第4話 少し変わったいつもと変わら… 変わった日常
あの後ボスは何処かへ行ってしまった、自分の寝床に帰ったのだろうか、まぁそんな事はいい… 私の時間、そう! 夜だ。
[さぁトラちゃんわしの部屋へ行こうかのぉ~]
あ、何するじじい昼間存分触らせただろう、持ち上げるな。
[どうしたんじゃトラちゃん、暴れたら落っこちるぞ]
駄目だ… なすすべ無しだ。
「じじい少しぐらい自由にさせてくれよ」
[そうかそうか、にゃぁーんにゃん]
「駄目だ、何言ってるかわからん」
とりあえずどっかに行くんだな? なら丁寧に頼みます。
―――――――
じじいに連れてこられたのはじじいの寝床だった、そこまではいい、何故俺を抱いたまま寝るんだ。
[はぁあったかいのぉ]
仕方がないので俺も寝るか… 寝れるかな? ………zzZZZ
はっ! 寝てた! ってここどこだ? じじいは… 居るな。
[でロップや、その最優秀賞の商品は何処じゃ?]
[目の前にあるじゃないですが… もう日は昇ってますよ、早く鳥目を治してください]
[相変わらず口が悪いのぉ、この首輪がそうかの?]
なんだよくわからん椅子で寝てたのか… そうじゃなく何でここに… じじいに連れてこられたのか。
[そうですよ… はぁ介護も楽じゃないわねぇ]
[…聞かなかったことにするかの、さてこれが本当に獣や魔獣の言葉が理解出来る様になるのか確かめてもいいかの?]
[どうぞどうぞ、けど壊したら弁償してくださいね]
ん? なんだじじい俺に首輪をつけるのか? なんで人間は私にこれをつけたがるのかよくわからん、まぁ前のやつみたいにうるさい鈴が付いてないだけましか。
「ほぉ~らトラちゃん! わしの言葉が解るかのぉ?」
「うぉ、じじいが喋った!」
「………っぷ、じじいって」
「ロップや、傷つくから笑わんで欲しいのぉ」
トラは困惑した、今まで何を言ってるのか理解できなかった人の言葉が解った事、そして自分自身が人の言葉を発している事に、そして追い打ちをかける様にこの世界の常識をジジイことこの街【リーブス】の冒険者ギルドの長ドーバ・パッロトから流れ込んだ。
「あぁああああああああ!」
「どうしたんじゃトラちゃん!」
この情報量に脳が耐え切れなくなり激しい頭痛が襲う、そしてついには気を失ってしまった。
―――――――
この世界はトラが居た世界とは異なる、所謂異世界という所だ、この世界は人間以外に獣人族に魔族に悪魔に天使に魔王に勇者と色んな種類の者が暮らすのほほんとした世界である。
そして魔力の概念がこの世界にはあり一定の教育を受けた者は誰でも魔法が使える、この事によりこの世界では昔から魔法技術が発展していた。
しかし魔力があり魔法技術が発展していても科学技術も同じく発展しているようでこの二つの融合技術で世界は回っている。
一応国の概念があり幾つかに分かれているのだが国というより州や都道府県の様な仕組みになっていて法律などは議会で決められている、今この世界の政権は魔族が握っている、しかし政策はまともで〈産めよ増やせよ改革だ!〉との事。
魔王と勇者の様に対立し戦争に発展しそうな者達も居るのだがその者達も昔からの風習で動いているだけで今の生活に困っているわけでもないので何処の国も争わず平和に暮らしている。
宗教の概念も前の世界同様いろいろ信仰されてはいるがお互いがお互いに神を認めあい共存している、なぜこの様になったのかというと定期的に神の存在が認知されているからである。
暇だからと下界に降りてくる神も居れば定期的に信仰の力を吸収する為に降りてくる神などいろいろ存在しているのだ。
トラは何故この世界に現れたのか、それはこの世界の神でも解らない事だろう。
―――――――
「トラちゃん? おぉ!トラちゃん目を覚ましたのか! よかった!」
トラは目を覚ます、まだ頭は痛いが何とか起き上がれる程である、そして目を開けるとそこにはドーバが嬉しそうにトラの手を握っていたのだ。
「あ~… 何となくは解ります……… この首輪のおかげですね?」
そう言ってトラは自身に付けられた首輪に左前足をおいた。
「そうじゃ、いやぁ悪い事をしたのぉ… お詫びと言ったらアレじゃがまぁ美味しいものでも食べてゆっくりしてくれんかの? 何かあったらここに居るアナベルに言うと良い、彼女は優秀な癒しの魔法使いなのでな」
それだけ言うと名残惜しそうにドーバは部屋を出た、トラは見送ってから部屋を見渡す、いくつものベットが並んでいて薬品臭いその部屋は医務室だと解る。
「トラ…ちゃんでいいのかな? どうもアナベルです」
恐る恐る話す女、前も見た事があるが今は解る、この女は狼の獣人族だ。
「どうもトラです、べつに「とらちゃん」でも「とらくん」でもいいですよ、私にはあまり自分の名前ってのが理解できなくて、すみません」
「あらそうなの? じゃあトラちゃんって呼ぶわね、これからよろしくね」
恭しく答えるとアナベルは笑顔で答えた、見た目は人なのだが狼の尻尾が生えている彼女を見るとトラは不思議な感覚に襲われた、首輪をつける前までは特に感じなかった体の奥底にある力とも言える気配を感覚で察知したためだ。
いろいろと頭を使う事が先ほどから多いがトラはもう考えるのをやめた、自分は所詮は猫なのだ、人の様に考えても理解はできないだろうと、そしてめんどくさくなったのかトラは再び目を閉じたのだった………
―――――――
この後ギルド長と副ギルド長による【知識の首輪】をめぐる激しい口喧嘩があったのだが今のトラには関係ない事だった、しかしこのアイテム、トラが装着している首輪をめぐって一悶着あるのだがそれを知るのは誰もいない。
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