019
王都には、区画分けがあって、王城を中心に貴族街が広がっており、その外側に商業区。そのさらに外側に一般人の住む区画がある。さらに外側になると、スラムと呼ばれる無法地帯が存在する。
一般人の区画から、少し裏に入ると、職人街がある。
俺たちは表通りで、串焼きなどを食べながら、職人街にむかう。
剣などの装備を整えるためだ。
武器屋とだけ書かれた工房のドアを開けると、中には受付がいない。
「ごめんくださーい」
誰も出てこない。
仕方ないので、悪いとは思いつつも、奥の扉を開けて再度声をかける。
「なんじゃ客か。最近こないので、受付はやってなかった。すまなかったな。
それで、どんなものが欲しいんだ」
ずんぐりしていて、筋肉質、身長は低い。
「実は今まではあり合せの武器でなんとかしていたのですが、そろそろガタがきていて、修理か新品の購入をお願いしたいと思いまして」
「ふむ、とりあえず見せてみろ」
クレアの大剣と、マリアのショートソード、俺のロングソードを渡す。
「どれも使い込まれているな。刃こぼれもある。
これは買い直した方が良いな。
数打ちでいいなら、その辺に転がっているのから選べ。
新たに制作するなら、結構な時間と費用がかかるぞ」
「ちなみに、値段と期間を教えてもらえますでしょうか」
「大剣とショートソードは一般的なもので十分だが、お主のロングソードはもうダメだな。幸い鋼の材料が手に入ったばかりだ、金貨2枚と期間は1週間ほどか。ミスリルと少し混ぜるので、魔力伝導率も悪くないはずだ」
「わかりました、それでお願いします」
「出来上がった剣を見て驚くなよ」(ニヤリ)
「あと、防具も新調しようと考えているのですが、それぞれの体格にあった鎧はありませんかね。全員敏捷度が高いので、動きやすいのが望ましいです」
「大剣使いの嬢ちゃんには特に痛んでもいないから、上から羽織るマントなんかどうだろうか。
このマントは火属性魔法に耐性があり、少しだが、中の温度を調整する機能がある。
これは金貨2枚だ。
それと、短剣のお嬢ちゃんは、胸当てくらいはつけた方が良いな。
軽いとなると、これくらいか。胸当てだが、ボーンブルの皮を使ってある。軽いが防御力は折り紙つきだ。これは銀貨20枚だな。
あとは、兄ちゃんだが、なんで防具をつけてないんだ?」
「防具をつけると、ちょっとした引っ掛かりで、動きが阻害されるんですよ。
剣を使う方が優先なので、今まで防具はつけませんでした」
「なるほどな、防具は性質上、関節などの可動部にも毛皮を貼り付けて防御力を確保しているからな。
ならば、ガントレットとかはどうだ?
いわゆる手甲といわれるものだ。手袋に手首の関節を防御する機能がついていると思ってくれていい」
「試着はできますか?」
「もちろんだ、こっちにきてくれ」
グローブを渡されて装着してみる。
手袋がメインとなっていることもあり、スムーズに装着できた。手の指先は布が覆っていなく、普段の生活に困らないようにできている。
手甲の部分も四角くなく、若干丸みを帯びた形状をしている。
「これはぴったりですね。
でも、高くないですか?」
「あぁ、それはある意味失敗作だ。普通の冒険者は手甲で受け流すのではなく、受け止めるので、丸くなっているよりも、四角くなっている方が需要があるんだ。
それを使ってくれるなら、銀貨20枚でいいぞ」
「買います!」
「まいど。
坊主の剣は、さっきも言った通り、1週間後だ。忘れずに取りに来い」
「はい、ありがとうございます」
「支払いも忘れずにな」
「了解です。金貨2枚と大銀貨4枚は前金で置いていきますね」
「では、1週間後に会おう」
良い買い物ができた。
「あの、こんなに良い装備をいただいてよろしいのでしょうか?」
マリアは倹約家だ。服を選ぶのにも古着を買おうとする。
しかし、俺は綺麗な服を着た、クレアやマリアを見ていたい。
なので、半ば強引におしゃれな服や化粧品も買い与えている。
遠慮していながらも、休日にはワンピースを着て、軽く化粧をして出て行っているのを知っている。
何をしているのかまでは把握してないが。
クレアは逆に、あるだけ使ってしまう、浪費グセのある性格をしている。
俺が服や化粧品を買い与えても、化粧は顔がベタベタする言って付けない。
服は素直に嬉しいらしく、機嫌よく街に繰り出している。
買った甲斐があるものだ。
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