057 オークション


「はあ?倒したー?!」


俺は翌日の昼前にギルドに報告に来ていた。

応接室で報告をした後の、アイリスさんの第一声だ。


「はい、倒しましたよ。風竜でしたね」


「いったいどうなったら、竜を倒すんですか?

見つかったら逃げてくださいって言いましたよね?

無理しないでくださいって、言いましたよね?」


「えぇ、まぁ。

ただ、見つかってしまい、逃げれそうになかったので。

仕方なく、全力で魔法を放ったら倒せてしまいました」


「はあ、まあ倒してしまったのは仕方がありません。

死体を取りに行く部隊を編成しましょう。

竜を一頭なら荷馬車数台必要でしょうし」


「いえ、死体も持って帰ってきました」


「はい?あんな大きなものどうやって持って帰ってきたんですか?!」


「俺のアイテムボックスですね。人より魔力が多いらしく、結構入るんですよ」


「ふう、驚くのに疲れました。

とりあえず、ギルドマスター呼んできますね」


少しするとゴルドさんが部屋に入ってきた。


「やあ、昨日ぶりだね。

竜を倒してきちゃったんだって?

確かに倒した時の扱いに関して聞いてたけど、本当に倒してくるとはね。


討伐を確認したいんだけど、死体を出してもらえるかな?

訓練場なら入るだろう」


「わかりました」


俺たちは訓練場に向かい、風竜の死体を出した。


周りで訓練していた冒険者たちも竜の死体をみて、驚いている。


「ジンくん、本当に倒したんだねぇ。

確認したからしまってくれていいよ。

素材はギルドに売ってもらえるんだよね?」


「うーん、どうしようか悩んでます。

自分で<錬金術>とか<鍛治>とかに使いたい気もしますし、お金に変えたい気もしますし」


「欲しい素材だけ残して、残りを売っちゃえばいいじゃないか。

ドラゴンだと、素材ごとにオークションに掛けるのが一番いいね。


どうだい?」


「じゃぁ、それでお願いします」


「うんうん。それじゃぁ、解体はこちらでするから、必要な素材は事前に言っておいてね。

それと、オークションだけど、次は2週間後だね。

売り上げの1割がギルドに。1割は税金に取られるからね。


アイリス、手続きを頼むよ」


「わかりました。

ジンさん、欲しい部位はどこになりますか?」


「犬歯と鱗を半分くらい。あとは尻尾の毒腺かな」


「了解です。それ以外はオークションに掛けるということでいいですね?」


「ええ、それでお願いします」


「それと、君のことをSランクに推挙しておくから。

おそらく許可が出ると思うけど、国が決めることだから断言はできないけどね」


「え、、、あ、ちょっと!」


ゴルドさんは返事も聞かずに部屋を出て行った。

アイリスさんに聞くと、ドラゴンスレイヤーはSランク認定の一つの基準らしい。

通常はパーティやクランでの討伐なので、それだけでSランクになれる訳ではないが、単独討伐なので、おそらく認められるだろうとの事だ。

別に代金さえもらえれば、Sランクにならなくてもいいんだけどね。




2週間後、俺はオークション会場にいた。

別にくる必要はなかったのだが、オークションというものを見てみたかったのだ。

今日は解説として、アイリスさんにきてもらっている。


一応、参加者という形できているので、参加費用の金貨1枚を取られた。

番号は74番だ。74と書かれた番号札を渡された。

この札をあげながら、ハンドサインを出すと、入札することになるそうだ。


オークションの最初の方は、有名画家の絵画だったり、壺だったり、武器だったりと、いろんなものが出品されていた。

ドラゴンは今日のメインらしく、最後の方に出るそうだ。


終盤になって、ドラゴンの素材が出品され出した。

牙や目玉、舌などの各部位に、鱗は10枚単位で出品されていた。


それぞれ、すごい値段で買われていく。

特に鱗は買い占めたい人がいるらしく、どんどん値段が上がっていく。

同じ人が落札していくのをみて、アイリスさんに聞くと、宮廷魔術師の人らしい。

鱗以外にも結構な量を買っていた。


鱗の次に人気なのが、血だった。

錬金術の素材になるらしく、激しく競り合っていた。

これも瓶詰めしたもので、1瓶単位での出品だ。

俺も2瓶ほど確保している。


宮廷魔術師の人と、錬金術師らしき人で競っているのだが、資金力が違うらしく、宮廷魔術師がどんどん落札していく。


そんなに欲しいなら、直接言ってくれれば、もっと安く売ってあげたのに。

国からの要望なら応えますよ?




結局、全部で白金貨300枚以上になったらしく、俺の手元にも白金貨240枚とちょっとが入ってきた。

魔力100ポイントで240億円って。

アイリスさんが喜んでいたので、聞くと、担当の冒険者が大物を捕まえてきて、ギルドに貢献すると、担当者にも特別ボーナスが出るらしい。

今回は金額が金額なので、金貨1枚以上は確実だそうな。


逆に担当冒険者の素行が悪かったりすると、夜勤を増やされたりと、ペナルティがあるらしい。


担当受付嬢も大変だね。

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