。それと、オーユゴックまでの馬車を手配してください。
乗合馬車でも、商人の護衛でも、馬車に乗れれば構わいません」
「了解しました」
「明日以降なら、いつでも出発できますので、手配ができたら教えてください」
「はい。では、よろしくお願いします」
その日の晩に、明日の早朝出発の乗合馬車に空きがあると連絡を受けたので、それで行く事にした。
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