第2話 龍虎の戦い

 明治があっさりと負けた時、会場にいた私はこう考えました。

(部外者のお前に何がわかるんだ、と言われるかもしれませんが、まあ、これはいち観客の勝手な思い込みということで)


 ① 気迫

 昨年第63回全日本学生拳法選手権大会の決勝戦で明治に敗れた龍谷が、そのリベンジの心むき出しで明治を圧倒した。

 気持ちが前向きで戦闘的だから、前へ前へ出て、明治の拳法をさせない。組み打ちや前拳で明治の選手を混乱させる。

 ② 硬くなっているというか、身体が温まっていない。

 明治は「人材が豊富」であるがゆえに、なるべく沢山の選手を試合に出してあげようとするから、こういう事実上の決勝戦と見られる試合にいきなりレギュラー選手を出すというようなことが起こるのだろう。

 どんなに経験を積み、場慣れした選手でも、初戦というものは緊張する。だから、たとえある試合がレギュラーメンバーでなくても勝てる試合であったとしても、そこでひと汗流すことで身体の動きがスムーズになる。今回、明治の何人かのレギュラー選手が肉体的にギクシャクし、精神的に硬くなっているように見えましたが、もしかするとその所為なのだろうか。


 そんなこんなで、明治は本来の彼らの拳法ができなかったのではないだろうか。

 ① 迫力に押されて後ろに退いてしまい、相手の間合い(自分ではなく相手にとって都合のいい間合い)を与えてしまう。相打ちは相打ちにならず、相手のポイントとなる。

 ② 組み打ちや、うっとうしい前拳に翻弄されリズムを狂わされ、自分の拳法(場と間合いとタイミング)ができない。

 ただ一人、副将のみが明治の拳法(無駄な動きのない、一瞬を逃さない切れのある拳法)を行っていたようでした。

 この人は、礼をして試合場に入る時に、礼をする相手の動作をよく見て、それに合わせて礼をしていた。それだけ冷静であったということではないだろうか。

 その点で、明治の次鋒は相手の異様に長い礼(龍谷得意のハッタリ)を見ないで(無視して)、自分のペースで礼をしていたので、敵の心と波長を合わすことができなかったのかもしれない。(一旦は)相手と波長を合わせなければ、自分の内なる波長を相手に同期させることができないからです。

 結果、この選手は今回、全く自分のリズムを作り出せなかったように、私には見えました。


 2019年6月23日

 平栗雅人

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