年下とのキス

「あっあのあの、一目見た時から好きです! ぜひわたしと付き合ってください!」

 …ツッコミどころの多い告白だな。

 思わず冷静に思ってしまった。

 ……と言うかまず、ツッこむところが一つ。

「あの、アタシ、女なんだけど…」

「はいっ! 知っています! 先輩っ!」

 ………そうか。男には見られていなかったことに、ひとまずほっとした。

 まあ髪の長い男はあんまりいないからな~。

 などと考えている場合じゃないか。

 相手はアタシと同じ制服だけど、色が違う。

 この色は一学年下…。そういえば「先輩」って呼ばれたっけ?

 目の前にいる彼女は、入学当時から目立っていた。

 理由は可愛いから。

 そして………かなりのブリッ子だから。

 それを隠そうともしないのが、ある意味、潔い。

「ええっと、ゴメン。あなたと関わった記憶が無いんだけど…」

「えっ…。…そうなんですか」

 彼女は見て分かるほどに落ち込んだ。

「ゴメンね。でも言ってくれたら思い出すかも…」

「あっ、はい! 実はですね!」

 …立ち直りの早いコだ。

 そして彼女が言うには一ヶ月前、学校の帰り道でしつこくナンパされていたところを、アタシが助け出したという。

「…あ~。確か廊下で二年の男子に絡まれてた…」

「はいっ! あの時はちゃんとお礼もしないで、すみませんでした」

 頭を下げられ、慌てた。

「うっううん、良いのよ。結構アタシ、ケンカっ早いからさ」

 そのせいか……男よりも、女の子に人気がある。

 彼女みたいに告白する子も、一ヶ月に一人はいる。

 ちなみに男だと一年に一人いるかいないか…。

 無表情で、男10人相手してもへっちゃらなせいだろうな。

「先輩、困っている女の子を見て見ぬフリはできないんですよね。ステキです!」

 …まあそれもあるけど。

 血の気が多いのが原因だろう。

「そんな先輩の、特別な女の子になりたいんです!」

 うわ~、ハッキリ言うコだなぁ。

 でもまあ悪い気はしない。

 アタシ元々、恋愛対象で性別こだわらないしなぁ。

「でもアタシと付き合ってもおもしろくないと思うわよ? 格闘技が趣味だし、ガサツだし」

「全っ然構いません! 先輩はそのままで良いんです! ただわたしを好きになってくれれば!」

 こっ拳をつくって力説されてもなぁ。

 このコ、確かにブリッ子だけど憎めない可愛さがある。

 付き合ったら、アタシが人付き合いがヘタな分、フォローしてくれそうだな。

 …って、いけないいけない。

「でっでもね…」

「ダメですか?」

 うっ…。今度は大きな目に涙をうるうるさせて、見上げてきた。

 …そうか、こうされたら女でも弱いんだ。

「ダメってことはないけど…。あなた、可愛いし。明るくて楽しい子だから」

「じゃあ、OKですか!」

 どっどーしてそうなる?

「大丈夫です! 先輩を幸せにする自信あります! だから…」

 ふわっと彼女の良い匂いがした。

 …と思ったら。

「~~~っ!」

 キス、された。

 とっ唐突な子だ…。

「わたしだけのお姉様になってください!」

「おっお姉様?」

 なっ何か違う…。

「はい! わたしだけの愛しい人…」

 うっとりして、見上げる目から逃げられない。

「ぜぇ~ったいっ! わたしが幸せにします!」

 コレは………カクゴするしかないのか?

「よっよろしくお願いします」

「はい♪」

 ヤバイだろう…ヤバイけど、この子からは逃げられる気がしない。

 いや、もういろんな意味で。

 捕らえられたのは彼女ではなく、アタシの方…?

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