021
翌日俺は、持っている中で一番いい服を着て、宿屋の前で待っていた。
今日は俺一人だ。二人には銀貨1枚づつ持たせて、好きに過ごしていいと言ってある。
「申し訳ありません、お待たせしました」
リリアーナ様が出てくると、待たせたことを謝ってきた。
「いいえ、それほど待ってませんので、大丈夫です」
リリアーナ様の服に驚きながら、定型文を返す。
リリアーナ様は淡い黄色いドレスときており、裾にはフリルを、腰には刺繍の施された太いリボンのようなものをつけており、後ろで蝶々結びにしていた。
「リリアーナ様、服、よく似合っています」
「ありがとうございます。ジン様も似合っておいでですよ」
これも定型文だ。
ここまでは良い。これからどうするかだ。
「リリアーナ様はどこか行きたいところがありますか?」
「そうですわね、商人街や職人街に行ってみましょうか。
何か掘り出し物があるかもしれません」
昨日のうちに、宿の主人に王都の大雑把な位置関係を聞いていた。
中央に城があり、王様が住んでいる。
その周囲に貴族街があり、石造りの壁で囲まれているそうだ。いざという時は住民を貴族街に避難させるとか。
そして、北が高級住宅街、南は一般住宅街、西が職人街。東は商人が多く住んでいるとか。
俺たちが泊まっているのは貴族街と商人街の中間あたりだ。
ちなみに南は端に行くほど貧しくなっていき、一番端はスラムになっているらしい。
「そうですね。
職人街は西、商店は東になりますが、どちらから行きますか?」
「商店に向かいましょう。
近いですし、王都でどんなものが流行っているのか知りたいですわ」
「了解です。馬車はバンさんにお願いしてますので、少しお待ちください」
そう、王都は広いのだ。
俺一人なら歩いて回っても楽しめるだろうが、リリアーナ様を歩かせる訳にはいかない。
なので、昨日のうちにバンさんに頼んでおいたのだ。
バンさんは王都に何度か来たことがあるらしく、快く引き受けてくれた。
まずは雑貨屋から見始めた。
雑貨屋と言っても、そこそこの高級店だ。
なぜ雑貨屋?と思うかもしれないが、貴族用の宝石店などは伝統を重んじるらしく、内容はあまり変わらないそうで、流行を見るには、そこそこの雑貨屋が良いらしい。
雑貨屋に入ると、店員が進み出てきて、お辞儀をする。
「どう言ったものをお求めでしょうか?」
「最近の流行りのものを見せていただけます?」
「はい、それでしたら、髪留めなどいかがでしょうか?
以前は彫刻された櫛や、バレッタなどで髪をまとめておりましたが、最近は精巧な刺繍のされたリボンで髪をまとめるのが流行っております。
刺繍も通常の刺繍ではなく、立体縫製という手法で作られており、光の加減で見え方が違ったりします」
「まぁ、素晴らしいわ、他の柄もありますかしら」
「はい、先ほどの白いリボンの色違いが赤、青、黄とありまます。
柄の違うのですと、こちらがよろしいかと。
少し太くなりますが、竜を倒す勇者の図が描かれております。
おとぎ話に出てくる勇者物語の挿絵を参考に作ったそうです。
あとはこちらでしょうか。
リボンに宝石のかけらを埋め込んだもので、光を浴びると反射して綺麗です。
お嬢様の髪はしっかりしていますし、そこそこ長さもございますので、竜の図柄のがよろしいかと思います」
「おいくらですの?」
「竜の文様のものは精巧な刺繍ですので、少しお高く、銀貨40枚になります」
なんと、リボンが40万円だ。
「買いましょう。他に流行っているものはありませんか?」
「そうですね。
羽ペン入れなどはいかがでしょうか?
従来ですと、布の袋にインク壺と一緒に入れて持ち運んでいましたが、羽の部分が締まったり、ペン先が折れたりしていました。
しかし、こちらは羽ペンだけを入れておく箱のため、他にぶつかることもなく、長くご利用になれます。
箱には羽ペンが2本入るようになっており、こちらの突起部分にインク壺を置くと滑って倒してしまう危険が減ります。
また、こちらの商品は蓋に花柄が描かれておりますが、特注で家紋を入れる方もいらっしゃいます。
実用品ですので、男性の方も買って行かれます」
「素晴らしいですわ。
お父様へのお土産にしましょう。
家紋を入れるのにどのくらいかかりますか?」
「3日いただければ大丈夫です。
男性用でしたら、家紋の部分を黒で塗るのはいかがでしょうか?
素掘りでも十分美しいですが、男性は色の濃いものを喜ばれますので」
「それでお願いしますわ。
それと通常の花柄と2つでいくらになりますか?」
「はい、特注ですので、金貨2枚と銀貨40枚になります」
「それで結構ですわ」
筆箱に240万だ。
俺がリリアーナ様を助けた時にもらったの金貨10枚、1000万円だったんだが、筆箱4個分?
もらう時に伯爵が、少ないが、、、と言ってたのは社交辞令ではなく、本当に少なかったらしい。
貴族の財力甘く見てたわ。
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