055 パララッチ


2週間が過ぎた。


「お呼びでしょうか、ご主人様」


「ああ、リリア様は学院ではどんな感じだ?」


「はい、学業は順調です。

学友も出来たようで、お昼はご一緒されています。子爵家の3女でセリア様とおっしゃいます。

私がお食事を一緒にしても、嫌な顔をされない、お優しい方です。

お昼休みには、手芸サークルに参加され、不器用ながらも頑張られています。あまり才能はなさそうですが。

魔法には余り興味がないようで、無難にこなされています。

護身術には興味があるようで、積極的に参加されています。特に<格闘術>に興味があるようです。

放課後はすぐに帰ってしまわれますので、ご友人と遊びに行かれたりはしていないようです」


「なるほど、とりあえず順調だな」


「はい、ですが、一つ懸念点があります」


「なんだ?」


「マリエンテール侯爵家の次男のパララッチという方が、リリア様に言い寄られており、リリア様が嫌がっております。

パララッチ様は、なんというか、軽薄な方で、胸やお尻ばかり見ています。

さらに、侯爵家というのを前面に出し、伯爵家の3女なら、自分に従っていれば良いと、堂々と言い放つ始末です。

そのくせ、自分の顔の良さをアピールしたりと、鬱陶しい方です」


「なるほどな。

なかなかひどい評価だが、リリア様も同じ考えか?」


「はい。顔も見たくないと言われていました」


「そうか、何かありそうだったら、実力行使してでもリリア様を守れ。

そのためにお前を付けたんだからな」


「承知しております」


マリエンテール家に関しては調べておいた方が良いな。

そういう輩は、フラれた時に何するか分からないからな。

親がしっかりしていれば、何かあっても大丈夫だろうが、親も身分を嵩に着るタイプだと面倒だ。


「ルナ、マリエンテール家に関して、何か知らないか?」


「はい。

王都から見て東南に当たる広い領地を持ち、豊かな穀倉地帯を抱えており、裕福な家です。

当主様は、王家からも信頼厚く、領民のことを考えた治世を行なっていると聞いています」


「そうか、親がそれならなんとかなるな。


マリア、当主から横やりが入らないなら遠慮する必要はないぞ。

ただ、必ず、先に向こうから仕掛けさせろ。正当防衛になるようにな。


また、嫌がらせなどに関しては、明確な証拠がなければ手を出すな。リリア様には嫌な思いをさせるが、証拠もなしに侯爵家に喧嘩をふっかけるわけにいかないからな」


「ルナ、マリエンテール家とパパラッチだかパララッチだかの情報も仕入れておいてくれ。

人間関係や、素行、周囲から見た人物像などだ。

情報屋を雇っても構わない。

必要な金は俺が出す」


「承知しましたが、情報屋に関しては執事のクリス様の方が詳しいかと」


「わかった、俺から頼んでおこう」




「クリスさん、マリエンテール家のパララッチという方をご存知ですか?」


「最近、お嬢様に言い寄っているクズですね。

一応把握していますが、それがどうかされましたか?」


「リリア様に袖にされた時の対応が気になりまして。

ああいう輩は短慮に走りがちです。親は高潔な方だそうだが、本人がダメダメらしいですからね。

それで、情報屋でも雇って、事前に調査しておこうかと思いまして。

クリスさんは情報屋にも知り合いがいると聞きましたが?」


「そうでございますね。

それではこちらで調べておきましょう」


「費用は俺が出します。いくらかかりますか?」


「いえ、お嬢様の安全のためです、これは当家が負担します」


「わかりました、俺にも報告が欲しいんですが、もらえますか?」


「了解しました。何かわかりましたら報告させていただきます」


とりあえず、今できるのはこの位だな。

直接的な暴力はマリアが防ぐだろうし。


あとは、リリア様が放課後にすぐに帰ってくるのが問題といえば、問題か。

お友達とやらと買い物くらい行けばいいと思うんだが。。。




「リリア様、学院はどうですか?楽しんでますか?」


「ええ、授業もわかりやすいですし、毎日が楽しいですわ。

以前ジン様ともお話しした、手芸サークルにも参加してますのよ。

私は不器用なので、下手ですけど、先輩が丁寧に教えてくれますので、下手なりになんとかやってますわ」


「それは良かった。

それはそうと、マリアから聞いたんですが、何か、言い寄られているとか」


「ええ、鬱陶しい限りですわ。

自分がモテると勘違いした上に、袖にされると、侯爵家を前面に出していうことを聞かせるような方ですわ。

正直、顔も見たくありませんね」


「そうですか。

何かあればマリアが対応するでしょうが、何かあれば、知らせてください。

できるだけの事はしますので。

もちろん、料金はいただきますが」


冗談で仕事として受けると言ったら、リリア様がしゅんとなってしまった。


「、、、お仕事ですのね、、、私の事を気にしてくれてるのかと期待したのがバカみたいですわ。。。」


リリア様が何かブツブツ言っているが、声が小さくて聞こえない。


「リリア様、声が小さくて聞こえないのですが?」


「なんでもありませんわ。何かあったらよろしくお願いしますね」


「もちろんです」



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