第3話


すぐに追いかけたはずなのに、隼世の姿を見つけることはできなかった。携帯に電話をしても留守電になるばかりで、一向に出てくれない。

取りあえず連絡をくれとメッセージだけを送って、俺は家に帰った。

「なんでこんなことに…」

俺は風呂場でシャワーを浴びながら嘆く。おかしい、俺はキャッキャウフフな恋愛を見たいのであって、悲しい恋愛は嫌いなんだよ。

風呂から上がるとすぐに携帯をチェックしたが連絡がない。

明日の朝、学校へ行く前に隼世の家に迎えに行こう。一晩経てば少し落ち着いているかもしれない。もしかすると祖母の家に行っているかもしれないが、生憎俺は隼世の祖母の家を知らない。なんとなく祖母の家は隼世にとって特別な場所のような気がして邪魔をしては悪いと思い家の場所を聞かずにいた。

こんなことになってその選択を後悔する。場所くらい聞いておけばよかった。

その日はなんとなく眠れずに、何度も寝返りを打ちながら寝たのか分からないまま朝を迎えた。

「今日は早起きね!珍しい」

母親が朝食を用意しながら驚いたように声を上げた。

「早く出るなら言っといてくれないと、弁当できてないよ」

「いい、パン買うよ。俺今日は隼世のとこに寄って行くから」

台所に立ち、母が作る朝食をつまみ食いする。

「手で取らないで!箸を使いなさい」

ぴしゃりを手を叩かれてごめん、と謝りながら苦笑する。箸を手に取りできたばかりの卵焼きを口に放り込んだ。父はまだ寝ているようだ。今日は昼から出勤らしい。

「隼世くん最近見ないわね。元気?」

「うん。変わんないよ」

まさか狸に恋しているとは言えない。

「今度連れてきなさいよ。たまには顔を見たいわ」

「言っとく」

牛乳をコップ一杯飲み干すとカバンを手に取り行ってきますと母に手を振って家を出た。隼世は家にいるだろうか。

隼世の家は俺の家から歩いて二十分くらいの住宅街にある。隼世の家へ行く道すがら、学校や仕事へ行く人の姿がぽつぽつと目についた。ごく一般的な瓦屋根に庭付きの一軒家の前で足を止めると、玄関のチャイムを押した。少ししてインターホンではなく玄関から隼世の姿が見えた。もう制服を着てカバンを持っている。丁度出るところだったのだろうか。

