第2話
10月28日
あの男が出所した。
私は1度あいつに会いに行こうとした。
でも怖かった。自分も父や母、兄のようになるのではないかと言う気持ちがあったから。
その20日後あの男は何者かによって殺害された。男は手足の全ての指を切り落とされ、手首には数十個の切り傷があった。その形から凶器はカッターのような刃物だと断定された。
男が殺され真っ先に疑われたのはもちろん私だった。それはそうだろう、私には彼を殺す十分な動悸があったのだから。私を疑わない方が心配になる。こんなことを言ったら不謹慎だが、私は正直ホッとした。今まで肩にあった重りが一気に取り除かれたかのように。
警察には疑われたが私には殺害時刻ピアノのコンクールに出場していた、という確実なアリバイがあったため、すぐに容疑者リストから外された。
それからというもの家族が殺され1人だけ生き残り、その犯人が殺された運持ちの少女と雑誌や、週刊誌、テレビ、新聞などで取り上げられた。
正直その件で取り上げられるのは嬉しくはなかったが、父達が殺された時からそのような取材には慣れてしまった。普通中学2年生はそんなことは思わないだろう。普通であれば「テレビ出れていいなぁ」とか「緊張しそーw」とか考えているべきだろう。私には同い年の一般人の中で1番テレビ慣れしている自信さえあった。
そのような時期がしばらく続きやっと落ち着いたのは12月頃だった。
ある雪の日に私は久しぶりに夢を見た。
その夢の中で私は森の中を走っていた。誰かを追いかけて…。
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