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 私は自転車に跨り、アニメショップを目指して出発した。早く着きたいが飛ばすことは出来ない。何せノーパンだ。眼鏡をかけたオタク女のくせして自転車にノーパンミニスカとは攻めているなぁ。偏見か。


 いつもより時間がかかったが何とかアニメショップに到着した。しかし、目当ての品は売り切れていた。がっくし。

 肩を落として店を出て少し道を歩くと人とぶつかった。下を向いていたので気が付かなかった。


「すみません」


 慌てて謝り、前を見るとそこには平らな胸があった。私より背が高い、体格からして男だ。上を向いて顔を確認すると、とんでもないイケメンだった。たぶん二十代。


「いえ、こちらこそすみません」


 イケメンは爽やかに笑った。なんて嫌みのない人であろうか。前を見ていなかったこちらが一方的に悪いのに。私は申し訳ない気持ちでいっぱいになり、再び頭を下げた。が、勢いがよすぎて眼鏡を落としてしまった。


「落としましたよ」


 なんて良い人なのだろう。イケメンは眼鏡を拾わんと屈もうとする。赤面の至りだ。しかし、私は一瞬であのことに思い至った。


 今、私はノーパンだ。もし眼鏡を拾い上げる時に彼が上を向いたのなら、スカートの中を見られてしまうかもしれない。


 では彼より早く拾うのは? いやそれも危険だ。彼より早く拾うために勢いよく屈めばスカートが舞い上がるし、腰を曲げたら間違いなく私の後ろの人にお尻を見られてしまう。


 では、目つぶしは? いや、これも目つぶしするために手を前に突き出す際、前傾姿勢になるから後ろの人にお尻を見られる。



 いったいどうすれば良い? あれこれ考えている内に彼の右手は眼鏡に触れている。このままでは見られてしまう。早くしないと手遅れになる。


「ええい、ままよ!」


 私は思いっきりイケメンのあごを蹴り上げた。一瞬彼の動きは止まり、後ろへ倒れた。そ、そうかっ! 思いっきり蹴り上げて相手を卒倒させることでスカートの中身を見せない、あるいは見られていたとしてもこれだけ思いっきり蹴れば記憶が曖昧になる。そういうことだったんだな私!?



 自分でも気が付かないうちにそんな妙案を思い付くとはやるな私。


 なんとか困難を乗り越えたが、こんなにやさしいイケメンを気絶したまま放っておくのは良心が許さない。ゆっくり屈んで眼鏡を拾ってかけ、そして彼をおんぶして近くの公園のベンチまで運んだ。

 

 やはり彼が目覚めるまで彼を見ている義務が私にはある。私は彼に膝枕をしてあげながら目覚めるのを待った。ノーパンミニスカで膝枕とは、これ、結構スリル、ありますよ……っ!



 五分ほどで彼は目覚めた。わりかし早く目覚めてくれて助かった。股間がかゆくて掻こうにも彼の頭が邪魔だし、掻いてる最中に彼が起きてしまったら、せっかく起きたのにまた眠ってもらうことになるのだから、ずっと我慢していたのだ。しかし、起きてしまったらいよいよ掻けないのではないか?


 ……もういいや、気にせず掻いちゃえ。



 彼はゆっくり体を起こした。


「いったい僕は……?」


「急に倒れるので驚きましたよ。……ひょっとして何か持病をお持ちでは?」

 私は心配そうな顔をした。

「いえ、そんなことはないはずですが……」

「では潜伏していた病が、今日初めて症状が出たのかも。医者に診てもらった方が良いでしょう」


 彼は少し考える素振りを見せ、

「確かにあなたの言う通りかもしれない。すぐ病院に行ってみます。ところで、あなたが介抱してくれたようですが、何かお礼をさせてください」



 どうやら私の蹴りは彼の記憶を始末してくれたらしい。ここはお言葉に甘えよう。


「ありがとうございます。そうですね、元気そうに見えますし、なにも今すぐに病院に行くこともないでしょう。それより、このまま私と周囲を散策して、その後、高級ディナーでもご一緒できければ――」


「ええ、そうですね」



 彼は快諾した。爽やかな笑顔が眩しい。

 その後の散策と高級ディナーで私たちは互いを知り、仲を深め、瞬く間に恋に落ちた。というか彼が私に惚れた。スピーディー過ぎる。嬉しいことだが頭がおかしいんじゃないか? ひょっとして私のせいか?



 夜、場所は埠頭。彼は『なんかよく足を乗せて格好つけるアレ』に足を乗せて格好をつけて私に愛の告白をした。


「君の優しいところに惚れた。これは運命の出会いに違いない。君を幸せにしてみせる。結婚してください」


 まだ私は高校生、人生を決めるには早い気もするが、まぁ、相手はイケメンだし、ディナーに入ったレストランめっちゃ高級だったのにおごってくれたから多分金持ちだし、問題はこれといって見当たらないから別に良いか。



 返事をしようとしたその時、強い風が吹いた。その風は私のミニスカートをめくれ上がらせるのに十分な威力を持っていた。私の秘められた部分が露わになり、ノーパンであることがばれてしまったことは彼の表情を見れば一目でわかった。


「――そ、そんな! 君がまるでカレーうどんの中に落とした眼鏡に付着したカレーを拭きとるのに使ったかのようなカレーまみれのパンツを履いているなんて!」



 ――なんだと……っ!? 私は急いでスカートをまくり上げ股間を覗いた。


 すると、驚くべきことに私はあのカレーまみれの、ベトベトの、まっ黄色の、パンツを履いていたッ!



 いつの間に?

 確かにおっさんのリュックのポケットに入れたはずなのに。まさかおっさんが?

何者なんだ奴は!?


「見損なった!」


 イケメンは走り去っていった。

 私は急いでパンツを脱ぎ、彼を追いかけた。


「待って! 行かないで! パンツは脱いだから!」


 しかし彼が足を止めることはなく、どんどん離れていった。もうとても追いつける距離ではない。



 仕方がないので私も家に帰ることにした。帰り道、私は思った。


 ふん! 何が運命の出会いだ。口だけ男がよぉ。しかし、惜しいことをしたなぁ。あーあ。ノーパンだったらきっと彼をものにしていたのになぁ。

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パンツを脱ぐ 焼き芋とワカメ @yakiimo_wakame

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