作品を書ききる事の大切さと、そのためのコツ


 小説って奴は、読むだけでもエネルギーを使う大変な行為ですよね。


 それを書くという事は、さらに大変で難しくエネルギーを使います。


 私自身が、物語を完結させるということがどれだけ大変な行為なのかを知っているつもりで、『コネクトシステム』なんかは筆が一か月ぐらい止まって辛かった経験があります。


 しかし、私は小説を書いていて、もっとも成長できるタイミングが何時なのかと聞かれれば――それは、長編を書き終わった瞬間と、次回作を書き始める瞬間の間であると答えると思います。


 細かく言えば本を読んだり、純粋に書き続けていることで文章力や表現力が上がることはあるでしょうが、それでは小説を書く根本的な技量である〝構成力〟や全体的な〝完成度〟を上げる能力は伸びないんですよね。


 長編を書く力っていうのは、けっこう複雑で様々な要因が絡まっているために、結局のところ、何度も長編を書くことでしか伸びないと私は思っており、前作の良い所や悪い所を分析して、悪い所は直し、良い所は伸ばす。それが大切だと思っております。


 前作の考察をするためにも、書ききるという事は大切だと思うわけです。


 物語を書ききることの大切さを書いたところで、次に〝そのコツ〟について書こうと思います。



   ***


 さて、もしも、あなたが長編を途中で投げ出してしまったとしましょう。

 

 それで次の長編に取り掛かるとして――次の話は完結させられるでしょうか?


 字面だけでも怪しい感じがしますよね。


 これは〝投げ出してしまった〟という行為を放置してしまっているから、だと思います。


 なぜ、投げ出してしまったのかの理由が分からないから、それを繰り返してしまうのです。


 では、放置しないためにはどうすればいいのか。


 これは簡単です。


 なぜ自分が〝投げ出してしまいそう〟なのか、その理由を考え、それを潰すのです。


 さて……これは私の経験上の話なので、例としてしか書けないのですが、私が『コネクトシステム』の続きを書けなかった理由を話しますね。



   ***



 私は『コネクトシステム』を八割ほど書き終わった頃に筆が止まりました。


 なんとなく書けなくなって、そのまま日にちがずるずると経っていきました。


 結局、一か月ぐらい進展せず、もやもやしていたのを覚えています。

 

 そんな中で、上記のようなことを思いつき、その理由を考えたのです。


 私の筆が止まった部分は、物語の謎である答えを書いた後であり、クライマックスの戦いとの間を繋げるエピソードでした。


 今まで積み上げてきた謎を解き明かした後ということもあり、しかも、その次に続くラストの戦いとも見比べると、そのシーンは地味で勢いもなく、魅力がまるで足りなかったんですよね。


 そのカ所は、書いていてどうしても面白くなくて、はっきり言ってつまらなくなってしまう。しかも、二つの強いエピソードを繋げないといけない場所にあるために、少し不自然な感じもしました。


 しかし、この物語にとって、そのエピソードは必要でした。


 そのエピソードを書かなければ、物語を完結させることができませんでした。


 そして、結果から言うと、私は妥協してでも、その部分を書くことにしました。


 自分が書きたいと思えるレベルに達しているエピソードではなかったのですが(自分採点で80点や90点のエピソードが書きたいのに、その部分は40点ぐらいだと思っていました)この物語には必要で書かなくてはならないと腹を割ったのです。


 だって、このエピソードを書かなければ、このエピソードの点数は0点じゃないですか?


 それなら、40点でも0点よりはマシだと思って、多少歪んでしまったとしても、書くことにしたんです。


 結果的に言うと、最終的には書いて正解だと思いました。


 私はこれを40点でもいいから書いたことで、書きたいエピソードとエピソードの間を書く技術が少しついたと思います。


 あまり得意ではないことに変わりはしませんが、私はこのお陰で、こういった繋ぎのシーンも60点や70点ぐらいで書けるようになったと思うんですよ。

 

 これを経験したことで、そもそもプロットの時点で「ここはヤバそう」とか見つけられたりしますし、書けないものを書くことで、書けるモノの幅が広がったんですよね。


〝書けない〟というのは凄く辛くてキツイものに感じると思うのですが――逆に言うと、自分の急所であり、成長できる分かりやすい点であったりもするんだと思います。



   ***



 さて、私のコツは役に立ちそうでしょうか……。


 重ねて言いますが、長編を書くというのは、とても大変で、そうそうできることではありません。


 しかし、完結させるということはとても作者の力になりますし、その物語の登場人物も、完結させてあげた方が、幸せになれるんじゃないかと、思ったりします。


 連載作品であれば〝前のエピソードが気に入らなくて続きが書けない〟なんてこともあるとは思います。


 そんな時は、思い切って前のエピソードを書き直しても良いと思います。


 読者の方だって、そんな目くじらを立てて怒るような人はいないと思います。むしろ、更新が途絶えてしまう方が悲しいんじゃないかと思ったり。最終的にそちらの方が面白くなるなら、連載であっても直すべきでしょう。


 商業の場でもありませんし、こういった小回りのしやすさもネット小説の醍醐味だと割り切ってしまって良いのではないかと思ってみたり。


 いかがでしょうか……?


 私の言葉が少しでも役に立てれば幸いです。


 執筆活動は大変ですが、頑張ってくださいね!


*正確に言うと、長編を投げ出してしまう事自体は悪くありません。

 もしも、あなたがすでに何本も長編を書いていて――途中でそれを考察できるのであれば、プロットからその悪い部分を消し去って練り直した方が時間の無駄もなくなりそうです。今回書いたことは、長編の続きが書けなくなってしまった時の話だと捉えて下さいね。


 本日もお付き合いいただき、誠にありがとうございます!

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