第5話 元禄忠臣蔵 男の友情 立花左近


 元禄忠臣蔵 男の友情 立花左近

 子供の時から、道場拳法によって磨き上げられた海千山千の手練れ(熟練者)が、ずらりと顔を揃えた関西お姐様(おねえさま)軍団。

 

 彼女らの頭領である銭婆(ぜにーば)が操る魔法(前拳の妙・組み打ち)によって、まるで小娘の如くにあしらわれ翻弄され、バッタバッタと討ち死にしていく関東お嬢様軍団の女拳士たち。

 あわや全滅か、と目を覆いたくなるその瞬間、そこにジャンヌダルクの如く一人奮戦する彼女の姿がありました。

 遠くの観客席からその姿を目にした時、まさにこの歌(元禄 男の友情 立花左近)の一節が朗々として胸に響いてきたのです。


 < 大石内蔵助と立花左近の関係 >

 吉良邸への討ち入りのため大石内蔵助が京都をあとにして、討ち入り用の武器とともに江戸へ下る(大石の東下り)時、それを関所でとがめられないよう立花左近の名を騙り、東海道を下向していた。

 同じ頃、本物の立花左近もまた、京都九條関白の名代として、江戸は東叡山寛永寺に献上する品々を輸送中であったのだが、この二組、東海道は鳴海宿(なるみのしゅく)でバッタリと出会ってしまう。

 立花左近の偽物がいると知った本物の左近は、怒りに燃えてその部屋へ向かうが、その「偽物」が仇討ちをしに江戸へ向かう大石内蔵助ら赤穂浪士一行と知り、その覚悟に感激して自分のほうが偽物だと詫び、本物のID(通行手形)を内蔵助に渡してしまいます。

 翌年、元禄15年12月14日(1703年1月30日)「通行手形の紛失」によってエリート武士を辞め、江戸は本所というところで傘張り浪人となり、貧乏暮らしをしている立花左近。

 未明に討ち入りの合図である大石内蔵助の太鼓の音を聞いた左近は、布団から跳ね起きて・・・。

 https: / /www.youtube.com/watch?v=luhzmT_MXRY

 MBDZ24 元禄男の友情〜立花左近 三山ひろし 160520 vL HD

 7分30秒 〜

 ・・・

 意地と天下の政道(せいどう)を

 正さんものと火と燃えて

 打つか山鹿の陣太鼓

      ↓

 意地と関東の拳法を

 示さんものと火と燃えて

 打つか御前の直面突き

 ・・・

 今は本所の侘住居(わびずまい)

 貧乏ぐらしはしていても

 心は錦の立花は

 遠く聞こゆる太鼓の音に

 布団をけって立ち上り

 耳を澄ませて指を折り

 あれは確かに山鹿流

 広い日本で打つ者は

 松浦肥前の御隠居か

 千坂兵部(ちさかひょうぶ)か後(あと)一人

 播州赤穂の大石じゃ

 今宵はたしか十四日

 さてこそ殿の命日に

 討入りしたか内蔵之助

 よくぞやったぞ 嬉しいぞ

 膝を叩いてほめながら

 泣いた左近の横顔に

 雪が降ります ハラハラと

 雪が降ります ハラハラと。

 

      ↓ 

 あれ(あの面突き)は確かに関東流

 広い日本で打つ者は

 立教新井のご隠居(OG)か青学大石OGと、あと一人

 神田は明治のOさんだ !


 貧乏暮らしはしていても

 心は錦の平栗は

 「よくぞやったぞ 嬉しいぞ!」 

 とばかりに、膝を叩いていました。


 また、そのすぐあと、大将戦で出場した青学のOKさんも、いい面突きをぶち込んでいました。

 公開されているビデオでは、この方が2年生の時には(技術的に)いいパンチであったにもかかわらず、自分から先に打つ、心を込めて「ぶん殴る」という迫力に欠けていました。

 (https: / /www.youtube.com/watch?v=ydCmBXJJluM  2017全日本学生拳法選手権大会(女子団体)3位決定戦 同志社大学VS青山学院大学 )


 しかし今回の一発は、相手に誘発されて条件反射的に打つ(相打ちにはなるが、結果として一本取れない、相手のパンチが一本となる)パンチではなく、自主性と強い意志のある一発でした。

 この大将戦、私は彼女が勝ったと思っていたのですが、

 https: / / ameblo.jp/ nichidai kenpo/ entry-12481395871.html  では、

 負けとなっています。 


 勝ち負けは別にして、彼女の一発も明治のOさんと同じく関東日本拳法の面目を施してくれたという意味で、値千金の価値と千鈞の重みある一発でした。

 今大会、中央や早稲田のワイルド、バーバリズムの感がある、荒々しく迫力ある拳法が復活したことは望外の喜びであり、関東お嬢様軍団お二人の、場は席巻されても「間合いとタイミングの妙で一瞬をつく」拳法が見れたことは、期待と現実とが一致した喜びでした。


 今ひとつパッとしなかったこの日のコブラ軍団を助け、副将のレディーがきっちりと関東の拳法、明治のスタイルを顕示してくれたかのようでした。

 これがリスクヘッジというものか、はたまたチームワークというものなのでしょう。

 なんてことも考えたりして、今回の大会も(アナログ的に)楽しませていただきました。

 

 2019年6月23日

 平栗雅人

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