008


馬車を降りると、立派な石造りの建物があった。3階建てで、入り口はウェスタンな両開きの扉だった。手前にも奥にも開く、胸の辺りだけのやつだ。

早速中に入ると、右側に衝立が立っており、沢山の紙が貼ってある。左側は酒場、正面に受付カウンターがある。


受付は美人ばかりだ。就職条件がそうなんだろう。奥の部屋では男性も働いているので、受付は専門職かもしれない。


とにかく、一番列の少ない右側に並び、順番を待つ。

「いらっしゃいませ、本日はどう言ったご用件でしょうか?」

薄い青色の髪をした可愛い子だ。20歳くらいだろうか。


「新規登録したいんですが」

「了解しました、キャシーと申します。これからよろしくお願いします。

登録料として銀貨1枚掛かりますが宜しいでしょうか?

まずはこちらに手を乗せてください」


銀貨を手渡すと、水晶の様なものを差し出してきた。

俺が手を乗せると、ボワっと光り、直ぐに消えた。


「はい、結構です。

カードができるまで少し時間がかかりますので、その間にギルドの説明をさせていただきますね」


聞くところによると、ランクがFからSSまであり、Cで一人前、Bだとベテランらしい。Aはあまりおらず、S以上は国からの許可がいるそうだ。

冒険者は基本自己責任で、冒険者同士の諍いには不干渉。目に余る場合や、法を犯したりすると、罰金、除名、賞金首となるらしい。

他にも、討伐証明の部位の提出以外にも、薬草や、肉や毛皮、牙や魔石なども買い取ってくれるそうだ。

上級の魔物ほど捨てる場所がないらしく、ドラゴンクラスになると、血の一滴でも買い取り対象になるとか。


まだカードが出来てないので、マジックバッグは高いのか聞いたところ、クローゼットサイズで、時間停止なしで金貨8枚くらいらしい。時間停止ありは希少で、売りに出ていること自体が滅多にないそうだ。

売っている店までの地図を描いてもらっていると、カードが出来た。血を一滴垂らせば完了。


「依頼を受けられる場合は、依頼表を持ってきてもらえれば、こちらで受注処理をいたします。

常設依頼に関しては、特に手続きは不要です。直接こちらに報告してください」


ギルドでステータスや適性を調べられるかと思っていたが、そんな事もなく、サクッと終了した。



オススメの宿も教えてもらったので、まずは宿に向かう。ギルドの4つ隣だ。

宿に入ると、10歳くらいの明るい子が出迎えてくれて、朝晩の食事込みで大銅貨8枚なので10日でお願いした。キリカちゃんと言うらしい。


荷物は<インベントリ>の中なので、直ぐに外に出て、先ずは服屋で着替えと下着を買う。雑貨屋でナイフと大小の布袋を買い、貴族街に向かった。

マジックバッグは貴族街の雑貨屋にあるのだ。


地図を頼りに雑貨屋に向かう。街が大きいので、結構時間がかかる。貴族が馬車を使うのが分かる気がする。

貴族街はさすがで、綺麗な石畳が続き、ゴミも落ちていない。建物は大きく、全て庭付きの様だった。


雑貨屋に入ると、下町の雑貨屋と違い、商品が整然と並んでいる。どれも一目で高価だと分かるものばかりだ。


店主にマジックバッグを買いに来たと告げると、奥から3つほど持ってきた。使用感のあるのが2つと、新品が1つ。どれも腰ベルトにつけれる様になっている。

それぞれ、クローゼットサイズが金貨8枚、小さな部屋サイズが、大金貨6枚、新品はクローゼットサイズで金貨12枚だ。


中古のクローゼットサイズのを買って宿に戻った。


宿の部屋で着替えと保存食を少しと、ナイフと袋をマジックバッグに入れ替える。


<インベントリ>の偽装用に、<時空魔法>を表示する様にしていたが、ギルドでもスキルの表示がされなかったので、<時空魔法>のアイテムボックスではなく、マジックバッグを偽装用に使うことにしたのだ。


マジックバッグを腰につけて、1階に降りると、テーブルが半分ほど埋まっており、肉の焼ける匂いがした。

今日はオーク肉のステーキだそうだ。新人のパーティーではオークを倒せないが、Dランクパーティ位になると安定して狩れるので、ちょっといい肉という立ち位置だそうな。


ゴブリンを倒した時のグロいのが思い出されて、少し気分が悪くなったが、周りが全く気にしてないので、仕方なくたべた。

豚肉みたいな味で、塩胡椒の味付けでも美味しかった。なんかちょっと悔しい。


翌日の朝、ギルドに出かける。

Fランクの依頼を見ると、街の清掃や犬の散歩、酒屋の荷物運びなどがあった。

しかし、報酬が大銅貨4-5枚で、宿代も稼げない。

そこで常設依頼を見てみると、テンプレのゴブリン退治に、薬草、毒消し草の採取があった。


「この辺で薬草の採れる場所はどの辺でしょうか」


「西の森を少し北に行った辺りに群生地があるそうです。

採取自体は簡単で、魔物もゴブリンくらいしか出ませんので、低レベルでも問題ないのですが、遠いのが欠点であまり人気がないんですよ。


馬車なら1日で往復出来ますが、借りる料金を考えると、どれだけ取っても採算が合いません。


しかも、乾燥するとダメなので、何日もかけて採取すると、帰って来る頃には、初日に採ったのが不良品になりかねません。また、大量に持って帰るのは、歩きには不向きです。

実際のところ、依頼の失敗の多いパーティに、軽い罰として取りに行かせたり、手頃な人がいない場合はギルドで馬車を出して、職員が取りに行くこともあります。

なのでこの依頼を受けてもらえると助かります。


以上の理由から、この街では他の街より報酬が高く設定されています。


西の森では先日オーガが確認されたのでご注意ください」


薬草1株銅貨4枚。毒消し草は5枚。

宿代が1日大銅貨8枚なので、2日だと最低でも40株は必要になる。


俺は宿では試せない攻撃魔法のテストをしたかったので、外に出るついでに薬草を採取することにする。ソロなので一晩徹夜になるが、まあ1徹くらいなら何とかなるだろう。

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