「おはよう、隼世」

「…はよ」

声に元気がない。表情も暗いままだ。

「もしかして、出ようと思った瞬間に俺がチャイム押したんじゃない?」

俺は声を弾ませた。すこし態とらしかっただろうか。

「その通り」

「さすが俺、もってるわー」

「言ってろ」

覇気の無い声で言って隼世は俺の前に立って歩きだす。

「なぁ、今日も朝子ちゃんのところ行くだろ?」

遠慮がちに隼世の後ろを歩きながら、小さい声で問うた。

隼世は答えない。速足で歩いたまま答えを拒んでいるようだ。いつもは優しい背中が今は悲しい。少しして背中を向けたまま隼世が口を開いた。

「山神って今日も居るのかな」

 もう『さま』をつける気も無いらしい。

「そりゃ居るだろうな。朝子ちゃんの保護者みたいなものなのかなって思ったけど」

「保護者…確かにそんな感じか」

隼世がふっと笑ったのを感じた。

恋敵では無い可能性が嬉しかったのだろうか。

「なぁ、俺は今日も行くよ。だからお前も来いよ。俺と朝子ちゃんがもっと仲良くなるの嫌だろ?」

「すきにしろよ」

隼世はそっけなくそう言うと俺を引き離すように早足で歩きだす。

学校でも隼世は一言も話さなかった。一人考え込んでいる。何も言葉を掛けられなかった。いくら考えても答えなんてないだろう。

試しにネットを漁ってみたが狸の女の子を救う方法なんて見つからなかった。図書館で妖怪の本を漁っても同じだ。

放課後、隼世を誘おうと思ったが声をかける間も無く隼世は教室を飛び出してしまった。

仕方なく一人で朝子ちゃんのところへ向かった。絶対連れてくるとかぬかしといて俺ってやつは本当に役に立たない。

それでも取りあえず俺だけでも行かなければと重い足を叱咤して雑木林を足早に走る。誰も来なくなってしまっては朝子ちゃんが余計に落ち込むに違いない。

いつも朝子ちゃんがいる空間に出ると昨日俺たちが座って居た木に隣合って二人は座って居た。やっぱりというか何というか隼世の姿はない。

俺の姿を見つけて反射的に立ち上がった朝子ちゃんは隼世がいないのに気付いて気落ちしたように腰を下ろした。なんだかとっても申し訳ない。

朝子ちゃんを横目に山神さまが立ち上がる。

「隼世は来ぬのか?」

「わかりません」

肩を落としてそう答えるしかなかった。来るのか来ないのか本当にわからない。

「そして漫画は持ってきたのか」

「え、すみません、忘れました……」

「ぬぅ……」

山神さまは残念そうに唸る。なんともマイペースな神様だ。

「今回は仕方ないの。隼世の様子はどうだ。このまま来ないつもりなのか?」

「いえ、来ないとは言ってなかったので迷ってると思うんですけど。朝子ちゃんのこと大好きだったんでショックが大きいみたいで]

「そうは言っても朝子には時間がないというのに」

山神さまはため息をつく。

「あの、どうにか伸ばすことは?」

「そんなことができればとうにしている」

「ですよね」

どうやって隼世を説得すればいいのだろうか。会わない選択を隼世がしてしまう前に、なんとか朝子ちゃんと過ごさせてあげたい。このまま永遠に会えなくなるのは隼世だって嫌なはずだ。

「仕方ないのー私が行くか」

山神さまはものすごく面倒くさそうに呟く。

「行くってどこに」

「えーと、隼世は家に居るな。風呂に入ってる所だったら面白いのだがなー。二人とも待っておれ」

そう言うと山神さまの姿が消えた。きれいさっぱりと視界から居なくなった。

朝子ちゃんを見るとどうしていいのかわからないと言った表情をしている。

「山神さまって隼世のところに行ったの?」

「ええ、恐らく……どうしましょう。隼世が怒ってしまわなければいいのですが」

「大丈夫だよ。山神さまに怒ることはあっても朝子ちゃんには怒らないと思うよ」

時間的に無いと思うがもし風呂に入ってる最中だったら山神さまはどうするつもりなのか、考えるだけで恐ろしい。

それから五分も経たない内に山神さまは現れた。黒のジャージ姿の完全に部屋着の隼世を小脇に抱えて。流石は神様。高校生男子を片手で軽々と…。

「みろ、咲也。こやつめ今日は出かける気が全く無かったぞ。腹立たしい。朝子は健気に待っていたというのに」

「いてっ」

隼世はぞんざいに放り投げられて地面に落ちた。痛そう。そして居た堪れない。

「大丈夫か隼世」

駆け寄って立ち上がるのを手伝う。隼世の顔は誰がどう見ても不機嫌だった。状況から察するに、突然現れた山神さまに突然捕まり突然ここに連れてこられたのだろう。

「俺にだって、心の準備ってものがあるんだよ」

「何を偉そうに。朝子には貧弱者の心の準備とやらに付き合ってやる時間は残っておらぬ。だいたい朝子が意を決して打ち明けたというのに逃げるとはどういうつもりだ、卑怯者と誹られても文句も言えない所業だ」

