035


翌日、二日酔いだった。

俺はこっそりと<解毒>を掛け、なに食わぬふりをして朝食を食べた。


その席でクレアとマリアに、今日は俺も出かける旨を伝えた。


「今日は俺も参加する。

槍の基本はなんとかなったから、あとは実戦だ。

まだ拙いから、フォローを頼むぞ」


「おまかせください。

ジン様に傷一本負わせません!」


マリアが通常運転だ。


俺の槍のlvは3まで上がっている。盾はlv2だ。

昨日、セルディクさんに教わるまではlv1だったので、セルディクさんの教え方がうまかったのだろう。




北の森に着くと、二人に普段どうしているか確認した。


「普段はここから入って、毎日違う道を通ります。

実際に道があるわけではありませんので、向かう方向が違うという意味ですが。

昨日は右に向かったので、今日は本来は左の予定でした。

どちらに向かわれますか?」


「うん、予定通り左でいいだろう。

俺の武器は短槍と盾だ。

前衛で敵を引きつけるから、クレアとマリアは遊撃に回ってくれ」


しばらく左のほうに向かうと、俺の<魔力探知>に2体引っかかった。

二人には言わずに進んだが、敵の30メートルほど前で、クレアは止まるように指示した。

魔物に気づいたらしい。


音を立てずに近寄っていくと、オークではなく、ゴブリンだった。

まあ、そう言う事もある。別にオークしかいない森じゃないんだから。


俺は二人を制して、一人でゴブリンの前に出る。

まずは右にいたやつに槍を突く。ちゃんとセルディクさんの言った通り、ひねって放った。

ゴブリンの胸に刺さり、ゴブリンが倒れた、、、と思ったら、俺の槍が支えて、倒れなかった。

もう1匹のゴブリンが切りかかってくるが、俺の槍はゴブリンの胸に刺さったままだ。

剣を盾で強く弾き、ゴブリンを後ろにのけぞらせる。

その間に槍を引き抜き、再度ゴブリンに突きかかった。

今度は顔を狙った。

見事に目を貫き、ゴブリンは即死した。


「ふぅ、槍で突くと刺さって抜けないか。

何か考えないといけないな。


クレア、戦争ではどうしてたんだ?」


俺は戦争経験者のクレアにアドバイスを求めた。


「はい、槍を突き刺すのは馬を相手にした時だけで、それ以外では、柄の部分で兜を叩くのが基本でした」


「え、槍なのに突かないのか?」


「はい。先ほどのご主人様のように、槍が抜けなくなってしまったら戦えませんので、突きません。

槍は長いので、柄の部分で叩くだけでも脳震盪を起こしたり、バランスを崩したりします。

戦争では、後ろからどんどん前に出てきますので、一度バランスを崩せば、後ろの味方に踏み潰されます。

なので、戦争では突きません。

ただ、個人の決闘などでは、喉などの急所を突くのはあります。

他は、手首などを狙って切る感じでしょうか」


「なるほど。

槍とは突くもんだとばかり思っていたよ。

勉強になった。


なら、ゴブリンやオークを倒すときはどうしたらいい?」


「基本、間合いの広い剣という感じで扱われるのが良いかと。

喉を切り裂いたり、太ももに傷をつけたりなどです。

突く場合は深く抉るのではなく、あさく傷つける感じが良いかと」


「そうか。ちなみに今森の中なわけだが、森の中では槍はどうなんだ?」


「普通は使いません。

槍兵は槍を持ったまま行軍し、敵を発見したら槍を下ろし、ショートソードなどを持って戦います。

撤退戦などでは、長い間合いが有効ですので、殿を任せられたりします」


今日は槍を練習に来たのに、一般的に森では使わないらしい。

俺って間抜けじゃね?


だけど、槍で戦えないわけじゃない。

ここは無理してでも槍を使って、lv上げをしよう。

危なそうなら、二人に任せればいいし。


「そうか。

だが今日は槍の訓練に来たから、あえて槍を使おうと思う。

危なくなったら助けてくれ」


無理やり槍を使うのには理由がある。

先日剣のlvが10になったのだ。戦闘はしていないのに、素振りだけで。

いろいろなパターンを考えて、面白技を試していたのが良かったのだろうか。

いや、面白技でlv上がるとかないわな。

lv10以上も確認しないといけないのだが、とりあえずひと段落として、槍と盾にも手を伸ばしたのだ。



それからもオークなどを倒しながら進んでいくと、小川が流れていた。


「いつもはここで休憩して帰ります。

今日はオークが10匹しか出てきませんでしたので、少し右へ進んでみてはどうでしょうか」


「なら、そうしよう。

少し休憩だな」


水を飲んで休憩した後、右へ向かった。


途中でオークが5体出てきたときは焦った。

最初の1匹は穂先で首を裂いて倒したが、残りが剣を振り上げると、首の部分がオークの手が邪魔になって横に振れないのだ。

クレアの助言を思い出し、喉めがけて、軽く裂く程度に突き刺す。

それを4匹続けたら、オークは苦しんで倒れていた。喉を裂いたことで息が吸えなくなったらしい。

1匹づつトドメを刺して、マジックバッグに入れさせた。


その後も順調にオークを倒しながら右に弧を描くように移動して、森を抜けた。

結局二人の出番はなかったが、俺の槍と盾のスキル的には有意義だったと思う。

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