002
眼が覚めると目の前に大木があった。青々とした葉っぱを繁らせた立派な木だ。
背中とお尻が痛いので後ろを見ると、こちらも立派な木だった。どうも木の根に座って、木の幹にもたれかかっていたらしい。
何でこんな所に居るんだろうか。確かコンビニでコーヒーを買って、、、あぁ、神様と会ったんだっけ。
ちゃんと反映されてるかな。結構無茶言った覚えがあるので、心配だ。
<ステータス>
うん、ちゃんと反映されてるっぽい。
各種能力に、<インベントリ>など、神様と交渉したのが載っている。本当に細かく交渉した。ゲームのスキルポイントで言うと、0.01単位で細かく決めた。余りにも細かいので、最後には神様も嫌な顔をしていた。
しかも、ポイントを全部振り終わってから、お金やアイテムを要求する鬼畜っぷり。
しかし、満足な内容ではないだろうか。
スキルを限界まで上げるだけで、他は自由に生きてて良いみたいだし。
限界が解れば、、、限界?限界かどうかの区別ってどこで判断するんだろう?
この世界の人が一生かかっても上げられない領域だよね。
あ。。。
ステータスに<不老>という項目が。
聞いてない!聞いてないよ!
え、そんなに長いことやるの?
期限は?条件は?
騙されたー!
勝手に数年くらいだと思い込んでた。
能力を話すよりも先に聞くべきなのに、どうしよう。
あ、神様とやり取りの方法も分からない。これはやられた。
もしかすると、もともと元の世界に帰す気がなかった可能性もある。
つい、ゲームのキャラ作りのような気分でやってた。
どおりでワガママを聞いてくれるわけだ。一生、いや<不老>だから永遠にレベル上げする必要があるのか。
はぁ、今更どうしようもない。
取り敢えずここはどこだろう?
森の中は確定。取り敢えず剣とファンタジーの世界だとはわかっている。簡単な地理は習ったが、ここが何処か分からない。
森の中はマイナスイオンがあり、気分が落ち着くと聞いた事があるが、不安しか感じられない。あれは安全が担保されて、帰れるのが分かってるから言える事だと思った。
服は紐で縛るズボンに、ゆったりとしたローブ。編み込みのブーツ。腰には皮のベルトに、小銭が入った小さな皮袋。
魔物がいる可能性もあるので、<インベントリ>に入っている鉄剣と皮鎧を装備した。皮鎧は胸の部分だけをカバーする簡単なもので、スキルの取得が終わった後で強請った装備だ。もっと良いものが欲しかったが、一般的に手に入るものだけと制限されたので、仕方なく店売りのものだ。
この世界は、ファンタジーと言って想像する通り、魔物がいる。ゴブリンとかだ。勿論ドラゴンもいるらしい。
取り敢えず、太陽に向かって森を歩いてみる。
しばらくしたら、日の高さ的に昼っぽい感じになったので、<インベントリ>に入っている保存食をかじるが、しょっぱい。本当は元の世界の食べ物を入れたかったが、この世界に無いものはダメだと言われて、仕方なく保存食にした。
よく考えれば、この世界にもパンとか果物とかあっただろうに。何となくファンタジー=保存食というイメージが考えを邪魔した。
終了条件を決めなかったことといい、思い込みで決めつけるのは危険だ。今更ながら、気を付けねば。
歩きながら、神様からもらった能力を検証する。
まぁ、才能系ばかりだが。。。
<インベントリ>や、体の動き等も確かめる。
体が軽い。転移なので、元の体のままのはずだが、<ステータス>に才能系の能力が反映されてるのか、思い通りに動く。
鉄剣を振ってみるが、剣先がブレない。元の身体能力だと、こんなに重い剣まともに振れないだろうが、この世界では大丈夫だ。
なんか、楽しくなってきた。
しばらく歩いてると、徐々に興奮がおさまってきて、先ほでまで浮かれて、剣を振りながら走ってたのが恥ずかしくなった。
誰も見てないよね?
落ち着いてからも歩き続けたが、街に着くどころか、人ともすれ違わない。
徐々に太陽も沈み始める。
街の近くに送ってくれればいいのに。
まさかの、神様の意地悪。
細かい能力値の交渉がそんなに嫌だったのか。
ちょっと反省。
でもゲームだとキャラメイクが一番楽しい時間だと思うんだ。仕方ないよね?