「やめてください、山神さま」

朝子さんは段々怒りがヒートアップする神様の前に隼世を守るように立ちはだかる。

「私がもっと早くに打ち明けていればよかったのです。なかなか言い出せなかった臆病な私が悪いのです。だから隼世を責めないでやってください」

朝子ちゃんの必死に訴えに山神さまはそれでも何か言おうとして言葉を飲み込んだようだった。朝子ちゃんから目を反らすように振り返る。

「人間なんぞ、止めとけばいいものを」

小さく吐き捨てるように言って、突然俺の手を取り山神さまは早足で歩きだす。

「ちょ、ちょっと山神さま!?」

「邪魔者は消える。せいぜい仲良くするんだな」

「えー!」

二人のその後が見たいのにっ。もう会わないとか隼世が言わないか心配で仕方ない。衣服の裾から見える細くてしなやかな手からは想像できない強さで腕を引かれる。流石、隼世を軽々と小脇に抱えるだけある、と感心してしまう。

山神さまに連れられるまま仕方なしに歩く。このまま家に帰れとか言われちゃうのかなぁ、と思っていると見たことのない場所に出た。確かにここ何日か歩いた一本道を、言葉の通り一本の道を歩いていたはずなのに、いつものあぜ道に出ることは無く一面草原が広がる場所へと出ていた。後ろを振り返ると来た道は無くなっている。

草原の真ん中にポツンと山神さまと二人で立っていた。俺は繋いでいる手をかなりギュッと掴んだ。こんなところに取り残されたら死んで骨になっても家に帰れない気がする。

「痛いではないか」

「山神さま俺を置いて帰らないでよ!本当に!マジで!冗談でも帰らないでよ!てかココ何所!!」

俺の必死の訴えに山神さまは面倒臭そうに答える。

「そんなに心配しなくても置いて帰ったりせぬ。ここは私の住処の近くだ。近くに茶屋がある。一息していくがよい」

「それ、飲んだら俺も妖怪になっちゃったり」

「するわけなかろう」

山神さまは更に俺の手を引いて歩きだす。一面膝の高さほどの草が茂っていたのに十歩ほど歩くと目の前に小さな喫茶店のような建物が現れた。頭がおかしくなりそうだ。俺は眉間を指で揉む。落ち着け。幻を見てるわけじゃない。俺は正気だ。三角の赤い屋根に白い壁の小さなその建物に山神さまは入っていく。扉に鈴がついているらしくチリンと澄んだ音が響いた。

中は木造りで席は三つほどしかない本当に小さなお店だった。一番奥の席に二つ、茶色い木の器に入れたてのお茶が向かい合って置いてあった。

山神さまは茶の入ったテーブルの席に着くと、手を合わせてその器を手に取り一口飲んだ。

「それ、他の人のじゃないの?」

「いや、我らのための茶だ。店主は人見知りでめったに出てくることはない」

「そうなんだ……」

人前に出る出ない以前に注文したところも見てないんだけど、もう気にしない。きっと知らない間に頼んでたのだ。俺は十歩しか歩いてないと思ってたけど、本当は気を失ってて百歩くらい歩いててその間に注文したのかもしれないし。

俺は山神さまの向かい側に座ると、いただきます、と呟いてお茶を一口飲んだ。

(めっちゃうまい)

やわらかく、まさに春の新緑を思わせる味だった。こんなにうまい茶は飲んだことがない。

熱さも丁度よく、啜って飲めば火傷する事はない程の温度。

「すっごい美味しいですね!これ!」

興奮気味に伝えると山神さまは得意げな顔をしてそうだろう、と頷いた。

「おかわりしても良いんですか?」

「好きなだけ飲むがよい。飲み終わった器を隣の白い机に置けば良い」

山神さまが視線で座ってるテーブルの隣にある子ども用かと思うほど小さな白いテーブルを指す。俺は残りのお茶を飲み干すと席を立ち、言われた通りに白いテーブルに乗せる。

すると器がスッと消え、直ぐになみなみとお茶が継がれた器が現れた。恐る恐る手に取ると、今度はお茶の中に白い小さな花が一つ浮いていた。

「山神さま!なんか浮いてる!」

俺は興奮気味に山神さまに見せる。おかわりなど図々しい奴め、という意味だったらどうしよう。一瞥すると山神さまは優しく笑う。

「それは食べることのできる甘い花だ。美味しいと言ってもらえたのが嬉しかったようだの」

「おいしそう!見えないけどありがとうございます」

俺はその場で軽く頭を下げた。美味しいものを美味しいと言って感謝されるなど、本当にありがたい。そして二杯目もうまい。白い花はあんことも生クリームとも違う甘さで、口に入れるとふわりと溶けた。とても食べやすく不思議とお茶に良く合っている。

