006
暫く紅茶を飲んでると、別のメイドさんが来て、部屋にいたメイドさんに何か耳打ちして出て行った。
「お嬢様と御館様の話が長引いているようですので、先にお風呂は如何でしょうか?」
「お願いします」
俺は前日から風呂に入ってなかったので、喜んで応じた。この世界、お風呂に入るのは貴族くらいと聞いていたので、無いものと諦めていたが、ここは貴族邸、それも城である。あってもおかしく無い。
案内された風呂は大きく、10人位入れる広さだった。一人体を伸ばして疲れを取る。
昨日ろくに寝れてないので、寝てしまいそうだ。
風呂から上がると、着替えが用意されていた。貴族が着るような。フリルの付いた上着に、ピッタリとしたズボン。正直遠慮したかったが、他に着替えは持ってないので仕方なく着た。着ていた服は回収されたらしい。
部屋に戻ろうかと思ったが、メイドさんから、御館様がお呼びです、と聞いたので向かう事にする。
長い廊下を歩いて行くと、豪華な扉の前に案内された。
メイドさんがノックして、俺の来訪を告げると、返事があり、部屋に入った。
部屋の中には、リリアーナ様と、銀髪で体の引き締まった、壮年の男性がいた。
「そなたがジンか。わしの名はドゴール・フォン・オーユゴックだ。娘を助けて貰って感謝する。
オーガを倒したと聞くが、冒険者かな?」
「いえ、登録するつもりですが、今は違います」
「そうか、先程娘からオーガについて聞いたが、君からも聞かせてもらえないか?」
俺は、剣撃の音が聞こえてからの戦闘を説明した。
「うむ、娘の話と一致するな。
何か必要なことがあれば、出来るだけのことはしよう。取り敢えず、無粋だが、金銭を用意した。少ないが、受け取ってくれ」
小袋を渡され、中を確認すると、金貨が10枚入っていた。この世界の通貨は以下の通りだ。
鉄貨、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨
それぞれ、10倍の価値がある。
鉄貨一枚が1スート。
1スート10円くらいだ。
金貨10枚で1000万だ。さすが貴族。
娘の命が1000万が高いのか安いのか分からないが、大金なのは間違い無い。
「待たせて済まなかった。夕食にしよう」
食堂に案内されると、金髪のドレスを着た年配の女性と、20歳過ぎの男性がいた。
「紹介しよう。妻のドーシーと、息子のエレクだ」
二人と挨拶を交わし、それぞれからお礼を言われた。
どうも、リリアーナ様は普段から護衛をあまり連れずに移動するらしく、以前からこんな事になるのでは無いかと心配していたらしい。長い間待たされたのは、お説教が長引いたせいだそうだ。
夕食を食べながら、今後どうするかを聞かれ、冒険者をするつもりだというと、暗に危険だからやめた方が良いと言われたが、他に手に職も持っていないと、正直に言った。
暫く城に泊まっていかないかと、勧められたが断った。風呂は魅力的だが、メイドの視線に耐えれそうに無い。時間も時間なので今日だけ泊めてもらう事にした。
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