048 第3王女
結局俺は王都に残ることにした。
条件としては、以下の通りだ。
マリアを学院に入学させ、同じ教室を専攻し、護衛する。
王都に屋敷を構え、<調合><鍛治>が出来る環境を整える。
クレアは、屋敷の他の警備員と同じ扱いで、ローテーションで警備に当たる。
俺は、基本自由にしていいが、学院の休みにはリリア様とお茶をすること。
なんか、最後にリリア様の願望がにじみ出ているが。。。
俺なんかと一緒にいて、何が楽しいのやら。。。
ちなみに、報酬は衣食住保証の上、月に金貨1枚もらえるらしい。
なんか、ヒモにでもなった気分だ。
一応、伯爵様からは許可が出たそうで、屋敷も、売ったはずの屋敷が売れ残っていたそうで、そこを改めて使うそうだ。
使用人は王宮から派遣されるそうな。
王家の信頼が厚いと聞いていたが、使用人を貸してくれるほど親しいとは思っていなかった。
なんでも、王女様が同じ年で、小さい頃、よく遊んだそうだ。学院も一緒の授業を取るとか。
屋敷の掃除が終わるまでは、宿に泊まり、その間に俺のための<調合><鍛治>部屋を増設してくれる。
危険な薬品を扱ったり、鍛治の騒音の関係で、裏庭に別の建物を建ててくれるらしい。
屋敷の下見に行ったのだが、想像よりも広かった。
もちろん、オーユゴック領都の城よりも狭いが、比べるのが間違っている。
何十部屋とあり、ちょっとした晩餐会が開けるくらい広い食堂、ギルドの訓練場かというほど広い裏庭。
伯爵って儲かるんだろうか?
翌日、リリア様が入学の手続きに行って、帰ってくると、同年代の女の子を連れてきた。
金髪で癖っ毛。身長は150センチメートルくらいしかない。
名前はメアリーというらしい。第3王女だそうな。
そう、リリア様と幼馴染の王女様だ。
俺は片膝をついて、頭を垂れる。
「初めてお目にかかります。
Cランク冒険者のジンと申します。
ご尊顔をはいけ「メアリーですわ!リリアと同じ様に話してちょうだい」」
面倒な挨拶は不要だった様だ。
「では、改めまして、冒険者のジンです。
メアリー様、よろしくお願いします」
「えぇ、よろしくお願いします。
それで、あなたがリリアと一緒に住む男性ですのね?
リリアとはどうやって出会ったのですか?
どなたか意中の女性はいらっしゃいますの?」
14歳とはいえ女の子は恋バナが好きなのは世界共通らしい。
「いえ、特に好きな女性はいませんね。
知り合った経過は、リリア様からお聞きください」
俺はそのまま会話を続けると何かまずい気がして、そそくさと場を去った。
とはいえ、宿なので、隣の部屋なんだが。
部屋にはクレアとマリアが待っていた。
「お疲れ様です。
どなたか来られていた様ですが?」
「ああ、リリア様の幼馴染のメアリー王女殿下だよ」
「お、王女様ですか。
今後も屋敷に来られたりするんでしょうか?
私、何か失礼なことしてしまったりしたら、どうしましょう」
「私も王女様の相手なんてできないぞ」
二人とも王女様と聞いて萎縮している様だ。
さっきの感じからすると、少々のことは見逃してくれそうだが。
まぁ、そのうち距離感がつかめるだろう。
「クレア、明日は王都のギルドに行って、どんな依頼があるか確認するぞ。
屋敷に引っ越すまでは、依頼を受ける気は無いが、確認はしておきたい」
「私はどうしましょうか?」
「マリアはリリア様の護衛だな。
王都で護衛が必要か疑問だが、仕事として引き受けてしまったからな。
悪いが、学院が始まるまでは、寝るとき以外は一緒にいてあげてくれ。
前の襲撃犯の依頼人が、懲りもせずに仕掛けてくることも考えられるからな」
「承知しました。
王女様も護衛対象でしょうか?」
「不要だ。契約外だしな。
必要なら自分で用意するだろう」
翌日、俺とクレアはギルドに来ていた。
王都のギルドは流石に大きく、オーユゴック領都の倍くらいある。
石造りの立派な建物で、3階建だ。
中に入ると、右側に依頼表の貼られた掲示板、左側は酒場、正面には受付だ。
どこのギルドも同じ様な構造の様だ。
俺たちは、順番に依頼を見ていった。
ランクの低いものには、街の掃除や、郵便物の配達、犬の散歩など、街中の仕事が中心だ。
Cランクの依頼を見ると、フォレストウルフの退治や、オーガの討伐、中にはランク不問のドラゴン退治まであった。
一般の依頼にはそれほど違いはないが、依頼料が1割ほど高くなっている。
王都価格ということか。物価が高いのかもしれないな。
食料品などの値段も調べておいた方が良いかもしれない。
俺たちはしばらく依頼を確認した後、特にすることもないので、近くのカフェに入った。
「いらっしゃいませ〜何名様でしょうか?」
「2人だ。席は空いてますか?」
「はい、2名様ご案内でーす」
俺たちは窓際の良さげな席に案内される。
「今日のオススメはレモンピールのチーズケーキです」
「じゃぁ、それと紅茶をもらおう」
美味しかったので、ホールでいくつか買ってしまった。
他にもあったので、それもホールで購入した。
<インベントリ>に入れておけば、腐らないので安心して買いだめできる。
クレアとしばらく、雑談した後、宿屋に戻った。
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