「あの、ここってお手洗いあります?」

「あるが、もよおしたのか」

「いえ、お手洗いがあるならもう一杯もらってもいいですか?」

「かまわん」

「ありがとうございます」

俺は嬉々としてもう一度白い机に器を置いた。空の器が消えてすぐにお茶の入った器が現れる。また小さい花が入っていた。

「今度は紫色でした!」

山神さまに見せると、それは少し酸味のある花だと教えてくれた。口にすると葡萄に似た味がした。おいしい。

「お前は、見かけによらず肝が据わっておるの」

「え、そうですか?」

「そうだ。そこまで何も気にせず飲んだ人間は初めて見た」.

俺は半分ほど減ったお茶をまじまじと見つめた。

「もしかして飲みすぎると妖怪に」

「ならぬ」

俺はホッとしてまた一口お茶を口にした。もう一杯飲めそうだ。次は何色の花が入っているのだろうか。

「実はの、咲也を連れて来いと隼世に言えと朝子に言ったのはわたしなのだ」

「え?」

山神さまは器を両手で握りしめると少し悲しそうな顔をした。

「巻き込んでしまって悪かったの。隼世一人では良からぬことを考えそうでな。痛みを分け合い心配してくれる近しい者がいた方がいいと、朝子に進言したのだ」

意外だった。朝子ちゃんの心配だけでなく、隼世のことまで考えてくれていたのか。

「人間と会っているなど、心配で何度か朝子と会っているのを見たが、愛情が駄々洩れでな。どうも真面目で一途な性格のようだし突然の朝子との別れを一人で乗り越えられるようには見えぬ」

「よく、わかりましたね」

「伊達に長い間神をしておらぬ」

山神さまの言うとおりだ。隼世は真面目で一途。朝子ちゃんを忘れられず一生引きずっても俺は驚かない。

「山神さまは、朝子ちゃんと長い付き合いなんですか?」

「百五十年ほどかの。隼世の曾祖母があの祠を大事にしていてな。あの人を助けたいだのなんだのと相談によく乗っていた。昔から人が好きだったからの朝子は」

懐かしむような山神さまの口調に、山神さまも朝子ちゃんのとの別れが辛いんだな、と思った。一五〇年という数字が山神さまにとってどのくらいの年月なのかは見当もつかないが、人間だったら一生以上の年月を一緒に過ごしたのだ。だから隼世に当たりが強いのだろうか。最後の時を隼世に譲ろうというのだから多少意地悪したくなったのかもしれない。

「咲也は、隼世と長いのか?」

「俺、実は養子でして」

「ほう」

「虐待で両親と離れて小学生のころに今の家に来たんですけど、なんだか暗くて表情もまともに動かない俺をすごく心配して構ってくれたのが隼世なんです。そこからずっと一緒なので人間にしては付き合いが長い方だと思います」

「今の家は心地よいのか」

「とっても」

「ならば、隼世は任せても大丈夫かの」

「はい、頑張ります」

自信があるかと言われれば言葉に詰まってしまうが、やれるだけのことはやろうと思った。恩返しなんて大袈裟なものではなく親友として隼世の力になりたい。

「あの、朝子ちゃんの寿命、もうちょっと伸ばしたりとか出来ませんか?俺の寿命ちょっとあげるとかでもいいんですけど」

「そのようなことは出来ぬ。お前と朝子は存在している理が違うのだ。月と太陽を交換するようなもので、収まるものではない」

「そうですか…」

だめだろうな、とは思っていたのだが現実離れした数日間の中で、もしかしてそんな都合のいいことができるのかもしれないと少し期待してしまったが、思い通りにはいかないものだ。

