025


翌日はリリア様の合格発表の日だ。


俺はクレアとマリアを連れて冒険者ギルドの訓練場にきていた。


「2人とも鈍ってないだろうな?」


「もちろんです!」


「確認しようか」


2人を相手に模擬戦をする。

クレアもマリアも宿の裏庭で素振りをしていたそうで、鈍っている感じはしない。

だけど、強くなっているわけでもない。

まぁ、魔物を倒してたわけじゃないので、lvが上がってないのもあるが。。。


二人と模擬戦をしているのには理由がある。

もちろん、二人が鈍ってないかを確認するのも理由の一つだが、メインは俺のスキルの確認だ。


昨夜寝る前に<ステータス>を確認したところ、レベルが上がっていたのだ。特に魔物を倒した覚えもないし、盗賊を何人か倒しただけだ。

身体lvは69に大幅に上がっていた。<剣術>はlv8。他に、<気配察知>や<隠密>などのスキルが増えていた。

<気配察知>や<隠密>は盗賊の根城を潰しに行った時についた可能性がある。

人間を倒すと身体lvが上がりやすいのだろうか?いや、それなら盗賊はみんな高レベルだ。


俺は<隠密>を発動させて、二人の後ろに回ってみた。

二人はまったく気付かず、俺がいた所に剣を振っていた。後ろから剣を首に当ててやる。


「ご主人様、いつの間に後ろに。

一瞬ご主人様を見失ってしまいました」


どうやら目の前にいても効果を発揮するようだ。

次は<気配察知>だ。


「もう一度やるぞ」


もう一度相対するように構えた。

二人が向かってくるのを見てから、俺は目をつぶる。


クレアが先に打ち込んできて、避けたところをマリアが攻撃するようだ。

クレアの打ち込みに対して、マリアと反対側に避ける。

そのままマリアの方まで回り込んで、剣を振ると、マリアが振り返って短剣で受けた。


「クレア、もっとコンパクトに剣を振れ!」

「マリア、必ずそちらに避けるとは限らないんだぞ!」


俺は指摘しつつも、<気配察知>で攻撃が察知できるのを確認した。

ただ、剣を振ってくるのはわかるのだが、足元が分からない。

今は訓練場なので、平坦だが、実戦ではこんなにわかりやすい地形はないだろう。

やはり、<魔力感知>のように、戦闘ではなく、見張りに向いているのだろう。


そのあと暫く二人の相手をしたあと、訓練を終了し、昼食に向かった。

商人街に近いカフェだ。

先日、リリア様と行こうとして一杯だった所だ。


「ここはケーキが美味しいらしい。食事は軽くして、ケーキを食べよう」


俺たちはサンドイッチとオススメケーキを頼んだ。


「これがケーキか!

私は初めて食べるぞ!」


クレアは小さい頃から傭兵をやっていたため、ケーキを食べたことがなかったらしい。

マリアはじっくりと味わって食べている。


「この酸味のある乾燥フルーツはぶどうでしょうか?

いえ、それにしては甘みが強すぎますね。

砂糖漬けにすると、、、いや値段が高くなりすぎます」


<メイド>スキルはケーキも焼けるのだろうか?



午後は商人街の中でも庶民向けの雑貨屋を覗いていた。

リボンや髪留め、ネックレスや指輪、腕輪。

他にも化粧品やちょっとした服などがおいてある。


二人とも、商品を見るのに夢中だ。

先日渡した小遣いを使い切ってないと言っていたので、今日使うことを許可したのだ。


クレアは戦闘で邪魔になるからと、髪をくくるリボンを買っていた。

マリアは化粧品だ。

俺にはどれが良いのか分からないが、香りとかが違うのだろう。


俺は俺で、石鹸などを購入した。

毎日使うので、減りが激しいのだ。

他にもトイレでお尻を拭くタオル(ボロ切れ)なども多目に購入した。10枚鉄貨1枚だ。

今の宿では、トイレにおいてあるが、普通の宿では自前だし、野営すると自然と必要になる。

基本使い捨てなので、多めにあって損はない。


クレアは欲しいものをさくっと買って、すぐに終わったのだが、マリアはじっくりと選ぶようだ。

いろんな化粧品の匂いや手触りを一つづつ確認している。

俺とクレアはその間、雑談して待っているのだが、1時間経っても決まらない。


「マリア、まだ悩むのか?」


「申し訳ありません、すぐ決めます」


別に急かしたいわけではないのだが、クレアと雑談すると言っても、普段から一緒にいるのであまり話すことがないのだ。


マリアの買い物が終わってから宿に戻ると、リリア様が待っていた。


「やりましたわ!合格です!」


「おぉ、それはおめでとうございます。今日はお祝いですね」


「はい。近くのレストランを予約してありますので、そちらで夕食をとりましょう」


「それでは私たちは宿でお待ちしています」


マリアが宿に残るようなことを言う。


「なぜだ?一緒に来ないのか?」


「酒場ならともかく、レストランとなりますと、奴隷は拒否されます。

なので、私とクレアさんは宿の夕食をいただきます」


「そうなのですか?リリア様?」


「そうですね。

いつも一緒に食べているので失念しておりましたわ。

確かに奴隷が食べれないレストランは多いです。

今日行くところがどうかは行ってみないとわかりませんが、可能性は高いと思います。。。」


「そうですか。。。

なら二人とも、宿の食堂で酒を飲むことを許す。

明日に響かない程度にな」


「あ、ありがとうございます」


普段飲まない酒なので、飲みすぎて潰れている可能性も考えて、潰れていたら部屋に運んでやろうと思いながらレストランへ向かった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る