056 ドラゴン
リリア様の方は経過観察というところだが、俺の方も久しぶりに冒険者として仕事をしますか。
このままでは、本当にリリア様のヒモになってしまう。
久しぶりにギルドにきた。
昼前の時間帯なので、受付は閑散としている。
受付に行くと、ワイバーンの討伐を報告した時の受付さんだ。
「あ、ジンさん。良いところに。
受けていただきたい仕事があるんですが、お時間ありますか?」
「ああ、大丈夫だ」
「では、こちらの部屋で」
名前を知らない受付さんが、個室に案内してくれた。
すぐにこの間、Aランクに上げてくれた50代の男性が来た。
「ジンです。この間はランク上げ、ありがとうございました。
お名前を伺っても?」
「あぁ、名乗ってなかったか、王都のギルドマスターをしている、ゴルドという者だ。
この子はアイリスだ。今後、お前の担当になる」
「担当?」
「ああ、その説明もしないとな。
Aランクになると、通常の依頼のように張り出されるのはほとんどない。
張り出されるのは、Bランクが受けてもいいAランク依頼だけだ。
Aランクは直接担当の受付のところへ行き、受付でどんな依頼があるかを確認するんだ。
それぞれ、得意不得意があるからな。担当受付を決めて、どう言った仕事が良いか判断するわけだ」
「なるほど、それで、先ほど、受けて欲しい依頼があると聞いたんですが?」
「ああ、まだ説明してなかったのか。アイリス、説明を」
「はい。ジンさんに受けてもらいたいのは、調査依頼です。
王都から見て北西の方角にある山に、ドラゴンが住み着いたという噂があります。
実際に飛んでいるのを見たという証言が複数上がっています。
ドラゴンは肉食ですので、人を襲うこともありますし、家畜を食べることもあります。
今の所は特に被害が出ていませんが、被害が出てからでは遅いので、今回の調査依頼となります」
「ふむ。調査の完了条件と報酬は?」
「完了条件は特にありません。いた、という報告ならもちろんそれで結構ですし、いなくてもそう報告していただければ結構です。
この辺は信頼関係で成り立ってますので、何度も適当な報告をするようであれば、ランクの降格などのペナルティが発生します。
もし、確認できた場合は、ドラゴンの種類も確認ください。
報酬は金貨10枚。期間は2週間です。
目撃された地域までは、馬車で半日と森を歩いて半日といったところです」
「わかった受けよう。
見つかって、戦闘になった場合はどうなる?」
「できるだけ逃げてください。
逃げれなければ、死んでしまいますので」
「ドラゴンを倒した場合は?」
「倒せるとも思えませんが、倒した場合は、ギルドより報奨金が出ます。
あと、持って帰れるのであれば、素材の買取もできます。ドラゴンの素材ですので億万長者ですね」
アイリスさんは冗談のようにいっているが、俺は倒すつもりだ。
ドラゴン相手に勝てるようであれば、この世界で敵はいないだろう。
自分の戦闘力を確認するのにうってつけだ。
「ははは、じゃぁ、倒せそうなら倒してくるよ」
「お気をつけて」
俺は北門から出て、しばらく歩いたところで、街道を外れ、走り出した。
<身体強化>も使い、全力で。
北西に向かうと、1時間ほどで森が見えてきた。
森の先にある山がおそらく竜のいる場所だろう。
森の端で休憩しながら、<魔力感知>の範囲を広げる。
10キロほど離れた場所に大きな反応がある。
おそらくこれだろう。
息を整えた俺は、森の中に入っていく。
目標の場所は山の中腹だ。場所的に、火竜か風竜だろう。
地竜なら山の中腹にはすまないし、水竜なら湖や海に住んでいる。
竜の強さがどんなものか、ドキドキしながら進んでいく。
2時間ほど歩くと、山の裾野についた。
山は、崖かと思うほど急峻で、軽いロッククライミングだ。
前の世界の体だと、諦めるところだが、今のステータスなら問題ない。
突起を掴んで体を上に押し上げ、一歩一歩登っていく。
竜の方でも俺に気づいたようで、寝ぐらから飛び出してきた。
俺は崖にへばりついている状態なので、ちょっとやばいかもしれない。
どうやら、風竜のようだ。
俺の後ろに回り、ブレスを吐いてくる。
俺は魔力を10ポイントほどつぎ込んで、風壁をはる。
ブレスが終了するまで、耐えれたようだ。
俺は必死に後ろを向き、風竜を視界に捉える。
まずは、0.001ポイントの風の刃を当てるが、かき消された。
次に1ポイントの風の刃を当てる。ちょっと姿勢がぐらついた。
次は10ポイントだ。10メートルほど吹き飛ばされていた。
今までそんな攻撃を受けたことがないのか、しきりに頭を振っている。
次は100ポイントだ。この世界に来て、最大の攻撃だ。
風竜の首が落ちた。
崖の下に墜落したのを確認して、俺も下に降りる。
竜の死骸が転がっていた。
俺は<インベントリ>に死体をしまって、再度、崖を登り始めた。
寝ぐらを確認するためだ。
ドラゴンといえば、お宝だ。光り物が好きだというのが定番だからな。
寝ぐらまでたどり着いて、俺はため息を吐いた。
10メートルほどの洞窟があるだけで、中には何もなかった。
ある意味当然と言えるだろう。
『最近』住み着いたのだから。人間と違って、引っ越すときにお宝を持ってきたりはしないだろう。
俺は残念に思いながら、走って王都に戻るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます