015
4日目、昨日の盗賊の残党が襲ってくるかもしれないと、警戒を厳重にしていたら、夜になって、見張りが叫んだ。
「オークだ!」
馬車を川側に寄せて、川沿いに野営していたので、道の反対からくる事になる。
兵士も冒険者もすぐに飛び起きて、武器を構える。
俺もすぐに起きたが、リリアーナ様は寝ぼけ眼だ。
「クレアもマリアも、リリアーナ様の護衛だ。
オークは冒険者に任せろ」
「はい!」
オークは身長2mちょっとの豚の顔をした魔物だ。群れを作り、ある程度群れが大きくなると、上位の魔物がに進化する。オークジェネラルやオークキングなどだ。
しかし、ただのオークならDランク冒険者でも複数人で当たれば勝てる程度で、Cランクなら単独でも狩れる。
オークの数が3匹なのを見て、俺たちが出るまでもないと判断して、護衛に専念する。
「リリアーナ様、オークが現れました。念のために、馬車にお乗りください」
オークにもオークアーチャーという、弓を使うのもいて、安心できない。棍棒を持った普通のオーク3匹なら冒険者たちで十分だ。
アンジェさんも同じ判断なのか、兵士たちを冒険者の後ろに配置させ、状況を確認するようだ。
冒険者はCランクとDランクだ。3匹程度は問題ない。
冒険者がオークを退治すると、アンジェさんは兵士たちに、解体するように命じた。
「ケベック、オークを解体しろ、今日の朝食にする。骨と皮はその辺に埋めておけ」
「了解です」
今日の食事にするらしい。
正直、倒すのはともかく、人型の魔物を食べるのには抵抗があるんだが。。。
クレアもマリアも、干し肉以外の肉が食べれると喜んでいるので、反対するわけにもいかない。
この世界では、オーク肉は、普通に街の食堂でも出てくるほど一般的な肉だ。
実際、俺も街の料理屋でステーキを食べたことがある。豚肉みたいで美味しかった。
しかし、目の前で倒した人型を見ていると、食べる気が失せてくる。
なんとか食べずに済ます方法はないだろうか。せめて目の前に死体がなければ。。。
「アンジェさん、他は焼いてしまって良いですか?」
「いや、今食べない分は馬車に積んでいく。人数がいるからな。悪くなる前に全部食べきれるだろう」
今日はオーク肉づくしらしい。
オークの死体は記憶から消そう。うん、死体さえ忘れれば、ただの豚肉だ。
「ご主人様、良かったですね!
保存食ばかりの食事にも飽きていましたし。
オークが出てくるとは運が良いです!」
マリアはどう料理しようかと考案中のようだ。
リリアーナ様は、、、はい、オーク肉を所望ですね。そんな気がしました。
オーク肉はスープに入れられ、くず野菜を乾燥させたものと一緒に煮込まれる。保存食の干し肉も入れることによって、塩味を追加する。
オーク肉は十分煮込まれると、とろっとして噛みやすくなる。塩だけのスープなのに、出汁のような物が出て美味い。
干し肉ばかりだった俺たちは、あっという間にスープを食べきった。
「そろそろ出発するぞ、準備しろ。
オークの群れがいると面倒だ」
アンジェさんが、スープが無くなるのを見て宣言する。
どうやら、日が昇るまで待たずに出発するようだ。
鍋を温めていた火種に砂をかけて火を消す。
馬車の中ではこんな会話があった。
「ジン様、オークが少数でよかったですね。オークは群れるので、数が多いこともあり、冒険者が狙って討伐するならともかく、旅の途中では会いたくない魔物です。
今回のように、少数であれば食料として美味しいですが、数で囲まれると死傷者が出ることもありますので」
「リリアーナ様が襲われていたのはオーガでしたが、どのくらいの強さなのでしょう?」
「Cランク冒険者がパーティで当たるレベルですわ。先日のように群れられると、Bランクでないと対処できないでしょう。
そういう意味では、ジン様がいらっしゃってとても助かりましたわ」
「ご主人様の剣は素晴らしいからな。
あれで<身体強化>してないというのだから凄まじい。
全く当たる気がしない」
クレアは持ち上げてくれるが、俺の<剣術>は所詮lv5だよ?
<身体強化>は使わないのじゃなくて、使うと強すぎて身体に負担がかかるから使えないだけだよ?
魔法の練習は続けているが、爪の先ほどの魔力でも暴風が吹き荒れ、<身体強化>すると、素手で木を殴り倒せる。が、筋肉痛になる。
元の筋力が少ないのもあるだろうが、強化しすぎの方に一票だ。
毎晩、空に向かって風魔法を使い、制御できないか練習しているが、一向に制御できる気がしない。
<魔力操作>仕事しろよ。
<魔力操作>もlv10なので、これ以上細かい制御はできない可能性も考えている。
その場合は、通常の攻撃魔法は封印決定である。ドラゴンでも出ない限り不要だろう。
大概は剣でどうにかなる。ただ、神様からもらった剣を今でも使っているので、そろそろ買い換えた方が良いかもしれない。
魔法で実用で使えるのは、<魔力感知>だ。
魔力を薄く伸ばす感じで、周囲に広め、その範囲にある魔力を持つ存在を感知するというものだ。
これのおかげで魔物や人が近づいてくるとわかる。今の所5kmほどだ。
寝ているときは範囲が狭まるが、それでも100mほどあるので、奇襲には効果的だ。
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