058 ハーブティーあるかな?


数日後、リリア様から不思議な顔をして聞かれた。


「ジン様、先日何かされました?

王宮の方で、ジン様の名前が話題になっているようですが。

メアリー殿下が言うには、ドラゴンを単独討伐したとか。

そんな危ないことしてませんよね?」


いつだったかに同じような事を聞かれたような気がする。

ワンバーンの時だったかな。


「ええ、ドラゴンなら倒しましたよ?

今度、ドラゴンステーキなんていかがですか?」


「じょ、冗談ですよね?

ドラゴンですよ?

ドラゴンって、空を飛んで、ガーってブレス吐いてくる、ものすごい魔物ですよ?」


「ええ、その魔物ですね。

ちなみにこれが逆鱗ですね」


俺は<インベントリ>から逆鱗を出してみせる。


リリア様がふらついて倒れそうになるので、支えてあげる。

しかし、体に力が入らないらしく、俺にしなだれかかってくる。

俺はしっかり抱きしめて支えたが、どことは無しに当たってるので、役得である。


俺はリリア様をソファーに横たえ、ルナを呼んだ。


「ルナ、リリア様が倒れた。

おそらく精神的なものだから、寝てれば起きると思うが、俺が付いているのもまずいから、お前が付いていてくれ」


「了解しました。

あ、なんでしたら2時間ほど、気づかなかったことにしても。。。」


「ルナ!」


「はい!申し訳ありません。ちゃんと看病します」


冗談はほどほどにして欲しい。

リリア様は貴族なのだ。

男と二人で寝込んでたとか噂が流れると、それだけで評価が下がる。実際に何もなかったとしてもだ。




クレアとマリアにはドラゴン討伐はその日のうちに伝えてある。

仲間なので、情報の共有は必須だ。

二人の反応は、俺なら当然だとばかりに、うんうん頷いていた。


しかし、リリア様には自然と知るまで、放っておこうということになった。

特に報告する義務もないし、知った時の反応も楽しそうだったからな。


まあ、さっき知って、気を失っているのだが。


「マリア、すまんがリリア様の看病を手伝ってやってくれ。

ルナだけでは手が足りないだろう」




リリア様が起きたのは3時間後だった。

今日は学院は諦めて、休みにするらしい。


「ジン様、少しお話があります」


リリア様が怖い顔をして話しかけてきた。


「あ、俺は今からトレーニングに。。。「いいですね!」。。。はい」


どうやら離してはくれないようだ。


「ジン様、以前ワイバーンの時にもう危ないことはしないで欲しいと言いましたよね?

どうなったらドラゴンを倒すという話になるのですか?!」


「いや、俺は了承してませんし。

それに危険は冒険者をしていれば当然のことですし」


「それにしても、ドラゴンはやりすぎです!!

逆鱗に触れたら、一国が滅ぶと言われていますのよ?」


「逆鱗、触りますか?」


<インベントリ>から逆鱗を出してみせる。


「ジン様!

そういう問題ではありません!

そもそもジン様は自分の重要性を理解されていません。

旅の途中で見た風の魔法だけでも凄まじいのに、<時空魔法>まで使える。しかも魔力も豊富ときたら、国がほっておきませんよ?

メアリー殿下には<時空魔法>の事は話してませんので、大丈夫だとは思いますが、情報には気をつけてくださいまし」


「あー、俺竜のしたい持ってくる時に、<アイテムボックス>見せちゃいました」


てへっ。


「ジン様!

国に目をつけられるという事がどういう事か、わかってますの?

下手をすれば、研究所の地下に放り込まれて、一生出れない可能性もあるのですよ?」


「それは嫌ですね」


それは、ごめんこうむりたい。

それに、俺はリリア様の2年間の護衛が終わったら、旅をするんだ。

ドラゴンも倒せる事が分かったし、正面からの敵ならおそらく誰が相手でも勝てるだろう。

お金も十分にある。

なら旅に出るしかない!


「いざとなったら国を出て行けば。。。」


「ジン様!

それが許されると思ってますの?

それに、国の知るところとなったら、近隣の国も近いうちに知ることになるでしょう。

そうなったら、もうどこにも行くところはありませんよ?」


どうやら、この世界の情報管理はザルらしい。

まあ、国家機密とかじゃないから仕方ないのかもね。


「それに、俺はこの護衛仕事が終わったら、旅に出るつもりですし。。。」


「え、、、」


リリア様は、がーんといった顔になった。

ちょっと可愛い。


「ど、どこに行かれるんですの?

オーユゴック領内でしたら、ご案内できますわ!

どこでも言ってみてくださいまし」


「いや、世界を見て回りたいなと。

ドラゴン倒せる戦闘力があれば、旅に不安はないし。

今回のドラゴン討伐は、そう行った意味で、試金石になりました」


「え、世界中、、、、私の事は放っておきますの???」


「え、リリア様は学院を卒業されたら、オーユゴック領に戻られるんですよね?

俺はそこまで護衛してから、旅に出るつもりですが」


「いえ、そういう事ではありませんわ!

(、、、女としてみられてないのかしら、、、)」


「では、何か問題でも?」


「、、、いいえ、なんでもありませんわ。。。」


リリア様も気分が高ぶっているようだ。

ハーブティーってこの世界にもあるのかな?

あったら少し分けてもらおう。

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