「命を粗末にするものではない。私以外の人でないものに二度とそのようなことを言うでないぞ。人間を騙すことなど何とも思っていない輩もいるのだからな」

「はい」

強い口調の中に俺に対する心配の意を感じて、俺は素直に頷いた。この神様、何だかんだ言いつつ人間に甘い。

その後俺は二杯お茶をお代わりして山神さまを呆れさせた。話の後半は専ら今流行りの漫画の話だった。今度貸す約束まで取り付けた。山神さまとはうちの漫画を読みつくすまで縁が切れなさそうだ。

帰り際に会計をしようと財布を出すと、山神さまに人間の通貨で払えるわけなかろう、と言われ顔面蒼白になった。

「て、手とか、足とかと交換とか……!?ちょっと俺無理なんですけど……!」

「いらぬわそんなもの。もとよりお前に出させるつもりもない」

山神さまはふんわりとした袖口から見たことも無い花を取り出した。花びら一枚一枚が虹色に染まった不思議な花だ。それを一束お代わりを頼むときに使う白いテーブルに置くと虹色の花が消えると同時に最初のお茶に浮いていた白い花とティーパックがそれぞれ十個現れた。

「足りたようだの」

花で払うとか、とんでもない少女漫画だ。ちょっとキュンとした。すごくいいものを見た気がする。山神さまは代わりに現れた花とティーバックを俺に差し出した。

「お土産らしい。家族と飲むがよい」

「奢ってくれる上にお土産まで!?」

「感謝するがよい」

「ありがとうございます!!」

俺は勢いよく頭を下げた。お茶のお土産本当にうれしい。もう一生飲めないかもしれないと思ってたくさん飲んだのに家でも飲めるなんて。

店を出る前に俺は店内を振り返ると、店内を見回す。

「おいしかったです。ありがとうございました」

どこにいるか分からないので、とりあえず大きめの声で礼を言う。店を出るときに耳元で『また来てね』と声がした。小学生の女の子のような幼く可愛らしい声だった。


「あの喫茶店の店員か?確か筋骨隆々な二メートルほど身長のある森の住人だったと思うが」

その山神さまの発言にショックを受けたまま俺は家に帰った。どう聞いたって筋骨隆々な生き物の声ではなかった。何がどうなってあんなかわいらしい声が出るのか。緑豊かな所に住んでいると喉も奇麗なまま保たれるのだろうか。

いや別に光源氏もいいなぁなんて邪なことをそうです。ちょっと考えました。

「隼世は家に帰っているようだ。お前も家に帰るがよかろう」

そう言われ「はい」と返事をした瞬間、気が付いたら家の前だった。草原に出た時と言いもう少し説明があっていいと思う。誰かに目撃されたらと心配になり周りを見回したが誰も居らずホッとした。時計を見ると時刻は八時を回っていて驚く。そんなに長居したつもりはなかったが、考えてみればあれだけお茶のお代わりをしたのだから、二時間くらいは経っていてもおかしくない。

遅くなるなら電話をしなさいと心配していた母にガミガミと怒られた後、やっと自室に帰り隼世にメールを送ろうと携帯を開くと母からの着信が数えきれないほど入っていた。心配をかけてしまったと申し訳ない気持ちになった。

隼世に何とメールを送ろうかと散々迷った挙句『山神さまとお茶したよ。お土産もらったから一緒に飲もう。なんとお代はは虹色の花だったんだぜ。メルヘン。ちなみに山神さまが払った』という、何の捻りもない文章になった。もっと気の利いた言葉を入れられないものかと考えたが何も浮かばなかった。

それから一時間後、風呂から上がり携帯を確認すると『明日学校で』と簡素にも程がある返事が来ていた。学校で茶を飲みたいってことか?

仕方ない。明日水筒にお湯を入れて持っていくか。恐らく入れたての方が美味しいだろうから。作り置きでは味が変わってしまうかもしれないしな。

あり得ないくらいお茶を飲んだにも関わらず、あり得ない頻度でトイレに行くことも無く俺はその夜すやすやと眠った。

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