047


「それで何か分かりましたか?」


「いいや、オーユゴック領の裏組織だとしかわからなかった。

所詮は下っ端という事だろう。

次の街に着いたら、御館様に鳩便を出す。

アジトはそれで潰れるだろうが、末端だけだろうな」


まぁ、そんな所だろう。

アンジェさんが殺すまでやって得た情報だ。間違い無いのだろう。


これだけの事をするのに、首謀者が分かるようにやるはずがない。

もしここで首謀者の名前が出てきたら、罪のなすりつけかと疑う所だ。




俺たちは今、街道を歩いている。

襲撃があってから4日経った。あれからは襲撃もなく、順調だ。

先日には街に泊まり、疲れを癒した。鳩便も送ったようだ。

後数日で王都に着くだろう。


だがちょっとした問題がある。

リリア様が俺を避けているようなのだ。

何か話しかけても、はい、いいえ、しか答えてくれないし。

目が合うと挙動不審になる。目が泳ぐのだ。その上で、何か用でもあるかのようにアンジェさんに話しかける。

先日の戦いで少し本気を出したが、怖がらせてしまっただろうか。


マリアとクレアもずっと不機嫌だ。

特に俺がリリア様に話しかけると、目線がきつくなる。


別に警戒をおろそかにしている訳ではないので、注意しづらい。




俺たちは王都についた。

特に襲撃などもなく、魔物にも遭遇しなかった。さすがは王都付近だ。


入り口で少し問答があった。

貴族専用の門に向かったのだが、紋章入りの馬車でもなく、旅で汚れた姿で貴族といっても分かってくれなかったのだ。

リリア様が紋章付きの壊剣を見せたうえで、アンジェさんの騎士鎧を見て、初めて納得してくれた。


そうなると、なぜ馬車に乗ってないのか、盗賊にでもあったのかと、質問ぜめにあった。

騎士にとって、王都周辺の安全は面子に関わるのだ。

しかし、盗賊に会い、馬車は失ったが、盗賊は殲滅した、といったら、ようやく引いてくれた。


まさか、裏組織のものに襲われました、とは言えない。



以前泊まった、商業区近くの宿屋に向かう。


「リリア様、護衛依頼もここまでですので、完了のサインをもらいたいのですが?」


「はい?

学院にいる間、ずっと護衛をしていただけるのではないのですか?」


「え?片道だけの護衛契約ですよ?」


なぜかリリア様の表情が、がーん、といった顔になった。


「え、お父様からは依頼すればいいと、、、依頼したとはいってませんね。。。

では、改めまして、学院にいる間の護衛をお願いできませんか?」


「俺たち、学院には入れませんよ?

学院は護衛も従者も入れないでしょう?

それに俺たちはロービスに家買った所ですし。。。」


「お金なら出しますわ。

そうですわ、王都でも屋敷を購入しましょう。

私もそこから通えば良いんですわ」


いやいや、そういう問題じゃないでしょう。

簡単に屋敷を買うとかいっているけど、王都で屋敷なんて買ったらいくらかかる事やら。

使用人とかも雇わないといけないだろうし。


それに俺、まだやりたい事いっぱいあるんだよね。

<調合>もようやく何となく出来る様になってきたし。

<鍛治>もやってみたいんだよね。


「マリアさんなら年齢も同じですし、編入という形をとれば、一緒に通えますわ。

それがいいですわ、お父様に手紙を送って許可をいただきましょう」


リリア様が暴走しているよ、どうしようかな。


「リリア様、そういう問題じゃなくてですね。

俺は他にやりたい事があると言うか、ロービスにも知り合いもいますし」


いや、知り合いというほどの人はいないんだけどね。。。


「2年間だけ、お願いできませんか?!

やりたい事があるのでしたら、屋敷を購入した時に部屋を作らせれば良いですわ。

幸い貴族街の屋敷は広いので、多少の事では問題は起きませんし。


それに冒険者としての仕事も王都の方が多いと聞きますわ!」


まぁ、そうなんだけどね。

冒険者としての仕事は王都の方が充実している。

各支部で解決できない様な上級の案件などが王都に流れてきたり、純粋に街中の雑用が多かったり。

あと、貴族や豪商が多いので、護衛などの仕事も多い。


だけど、2年間は長い。これが2週間とかなら構わないんだけど。

一応聞いてみようか。


「クレア、マリア、どうしたい?」


「私は王都の依頼にも興味がある。

オーユゴックと違って、東の国の情報も集まるからな。

だが、ご主人様がダメだといったら、従うぞ」


クレアは王都に残るのに賛成と。


「私はご主人様のメイドです。

ご主人様のいるところが私の場所です」


マリアはいつも通りだが、そういう事を聞いた訳じゃない。


「王都にいるということは、日中はリリア様と学院に通うことになるぞ?」


「ご主人様が王都にいらっしゃるのであれば構いません」


むぅ、なんか賛成っぽいな。


「ほら、クレアさんもマリアさんも賛成ですわ!

あとはジン様だけですのよ?!」


「うーん、王都の依頼にどんなのがあるか見てから決めてもいいですか?」


「もちろんですわ!

良い返事を期待しておりますわ!」


リリア様の中では王都にいるのは確定らしい。

ほんと、どうしようかねぇ。



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