十三月アルバム

エリー.ファー

十三月アルバム

 サンタクロース死ね。

 殺す。

 まず、僕はタンクローリーを買い、中にありったけの爆薬を詰め込む。

 仲間は二人。

 一人は爆弾の調整。

 一人は情報を集める。

 そして。

 僕はそのタンクローリーでサンタの家へと突っ込む。

 サンタクロースを殺すのだ。

 サンタクロースたちは正解中の子供たちの個人情報を集めているのである。

 このご時世に、である。

 しかも、それをまともに管理できていない。

 というか、良く知らないが、管理はできていないと思う。

 サンタクロースなのだし。

 どうせ、無理だろう。

 私はそうなってしまった場合、誰が責任をとるのかを考えたのだ。このまま漏れ出た個人情報に対して、予防策も打たず、性善説によりかかって努力をしない有様。認めて良いものか。子供たちの今後の人生、また、その家族にどれほどの被害、もしくは恐怖を与えるきっかけを招くとも限らない。

 これは聖戦である。

 サンタクロースという笑顔で幸福をばらまきながら、その裏で不幸や絶望の種を素知らぬ顔で植え付ける存在への宣戦布告なのである。誰もがまだ気が付いていないこの状況で誰かが先陣を切る必要がある。

 それに選ばれたのだ。

 私が選ばれたのだ。

 なんと名誉なことなのだろうか。

 皆の目を覚まさなければならない。その使命を与えられたということを意識しなければならない。命を懸けて何かを証明するその人生に埃を持たなければならない。

 そもそも、皆が皆、幸福を享受しすぎなのだ。

 意義も持たず、哲学も持たず、ましてや目標も持たず、ただだらだらと時間を過ごしているから、今あるこの状況がどれだけ何者かに影響を与えられたものなのかを理解できない。自分が選択し、自分が作り上げたものだと勘違いしている。

 温い。

 温すぎる。

 だから、付け込まれるのだ。

 サンタクロースに。

 不法侵入だとは言わない。ほしくないプレゼントであれば最早室内に行われる不法投棄ではないか、とも言わない。同じ服装で着て不衛生であるし、マンネリ化打破する気力もない教育上間違った存在であるとも言わない。

 ただ。

 ただせめて。

 その存在の証明と、個人情報の保護、プレゼントなどを作るために必要な資金源の出どころの公表、そして内訳、さらには幹部やトップなどの組織名簿などを見せてもらわなければ何一つ信用はできない。

 この現代社会において、神聖なものであるという言葉で自分自身の言葉を濁して逃げているのは最早言い訳がきかない。特別だから、ではなく、特別なのは、どのような理由によって形作られているのかを証明する義務があるのだ。

 それを果たす気がないことは分かっている。

 そんなことは知っている。

「リーダー。準備ができました。」

「よろしい。」

「リーダーこちらもです。」

「ありがとう。サンタクロースの息の根を止めるまで、後少しとなった。このまま順調に進めば、凡そ二時間半後。私はタンクローリーに乗って爆風をまとい、サンタクロースの首を噛みちぎっていることだろう。全ては多くの子供たちの未来のために、そして本当の幸せを伝えるために。」

 外では雪が降っていた。

 静かな夜だ。

「さらば、サンタクロース。」

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