ともかく、野営の準備をしないと。
この感じだと、徹夜で移動しても明日着くとは限らないし。
幸い、テントなどの野営道具は<インベントリ>に入っている。
転移先が街の近くだと勘違いしてたので、野営が必要だとは思ってなかった。
レベル上げ前の状態で魔物と戦う可能性がある。
俺の能力値は、大器晩成型。さらに、戦闘系スキルのレベル上げもミッションの一つなので、いまは一つも持っていない。
能力値も確認対象なので、一般人よりは高いが、突き抜けてはいない。
本当はmap能力を貰って、敵が近づいて来たらアラート、とかやりたかったのだが、mapは脳が処理しきれなくて、廃人になる可能性があるらしく、貰えなかった。
そんな事を考えているうちに、日が暮れてしまった。野営出来る場所無いかと、探しながら歩いていたけど、よく考えたら、どんな場所で野営すればいいのか知らない。
この世界、知識系のスキルが存在しない。
薬草調合のスキルはあるけど、薬草学というスキルはない。ちゃんと勉強しないといけないのだ。
野営術などというスキルがある訳ではないので、純粋な、知識不足/経験不足だ。
陽のあるうちに、良さそうな場所がなかったので、大きな木にもたれ掛かる。幸い寒くないが、野生動物対策で火が欲しい。
枯れ枝を目の前にして、じっと見つめる。
魔法で火をつけるつもりだ。
火を付けるだけならlv1でも有れば十分だ。
魔法は、魔力を感じて、練り上げ、イメージを乗せて、放出する事で成立する。
魔力、魔力、魔力、、、これか。。。魔力の感じ方などは知識だけだが習っている。スキルポイントを犠牲にして、神様から知識は仕入れている。
この世界ではLv1相当を<生活魔法>といい、1属性なら成人の3割が使える。使える属性は適正によって決まり、2属性だと更に1割程度の人数になる。
一般人でも使えるのは、大きな街に住む人口に比例しており、田舎に行くと、使えない率が高くなる。教育の問題だ。全員が学べば、9割が使えるはずらしい。
街には寺小屋みたいなのがあり、商人の子供などが、文字の読み書きと一緒に習うそうだ。貴族は家庭教師らしい。贅沢だね。
ともかく、火が起こせなかったので、まずは<火魔法>のlvを上げようと、指先に魔力を集める。そして魔力を火属性に変換する。放出するが火は熾きない。これは分かっといた事だ。火が出るのはlvが1になってからだ。
もう一度指先に集め、今度は放出せずに体内を循環させる。すごくゆっくりとだが、血管を通るようにあったかい物が巡っていく。
暫く集中して操作していると、ある瞬間、循環が滑らかになった。
<ステータス>
<魔力操作>がlv1になっていた。
<魔力操作>を取得すればあとは早い。魔力の循環のスピードを早める。10秒くらいかけて体を一周する。100位数えた辺りで手応えがあった。
<ステータス>
<火魔法>がlv1になっていた。
スキルレベルの上がりが早いのは理由がある。通常魔法を習う時は、魔力を感じる。属性を付与する。放出する。の3段階で行う。魔力を放出すれば魔力は消費される。つまり、練習できる回数が制限されるのだ。
これを俺がやったように、体内で循環させると、魔力を消費せずに経験をつめる。
この方法でlvが上がるのを確認してから、他の魔法属性も循環させる。
一通り全部試したら、今度は全ての属性を同時に循環させる。
頭に負荷が掛かるが、神様から魔法のlvを上げる様に言われた時に、真っ先に思いついた方法だ。出来れば寝てる間も自然にこなせる様になっておきたい。
体内で循環させながら、体の表面を無属性で覆う。間違って、魔力が体外に放出されない様にするためだ。
指先の無属性の魔力に一瞬だけ火の属性を付与し、直ぐに放出する。対象は手に持っている枝だ。枝の先に火がつく。直ぐに地面に重ねておいた枝に火を移し、少し太い枝を上に置く。
これで野生動物は大丈夫だろう。
それにしても、魔物の事を考えると、不安になって寝れない。木がゴツゴツしてるから寝れないんだと自分に言い訳する。
魔力や身体能力があがってても、心は大学生。外でなんか寝れません。
うとうとしながら、時間だけが過ぎていく。
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