051 召喚魔法


数日後、リリア様から不思議な顔をして聞かれた。


「ジン様、先日何かされました?

王宮の方で、ジン様の名前が話題になっているようですが。

メアリー殿下が言うには、ワイバーンを単独討伐したとか。

そんな危ないことしてませんよね?」


「いえ、倒しましたよ?

討伐隊に申し訳ないと思いましたが、俺の経験値にさせてもらいました」


「そんな危ないことを一人でなさるなんて!

一言言っていただければ、騎士をお貸ししましたのに」


「それでは冒険者として、ダメでしょう。

それにワイバーンの素材で、<調合>をして見たかったのもありますし」


「ルナ!ルナはいますか!?」


「はい、お嬢様、なんでございましょうか」


「ジン様がワイバーンを倒したのは知っていますか?」


「はい、噂程度ですが、聞いております」


「なぜ止めなかったのですか!?

そんな危険な依頼を受けるだなんて、止めれなかったんですの?」


「はい、朝早く出られましたが、夕方には戻ると言われていたので、遠出するとは思っていませんでした」


「そう。。。ならどうしようも無いわね。

ジン様、危険な依頼を受けるときは是非、一言おかけください。心配で心配で」


「うん?誤解のないように先に言っておきますが、ワイバーン討伐の依頼は受けてないですよ?

たまたま、本当にたまたま、通ったところに巣があっただけで。

討伐依頼が出ていたのは知っていましたが、俺が気づいた時には人数が一杯になっていましたし」


「だからと言って、一人で行くことはないでしょう!

私を心労で殺す気ですか?!」


「いやいや、心配のしすぎでしょう。

ワイバーンなんて、所詮は翼の生えたトカゲですよ?」


「もう、ああ言えばこう言う。

ルナ、今度からはギルドにも同行しなさい。

危険な依頼を受けそうになったら、止めなさい。いいですね?」


「お言葉を返すようですが、冒険者は危険を金で売っているのです。

それが商売なのです。

ランクが上がれば、上がるほど、困難で強敵と戦うことになります。

そんな冒険者に危険だからやめろとは言えません。

冒険者をやめろと言っているようなものです」


うん、よく言ってくれた。

俺が言いたかったのもそれだよ。うん。

ランクもAに上がったし、今度はドラゴンとか見てみたいよね。

ファンタジーの王道にして、男のロマン!それがドラゴンだ。


この世界のドラゴンは知能が高いタイプだろうか?

それなら是非、話をしてみたいね。

知能の低いタイプなら、美味しく経験値になってもらおう。

どこかにいないかね?


リリア様とルナさんが言い合っているのを横目に、魔術書を読む。

今日帰りに買ってきたものだ。召喚魔法に関して載っている。


俺は当然<召喚魔法>もlv12だ。だが、一度も使ったことがない。

使い方が分からなかったのだ。

それで今回、本屋で<召喚魔法>の魔術書を買ってみたのだ。

初級書のようで、基本的な考え方が載っている。


それによると、召喚魔法陣を書き、<召喚魔法>の魔力を流す。

すると魔法陣が光り、中に何かが召喚される。

召喚されるのは、ランダムだと言われている。

そして、お互いに納得したら、名前を付けることで契約が完了となる。


上級の召喚魔獣を召喚するには、上級の魔法陣が必要だと言われており、現在は中級までしか伝わっておらず、その中級も使える者がいないため、召喚魔法使いは初級の不遇職とされている。



「ちょっと!

ジン様、何本を読んでるんですか!?

ジン様の話をしているんですよ?


今回は無事だったからよかったものの、次も無事かは分からないですわ。

次にこんな無茶をしたら、専属の護衛をつけますからね!?」


リリア様は心配性のようだ。

しかし、俺からしたら、本当に羽のついたトカゲに過ぎない。

魔力を絞った初級魔法で倒せるくらいなのだから。

多分、剣でも倒せたとは思うが、数が多いので、先に体力が切れるかもしれない。

<身体強化>の魔法は身体能力は強化してくれるが、疲労が溜まらないわけではないからな。


「はいはい、善処しますよ」


「それ、高確率でやらないやつですよね!?」



ちなみに、その日の夕食はワイバーン肉のステーキだった。

俺が危険を犯してワイバーンを倒した事と、美味しいワイバーン肉を食べるのとは別の話らしい。

そんなに急いで食べなくても、誰も取りませんよ?肉はまだまだあるし。。。

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