第4話 大学日本拳法に学ぶ

 ○ 明治の謙虚さ

 怒りや悲しみや恥や苦しみ、その逆の喜びや幸せを表面に出さず内に込めることで、ネガティブな感情に打ち勝ち、ポジティブな気持ちに浮かれて自分を見失うことがないように、自分の心をコントロールする。

 彼らの試合場に於ける内面的な戦いを「心で見る」ことで、自分もそうありたいという気持ちになれる。

「末世の比丘 形沙門に似て心に慚愧なく、身に法衣をつけて思い俗塵に染む ひとえに妄想を執してすでに正気を擲(なげう)つ」という、形ばかりの修行僧にはない真の修行を見る思いです。


 ○ 龍谷の傲岸不遜さ

 いつもながらの、明治とは対照的なこの学校の選手や指導者たちの態度というのは、明治の内なる戦いを見るのとは逆に、外に対する自分の態度という点で、非常に勉強となりました。

 決して皮肉ではありません。

 アメリカ・朝鮮・韓国人といった外国人と共生していくには、「明治の拳法」だけでは駄目なのです。 一見、傲慢不遜・粗野でワイルド、野蛮で無作法の感がある彼ら「龍谷の拳法スタイル」でなければ、論理も倫理も誠実さの欠片(かけら)もない、嘘ばかりの彼ら悪徳外国人には対抗できない。

 

 表面的にこの学校に傲慢で謙虚さがないように見えるとはいえ、その内面を見てみれば、彼らが自分の心を解放し、自由で伸び伸びと前へ出ることで、臆病になったり引っ込み思案になったりしがちな自分の心に打ち勝ち、目の前の敵を乗り越えようという、やはり、自分を修めることを業とする彼らの真摯な修行僧ぶりがうかがえるのです。

 権威や権力の(心の)奴隷となり、物事の本質を見れない人たちからすると、その態度や物腰は、謙虚でない・傲岸不遜・厚顔と映るが、人の作った規則や法律・イメージ・雰囲気に惑わされず、本来の自分に素直になろうと戦う龍谷の姿とは、明治における自己との戦いと同じで、自分の内にある真の道を模索することにほかならない。

 これもまた「天上天下唯我独尊」という修行の境地(心)なのでしょう。


 ○ 早稲田の骨太拳法

 強力な前拳で相手の姿勢を崩し、前蹴りでガンガン蹴り込んで踏み込み、ガツン・ガツンと後拳をぶち込む。

 絶対に後ろに退かない。モンゴルの猛襲を想わせる激しい攻撃。

 こういう拳法を国士舘や日大がやれば、ごく当たり前のことだと思うのですが、それをあの早稲田がやるというところに、世阿弥のいう「珍しさ → 花」があるのです。


 ○ 対明治戦における龍谷のお株を奪うかのような、中央大学のワイルドさ。

 全員の気迫が一体となって龍谷を圧倒した。

 今回の中央は、今年の5月11日に行われた第32回東日本大学リーグ戦での対明治戦の時とは打って変わり、ものすごい気迫と元気の良さがあった。

 この一戦で感じたのは、リベンジ(復讐)の心というのは普遍的ではない、ということ。

 長唄 「娘道成寺」に、「鐘に恨みは数々あれど」とありますが、龍谷にとって「恨み」のない中大には、技術的には変わらずとも、「ぶっ潰してやる」という心意気・迫力が全然感じられませんでした。

 龍谷はその精神的な(リベンジ)エネルギーを、対明治戦で使い果たしてしまったのか。


 また、龍谷は練習時間の関係もあってなのか、あまりスタミナをつける練習をしてきていないのではないか、とも感じました。対中央との決勝戦で、龍谷の選手たちは、ほとんど体力的に限界に来ていたように見えたからです。

 特に龍谷の副将は(ケガでもしていたのなら別ですが)、それまでの各校との戦いとはちがい、本来の動きができないほどバテていたように見えました。


 ○ 関東の各大学OGの華やかさと和やかさ

 試合に負けたといって泣きながら甲子園の土を持って帰るなんて、マスコミと大人たちに踊らされて偽善的なことをする球児とちがい、大学生は大人です。

 関東のお嬢様軍団が負けても、4連覇ならずとも、OGも現役も、皆さん実にあっけらかんとしている様子。

 あっさりとした、この気持ちの切り替えがカラッとしているのが、私なんかにしてみればいいですね。これが江戸の女性(生まれはいろいろあれども、大学時代は関東)です。


 今大会では、試合のホワイトボードに張られた選手名を確認するためだけに双眼鏡を使用したので、各校のOGをじっくり拝顔させて戴くなんてことはできませんでしたが、遠目にも、選手の時の鬼のようなお顔とちがい、彼女たちのリラックスした様子と、各人各様の清楚なお姿に心が和みました。


 アメラグやバスケの試合にはパンツ丸出しのチアガールでしょうが、やはり日本拳法の大会

 には、質素で清楚でありながら女性として存在感のある縄文人女性でしょう。拳法そのものだけではなく、大会全体の雰囲気もまた日本文化(の主張)なのですから。


 国立科学博物館「縄文VS弥生」展 ポスター 2005年7月16日〜8月31日


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 2019年6月23日

 平栗雅人

 続く


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