016

俺は今、来た道を走って戻っている。

今朝、オークに襲われてから思い出したのだが、盗賊の件だ。

盗賊といえばお宝。盗賊を逃してしまったのでアジトは分からないが、近くの洞窟とかだろう。


<身体強化>して走っているが、同時に<魔力探知>も使うことで、体への負担を減らしている。


馬車で1日分の距離だ。結構ある。

あるが、<身体強化>の度合いがすごいので、30分ほどで戻ってきた。

盗賊の死体を焼いたあたりで、<魔力感知>を行うと、3kmほど先に人間のような反応があった。1人だ。


<気配遮断>を発動させ、近づいていく。

このスキルは、毎晩魔法の練習のために、クレアとマリアの目を盗んで出かけているうちに、いつの間にか身についていたものだ。


<魔力感知>に反応のあった場所が見えるところまで行くと、予想通り、洞窟があった。

入り口には見張りとおぼしき、槍を持った者が一人。


<鑑定>を発動。


ステータスには、『職業:盗賊』となっていた。

盗賊という職業があるとは思ってなかった。分かりやすくて良いが。。。


横の茂みから近づき、剣で首をなぐ。一撃で首が飛んで血しぶきが舞う。

すぐに距離を取ったが、少しかかってしまった。血の汚れは取れにくいというが、洗ったら取れるだろうか?


そんな益体もないことを考えながら、洞窟の入り口に立ち、中に魔力を広げていく。


洞窟はシンプルに一本線で、奥の方に10人ほどの男たちがいる。道の途中には誰もいない。


俺は慎重に音を立てないように洞窟を進んでいく。

奥までは30mほどだ。

奥では真ん中に焚き火をして、周りを囲むように男たちがおり、酒を飲んでいる。


「ガッツの奴ら戻ってこねぇな。

何してやがるんだ?ヒック」


「やられちまったとか?」


「そんなわけねぇだろ。30人いかせたんだぞ。

冒険者から情報流させて、弱い奴を狙ってたはずだろう?

それで失敗するとは思えねぇんだが。ヒック」


「明日行って確認してきやす」


「おぅ。

全く、こないだでかい商隊襲ったから、そろそろ移動しないといけないのに、面倒起こしやがって。ヒック」


そこまで聞いた俺は、昨日襲われた盗賊の仲間だと確信し、殲滅することにした。逃げた盗賊は戻ってきてないようだ。


まずはお頭だ。

部屋に飛び込むと同時に近場にいた2人の首を飛ばす。

その勢いのまま、焚き火を飛び越え、お頭に斬りかかる。

お頭は、酔ってるのか、反応できない。肩から袈裟斬りに切りつける。


その頃になって、盗賊たちはようやく敵襲に気づいた。

ある者は手近な武器を取り、ある者は入り口から逃げようとした。


俺は部屋の中央に立つと、剣を横に構え、体を目一杯ひねる。

そのまま全力で振り抜く。

剣の先が音速を超え、左半分から正面の出口にいたものまで、胸を割かれて倒れる。

勢いのまま右に体を向け、残りの首をはねていく。

行き当たりばったりだったが、うまく斬撃が飛んでくれた。<飛剣>と名付けよう。


全員を倒すと、部屋の中は血の匂いで充満していた。

地面も血だらけだ。

そのまま踏み出すのも躊躇われたので、血ごと床を凍らせることにした。

結果、血も凍ったが、盗賊の死体まで凍った。

まぁ許容範囲内だ。


部屋の左奥の方に木箱が積み上がっており、入りきらなかったのか、剣や鎧などが外に積み上がっている。

順番に木箱を開けていくと、綺麗な布やアクセサリーなど盗賊には似合わない品が詰まっていた。

片っ端から<インベントリ>にしまっていくと、お金の入った皮袋が出てきた。

数えると、白金貨3枚、大金貨20枚、金貨126枚、大銀貨43枚、銀貨210枚、大銅貨39枚、銅貨140枚だった。全部で6324万3530スートだ。円に換算すると6億円だ。盗賊って儲かるんだろうか。


木箱の下の方に手紙のような者があった。


『オーユゴック領と隣のラールサック領の間の街道で、略奪を行い、流通を阻害するように』


名前は書かれていないが、どうやら、何者かの指示で盗賊をしていたようだ。バックが付いていて気が大きくなってたのかもしれない。

今までどうやってバレないようにやっていたのだろうか?

なんで盗賊がこんなにお金を持っているのかは分からないが、神様貯金を返しても十分に御釣りが来る。


洞窟の外に出ると、洞窟の天井に<土魔法>をかけて脆くする。通常だとせいぜい1m程度しか効果がないが、俺の魔力なら1mを指定しても洞窟全体が脆くなる。

すると、自然と洞窟が崩れて死体などが下敷きになる。証拠隠滅完了だ。


<身体強化>を使って急いで戻る。

まだ夜中なので、見張り以外は全員眠っているはずだが、見張りには、見回りをしてくると言って出てきたので、心配しているかもしれない。

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